2019年10月31日(木)
校閲の目
がたい
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7月の参議院選挙で、安倍晋三首相が街頭宣伝した際、ヤジをとばした男性を警察が排除しました。その時一緒に排除された女性が演説場所に戻ろうとすると「がたいのいい警官が前に立ちふさがった」とした記事がのりました。
この「がたいのいい」は体格ががっちりしているという意味で多くの国語辞書に載っています。しかし語源については、外見の大きさを意味する「がかい」の「かい」を「体(たい)」と誤解してできたとか、「がかい」と「図体」が交ざってできたとか、はっきりしません。そのため漢字もありません。日本俗語大辞典には「もと不良が使用」としていますが、由来は分かりません。
日本最大規模の日本国語大辞典第2版には「がたい」の項はなく、「がかい」しかありませんでしたが、2006年の精選版には収録されました。「がかい」は1603~04年に発行された日葡(にっぽ)辞書に載っていて古くから使われていましたが、その後の用例はほとんどなく、なじみのない言葉です。
ただ方言として残っており、「体格、体つき」の意味で使う地方もあるようですが、一般には「瓦解」を思い浮かべるでしょう。
どんな政権であっても言論や表現に対して、がたいのいい警官が立ちふさがり力で排除するような政治では、早晩「瓦解」するでしょう。(河邑哲也)