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2019年9月23日(月)

消費税増税は混乱必至

 安倍晋三政権が強行を狙う10%への消費税率引き上げが目前に迫り、複数税率や「ポイント還元」などで現場は大混乱。不安は日ごと高まっています。(清水渡)


奇妙な中小企業化現象

ポイント還元

 政府が「増税対策」目玉とする「ポイント還元事業」は、国負担で2~5%分を還元するもの。中小の小売店・飲食店などでキャッシュカードや電子マネーなど非現金払いをした場合、5%分が還元されます。コンビニなどフランチャイズなら2%還元です。

 この事業の対象となる中小企業は、小売店やサービス業であれば資本金5000万円以下あるいは従業員50人以下(サービス業は100人以下)の企業です。経済産業省の発表では9月5日時点で参加申請した店舗は58万弱で、200万店舗あるとされる対象事業者の3割に届きません。

 中小企業が還元を受ける規定をめぐり、奇妙な現象が起きています。規模の大きいスーパーなどが資本金を減らし、中小企業になっているのです。民間信用調査会社の帝国データバンクによると、今年1~8月に資本金を減らした小売業は471社にのぼり、すでに2018年1年分を上回りました。

 同社の担当者は「資本金を減らすのは経営が低迷し、支払いに当てるために取り崩す場合が多い。今回はそんなに見当たらず、消費税増税対策が多いとみられます」と話します。

8%と10%の線引きは

複数税率

 「低所得者対策」の名目で導入されるのが複数税率。食料品や日刊新聞を増税後も税率8%に据え置きます。ただし、外食と酒類は10%です。

 8%か10%の線引きで混乱は必至です。コンビニやスーパーで総菜を購入して持ち帰れば8%ですが、飲食スペースで食べれば10%です。では、持ち帰るつもりで8%で支払ったのに、知り合いに会って飲食スペースで食べることになったらどうなるのか。支払いの時点で税率は決まるためこの場合、追加の支払いは必要ありません。

 国税庁は具体的なケースを解説する事例集を作っています。16年4月に初めて作られたときは75ケース・56ページでした。その後、事例集は版を重ねるごとに分厚くなり、7月に出された最新版は121ケース・106ページまで肥大化しました。現場からは「複雑すぎて理解不能」との悲鳴があがっています。

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 おもちゃ付きのお菓子など食品と食品以外を一体に販売する場合、何%で売るのかも問題です。

 国税庁は販売価格が1万円以下で食品部分の値段が全体の3分の2以上の商品は8%で構わないとしています。

 卵形のチョコレートにミニ人形を入れたチョコエッグを販売するフルタ製菓はミニ人形分の価格が3分の1以上を占めていると判断して、増税後の税率を10%と設定しています。一方、シールがおまけについたビックリマンチョコやポケモンウエハースチョコなどを展開するロッテは「商品の価格のうち、食品の割合が3分の2以上ある」として8%で販売します。

店舗・商品・支払い方法で違う

同じ商品を購入しても

 複数税率と「ポイント還元」が組み合わさることで、消費者が実際に負担する税率は10%、8%、6%、5%、3%の5種類となります。

 たとえば、ビールを大手デパートで現金購入した場合は10%の税率がかかります。一方、ノンアルコールビールを中小の酒屋でクレジットカードを使って購入すれば3%です。

 同じ商品で税率が異なるケースも。コンビニでパンを現金で購入し、店内で食べた場合は10%ですが、クレジットカードで購入した場合は店内で食べても8%です。同じパンを中小の小売店でクレジットカードで購入し、持ち帰る場合は3%です。購入場所と購入方法で税負担が変わり、不公平が生じます。

チェーンごとに異なる扱い

オーナー負担増の店も

 ファストフードなど持ち帰りもできる外食店では店内飲食と持ち帰りではかかる税率が異なります。しかし、店内飲食と持ち帰りで本体価格を変えることで、消費者の税込み価格を統一しているチェーンもあります。

 同じ牛丼チェーンでも松屋とすき家は税込み価格で表示し、店内と持ち帰りで価格は統一します。吉野家は税別表示で、店内と持ち帰りは別価格です。

 ハンバーガーチェーンのマクドナルドは税込み表示で、店内・持ち帰りは統一価格です。一方、モスバーガーとロッテリアは税抜き価格を表示し、店内と持ち帰りは別価格です。

 フレッシュネスバーガーは税込みで表示し、店内と持ち帰りで価格を統一します。増税された場合でも現行の税込み価格を維持し、消費者に転嫁しないとしています。同社広報は「増税分はフレッシュネスバーガー全体の経営努力で負担する」としています。

 同チェーンはフランチャイズ展開しています。オーナー負担については「オーナーとの契約はさまざまなので一律には言えない」と負担増を否定していません。

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