2019年10月30日(水)
ハンセン病家族への補償法骨子案
高橋衆院議員に聞く
家族は一律に補償申請可能
議員立法で前例をこえて
ハンセン病元患者の家族に対する損害賠償を命じた熊本地裁判決を受けて、超党派の国会議員懇談会が24日に補償法の骨子案(新法としての補償法案とハンセン病基本法改正案)をまとめました。骨子案をまとめたワーキングチームのメンバーの日本共産党の高橋千鶴子衆院議員に骨子案の意義と今後の課題について聞きました。(聞き手・若林明)
|
まとめる経緯
―骨子案をまとめるにあたっての経緯は。
骨子案は6月28日のハンセン病家族訴訟の熊本地裁判決を受けたものです。同訴訟は、ハンセン病元患者である原告ら561人が、らい予防法(1996年廃止)による国の隔離政策によって療養所入所者のみならず、家族も差別や偏見を受けたとして国を訴えた裁判です。判決は、国と1996年までらい予防法を廃止しなかった国会議員の立法不作為を認めました。政府は控訴を断念し、訴訟への参加・不参加にかかわらず、家族を対象とした新たな補償の措置を検討することを約束しました。これを受けて骨子案の検討を超党派の議員懇談会で行ってきました。
宮本徹衆院議員とともに共産党のプロジェクトチームの意見をまとめて発言してきました。さまざまな意見がありましたが、最後は与党も含めて一致して少しでも良いものにできないか、知恵を出してきました。
大きな成果は
―骨子案の成果は。
大きな成果は、前文に「国会及び政府は」と、主語を明確にしておわびと責任を書いたことです。らい予防法の廃止(1996年)、ハンセン病補償法(2002年)とハンセン病問題基本法(2008年)と立法する中でも家族への差別偏見やその苦痛は認識されていなかったと書きました。
補償金額については、家族が受けてきた長い差別偏見、取り戻せない家族関係や結婚など人生を壊されたことから見れば不十分だという思いはあります。裁判の額(最大130万円)を上回る補償額(最大180万円)を決めたことは、これまで前例がなかったといいます。
また補償金を申請する家族は、差別や偏見をうけたかどうかは問われない。裁判では除外された人も一律に補償すること、とりわけ占領下の沖縄も当然対象とすることなどは貴重な成果です。
さらに、亡くなった原告も名誉回復一時金として同額が補償されることになりました。弁護団にとって、亡くなった方の補償がないという問題は極めて大きな問題でした。他の補償に係る法等を前例として「法の下の平等」に反するという意見もあり、これには承服できないと思いました。たたかってきた原告団や弁護団が歓迎できない法律では意味がないという立場で主張し、議論の末、亡くなった方に「名誉回復一時金」として支給できることになりました。
ワーキングチームの協議の中で、弁護団が苦渋の決断をし、妥協する場合もありました。それを本当に受け止めた上で、それを上回ることが、議員立法だからこそという立場でやってきました。
基本法改正案では、最後まで人間らしく暮らせるために、もともとあった医療介護の体制整備に加えて「充実」という言葉を書き込みました。介護職員の不足とその背景にある処遇の問題が深刻だという現場の声に応えたものです。
法案を成立させるとともに、課題である差別偏見をなくすために啓蒙(けいもう)や教育等も取り組まなければなりません。家族関係の回復は法律で書いているからといって解決する問題ではありません。社会全体から差別の思想が無くなることで、元患者や家族が本当に家族をつくれると思います。