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2019年10月4日(金)

主張

あいち国際芸術祭

補助金不交付の決定は撤回を

 国際芸術祭・あいちトリエンナーレ2019で中止された企画展「表現の不自由展・その後」について、芸術祭実行委員会と「不自由展」実行委員会との間で9月30日に和解が成立し、展示を再開する方向が確認されました。具体的な協議が進んでいますが、再開が実現すれば「表現の自由」を守れと広がった世論と運動の重要な成果といえます。

金は出さずに口出す政府

 一方で、文化庁が9月26日、採択を決めていた同芸術祭への補助金約7800万円を全額不交付にすると発表したことは重大です。暴力や脅迫によって企画展を中断させた加害者の卑劣な行為を追認する、きわめて不当な決定です。

 萩生田光一文部科学相は、同日の記者会見で「県が批判や抗議が殺到し展示継続が難しくなる可能性を把握していながら、文化庁に報告がなかった」として、手続き上の問題だといいます。

 しかし、芸術祭開幕直後の8月2日、菅義偉官房長官は記者会見で、日本軍「慰安婦」を象徴する少女像や昭和天皇の肖像を扱った作品などが展示されていることに関し「審査時点では具体の展示内容についての記載はなかったことから、補助金交付の決定にあたっては事実関係を確認、精査したうえで適切に対応したい」とのべ、不交付を示唆していました。

 この経過を見れば、不交付決定は展示内容と無関係という説明が強弁であることは明らかです。

 日本国憲法は、21条1項で「一切の表現の自由」を保障し、2項で「検閲は、これをしてはならない」と明記しています。なぜなら「表現の自由」は民主主義社会を支える不可欠の前提条件だからです。個人が物事を自由に判断し、民主主義が健全に機能するには、多様な思想や価値観を「知る権利」が保障されなくてはなりません。

 2017年に改正された文化芸術基本法は、前文で「我が国の文化芸術の振興を図るためには、文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術活動を行う者の自主性を尊重することを旨としつつ…包括的に施策を推進していく」と規定しています。第2条の基本理念では、文化芸術活動を行う者の自主性や創造性の尊重を強調しています。

 あいちトリエンナーレのような大規模な芸術祭は、公的支援なしに開催できません。国や地方自治体が支えることによってこそ、多様な芸術表現の場が確保されます。その際、文化芸術基本法の精神にたてば、表現の自由と独立性を保つためには、専門家の判断にゆだね「金は出しても口は出さない」という原則が求められます。

「文化を殺すな」声高く

 今回の決定は、政府が「口を出した」うえに「金は出さない」という最悪の措置です。憲法が禁じた「検閲」を事後的におこなったに等しい暴挙です。採択した後から補助金交付を全額却下し、経済的打撃を与えるようなやり方がまかり通るなら、主催者は時の政権の顔色をうかがわざるを得なくなり、萎縮を招くだけです。

 先週以降、文科省・文化庁前では「文化庁は文化を殺すな」という抗議行動が取り組まれ、補助金不交付の中止を求めるネット署名には約10万人が賛同しています。安倍政権は今回の不当な決定をただちに撤回すべきです。


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