2019年9月24日(火)
対策本部いまだつくられず
台風15号災害2週間 後手の政府対応
9日未明に上陸した台風15号の強風による千葉県を中心とする大規模停電、住宅家屋の損害などの災害発生から2週間がすぎました。最大時約93万戸にのぼった停電は約2800戸(東京電力)に減ったとされますが、いまだに被害の全体像は不明です。被害発生直後の11日には予定通り内閣改造を行うなど、政府の初動対応が後手に回ったからです。防災担当相が本部長の非常災害対策本部もいまだ立ち上がっていません。
「台風の上陸前から関係省庁災害警戒会議を開催するなど適切に対応している」。菅義偉官房長官は20日の記者会見で、政府の災害対応に問題はないと繰り返しました。災害警戒会議は事務的会合で、6日の同会議では後に内閣改造で退任する山本順三防災担当相が「明るいうちに安全な場所への避難を心がけるよう」に呼びかけるにとどまりました。
内閣改造を優先
台風15号が千葉市付近に上陸した9日午前5時以降の政府の対応は後手後手です。最初の関係省庁災害対策会議を開いたのは、33時間後の10日午後2時半。内閣改造が行われた11日は開かず、安倍晋三首相が関係閣僚に停電の全面復旧に全力をあげるよう指示した閣僚懇談会は、災害発生から4日後の13日。経済産業省が菅原一秀経産相を本部長とする停電被害対策本部を設置したのも13日でした。
西日本を縦断した8月の台風10号の上陸前後、政府は、省庁横断で重要問題を扱う関係閣僚会議を2回開き、「先手の対策を」と指示。220万戸が停電する大災害をもたらした昨年の台風21号では非常災害対策本部を立ち上げ対応にあたりましたが、今回はいずれも開いていません。
この問題を問われた菅官房長官は「それぞれの災害の状況で総合的に勘案して、最も適切な態勢を敷いている」(20日の会見)と問題視せず、今後関係閣僚会議さえも開かないと断言。「今回の台風は質が違う。史上最大といわれる瞬間風速57メートルに象徴されるように、風によっての被害が発災している」(17日の会見)としながら、被害実態に即した対応をとっていないのです。
東電見通し追認
大規模停電の問題をとっても政府自ら本腰を入れての対応ではありません。東京電力はこの2週間、停電の全面復旧の見通しを次々変え、被災者・被災地を不安に陥れました。しかし政府は、「全容は控えたい」「停電の復旧が重要。そのうえで検証したい」「東電で検討が行われている」と東電側の甘い見通しを追認し、かばう姿勢に終始してきました。
過去の台風による大規模停電による復旧では関西電力、中部電力などが検証報告書をまとめ、経産省も検討策をまとめています。政府は実態に見合った態勢をただちにとり、過去の災害の教訓を踏まえた具体策をただちにとるべきです。(高柳幸雄)
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