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2019年9月23日(月)

萩生田文科相 公選法違反か

支部う回し選挙に献金流用疑い

17年総選挙約1850万円

 初入閣した萩生田光一文部科学相が代表の「自由民主党東京都第二十四選挙区支部」が、2017年の総選挙期間中に約1850万円の企業・団体献金を集め、その大半を萩生田氏個人の選対本部に寄付していたことが政治資金収支報告書から分かりました。同氏の選挙運動費用収支報告書には献金した企業名は書かれていません。献金したのは「選挙応援のため」と、複数の経営者が本紙の取材に答えており、公職選挙法違反の疑いが浮上しています。(岡素晴)


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 17年分の収支報告書によると、総選挙が公示された同年10月10日から投開票日の22日までの短期間に、同支部が集めた企業・団体献金は1847万円でした。他方で、同支部は衆院が解散された9月28日を皮切りに、11月10日まで計6回にわたって「はぎうだ光一選挙対策本部」に総額1600万円を寄付。それ以外の「選挙関係費」支出は4万円だけです。同支部が支出した選挙関係費のほとんどが、萩生田氏個人に渡ったことになります。同支部の会計責任者と選対本部の事務担当者は同一人物です。

 総選挙がなかった年の収支報告書と比べ、企業献金の額の変化を個別に見てみると―。東京都八王子市の土建業者は、16年に12万円だった同支部への献金額が、17年は212万円に跳ね上がっていました。この業者は総選挙期間中の10月12日に、200万円を献金していました。

 企業・団体から候補者個人への献金は、政治資金規正法で禁じられています。政党支部をう回して資金の出所が分からなくなった形です。

“個人に献金”証言

17年総選挙中に大口相次ぐ

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(写真)萩生田氏が代表を務める自民党支部の事務所などが入居するマンションの一室=東京都八王子市

 萩生田光一文部科学相が代表の「自由民主党東京都第二十四選挙区支部」が集めた企業・団体献金の総額は、2015、16年はいずれも約1000万円だったのに対し、17年は約3600万円に激増しています。1件ごとの献金の額も15、16年は毎月1万円、3万円ずつなど小口の定額入金が多くを占めていたのが、17年は総選挙期間中に大口の献金が相次いでいました。

 かつて萩生田氏を支援する団体で役員を務めていたという空調機器販売会社の会長は、企業名で総選挙の公示直後に100万円を献金したことについて「覚えていますよ。正式な手続きをして出させてもらいました」と本紙の取材に回答。萩生田氏個人への選挙応援のための献金だったことを認めました。

 同じく100万円を選挙期間中に献金した不動産事業などを手がける企業の社長も、2年前の記憶は不確かだとしつつ、萩生田氏の選挙は毎回、「金額はともかく応援させてもらっています」と語りました。「萩生田先生が八王子市議のころから、ずっとご支援申し上げている。地元の先生に活躍してもらいたいと思っているので」

 萩生田氏が東京都選管に提出した選挙運動費用収支報告書には、収入として同支部からの計1600万円しか記載されていません。公選法は同報告書に虚偽記載をした場合、3年以下の禁錮または50万円以下の罰金を定めています。

 萩生田氏の事務所は本紙の取材に「回答しない」としています。

 萩生田氏は、安倍首相の最側近。八王子市域の大部分が含まれる衆院東京24区の選出です。改憲論議をめぐって衆院議長の交代に言及するなど、改憲になりふり構わぬ首相の本音を代弁してきました。内閣改造でいっそう強まった政権の右派的性格を代表する人物といえます。


違法な献金集めの疑い

上脇博之 神戸学院大学教授

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 政治資金規正法は企業等が政党に献金するのを許容していますが、癒着を防ぐため公職の候補者や政治団体に献金することを禁じています。萩生田氏側の資金の流れを見ると、本来受け取ることができない企業献金を、政党支部をトンネルとして受け取ったのではないかという疑いが生じます。

 なぜなら例年の企業献金は、月々に一定額のものばかりで、ある期間に集中した高額献金はありません。一方、2017年は総選挙期間中に多額の企業献金が集中しています。

 献金した側が「選挙応援のために」と証言しているので、企業献金は、本当は公職の候補者個人に渡したかった献金だったのでしょう。しかし、その献金を萩生田氏の選対本部が直接受け取れば、政治資金規正法違反になります。「政党支部会計責任者」と「選対本部事務担当者」を兼ねる人物がそのほとんどを選対本部に寄付し、政党支部独自の選挙関係費支出をほとんど行わなかったのは、企業の意向を受けていたからでしょう。つまり、選対本部は政党支部をトンネルにして、本来受け取れない違法な企業献金を事実上受け取ったことになります。

 そうであれば、本来は候補者個人に対して行われた企業・団体献金を、政党支部への献金として政治資金収支報告書に記載したことになり、政治資金規正法上の虚偽記載罪の疑いが生じます。また、選挙運動費用収支報告書に、本来は記載されるべき各企業の献金が記載されていないことになり、公職選挙法上の虚偽記載罪の疑いも生じます。

 萩生田大臣は説明する責任があります。


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