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2019年10月29日(火)

きょうの潮流

 ラグビーのワールドカップ(W杯)で決勝に進んだ南アフリカ。試合前に流れる国歌は途中でテンポが変わります。黒人解放運動の歌とアパルトヘイト(人種隔離)時代の旧国歌をつないでいるからです▼同国は1991年、アパルトヘイトと決別を表明しました。94年に大統領となった故ネルソン・マンデラ氏は白人と有色人種が互いに力を合わせようとこの国歌をつくりました。ラグビーにもその思いを注ぎます▼当時、同国のラグビーは裕福な白人のスポーツでした。しかし同大統領は95年、自国開催のW杯で、率先し「われわれのチームを応援しよう」と呼びかけました。チームは優勝し、街の中には白人と黒人が抱き合って喜ぶ姿がありました▼当時、チーム唯一の非白人選手は語っています。「試合前、人種に関係なく観衆が総立ちになって新しい国歌を歌っている。感動的な光景だった」。それから四半世紀。いまのチームには初の黒人主将のシヤ・コリシ選手ら31人中10人を超える非白人選手がいます▼大会ではさまざまな“ラグビー文化”に触れることができます。日本は7カ国の出身選手が力を合わせたように、代表チームは国籍主義ではありません。その国の協会に在籍する“仲間”でつくるとの考え方はその一例です▼肌の色、国籍、言葉の違いを超えて人々は一つになれる―。多様性を尊重する姿がもたらしたものは小さくありません。大会は大詰め。最後までしっかりと見届けたい。ラグビーの美しい精神をかみしめながら。


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