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2019年9月29日(日)

きょうの潮流

 海を見たら要塞(ようさい)地帯と思へ―。戦前の映画検閲官にとって、軍事機密と制限されていた海岸の撮影は鬼門で、そんな格言まであったといいます▼谷崎潤一郎は小説『検閲官』で取り締まる側と取り締まられる側の滑稽なやりとりを描きました。戦前日本の表現規制に詳しい辻田真佐憲さんが『空気の検閲』で例にあげています。かつて権力の権化といわれた内務省による検閲は日本を軍国主義一色に染めあげました▼戦後、その反省から検閲を廃し、文化の振興と国際交流をかかげ発足したのが文化庁です。基になる文化芸術基本法の前文には「文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識」し、活動に携わる者の「自主性を尊重」することが明記されています▼「平和の少女像」をはじめ表現の不自由が問題になっている愛知県の国際芸術祭。検証委が再開方針を示した直後に文化庁は補助金を交付しないと。前例のない撤回に国の意思が働いたのは明白です。萩生田文科相は手続き上の問題とすりかえましたが新たな検閲との声があがっています▼お金は出しても口は出さない。それは国を破滅させた痛恨の教訓であり、戦後の民主社会を支えてきた立ち位置でもあったはず。なによりも文化の多様性を維持し、世界平和の礎にすることが行政の役割です▼検閲という空気をかもし、社会を萎縮させていく政権の圧力。それに抗する輪をひろげていくことは基本的人権の根幹をなす表現の自由を守り、権力から国民を守ることにつながります。


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