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2019年10月12日(土)

リニア汚染土 三河港に

愛知 豊橋の埋め立て地搬入

 JR東海によるリニア中央新幹線の日吉トンネル掘削工事(岐阜県瑞浪市)で、土壌汚染対策法(土対法)の基準を超える有害物質のヒ素やフッ素を含む汚染土を同社が三河港明海(あけみ)地区(愛知県豊橋市)の埋め立て処分地に搬入していることが分かりました。本紙の取材に対し、瑞浪市の担当者が認めたもの。(丹田智之)


岐阜・瑞浪市担当者認める

 これまで同社は「行政の認可を受けた専門業者に依頼して適切に処分している」(広報部)と説明する一方、運搬先や処分方法を明らかにしていませんでした。

 三河湾の一部にあたる明海地区の埋め立ては、愛知県と豊橋市が出資する企業が事業主となり、完成後は輸入自動車の保管施設となる計画です。現在、4分の1の埋め立てが完了しています。

 本紙は日本共産党の斎藤啓(ひろむ)豊橋市議団長らの情報をもとに、同地区の工事現場で「中央新幹線」と表示された数台のダンプカーが残土を搬入している状況を確認しました。

 JR東海に事実関係を確認すると「現在、名古屋駅新設工事と日吉トンネル南垣外工区(瑞浪市)の発生土の一部を明海地区に搬出している」と回答したものの、汚染土が含まれているかどうか明言しませんでした。

 他方、瑞浪市の担当者は「三河港の埋め立て用に運搬しているのは、土対法の基準を超える重金属などが含まれた残土だとJR東海から聞いている」と答えました。

リニア汚染土に地元反発

法の“抜け穴”利用 環境悪化懸念

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(写真)三河港明海地区の埋め立て工事現場を調査する日本共産党の斎藤啓市議団長=愛知県豊橋市

 本紙が情報公開で入手した岐阜県の資料によると、JR東海はリニア中央新幹線の日吉トンネル南垣外工区(岐阜県瑞浪市)で発生した汚染土を11・5ヘクタールの公有水面埋立工事に使用するとしています。愛知県港湾課によると、三河港明海地区(愛知県豊橋市)の埋め立て面積は約11・46ヘクタールで、岐阜県の資料とほぼ一致します。

とにかく膨大

 岐阜県の発表によると、同工区では2018年3月26日に残土から基準値の最大3・9倍のヒ素と1・01倍のフッ素を検出。基準超の有害物質を含む残土について、工事関係者は「とにかく膨大な量で、毎日のように出ることもある」と証言していました。同年5月30日と6月5日には微量のウランも検出されています。

 いずれも自然由来ですが、土壌汚染対策法(土対法)の基準を超える汚染土は、産業廃棄物処分場での処分や浄化処理が必要です。そのため、同工区の付近にある残土置き場には搬出しないことになっています。

 一方、海洋の埋め立てを規制する海洋汚染防止法(海防法)の基準値は、ヒ素だけでも土対法の10倍となっています。土対法の基準を超えるものの海防法の基準を超えない汚染土を海洋に埋め立てる行為は、法の“抜け穴”を利用する手法だといえます。

住民に説明を

 JR東海は「受け入れ基準に適した土のみ搬入している」として問題視しない姿勢です。豊橋市内で環境ガイドを務める「汐川干潟を保全する会」の鈴木隆年代表は「リニアの残土を埋め立てていることは初めて聞いた。少なくとも周辺住民には説明すべきではないか」と同社の対応を批判します。

 日本共産党豊橋市議団は「三河湾の環境を悪化させるおそれがある」として、明海地区の埋め立てに反対してきました。斎藤啓市議団長は「陸上では処分できない土を海に埋め立てるという判断は、環境への影響を甘くみているのではないか。現場の状況を調べる必要がある」と指摘しています。


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