2019年9月20日(金)
東電元経営陣3人無罪
国の原子力行政を忖度 東京地裁判決
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東京電力福島第1原発事故をめぐり業務上過失致死傷罪で強制起訴された元会長の勝俣恒久(79)、いずれも元副社長の武黒一郎(73)、武藤栄(69)の3被告の判決が19日、東京地裁(永渕健一裁判長)であり、永渕裁判長は3人を「無罪」としました。検察官役の指定弁護士は会見で「国の原子力行政を忖度(そんたく)した判決だ」と批判しました。地裁前では市民らが「不当判決だ」と抗議の声を上げました。(関連記事)
永渕裁判長は最大争点である海面から10メートルの同原発敷地を超える大津波の襲来が予見できたかについて、被告は信頼性、具体性があるという「認識は有していなかった」と判断しました。
判決は結語で、事故前の原発の規制について「絶対的安全性の確保までを前提とはしていなかった」と言及。「予見可能性の有無にかかわらず、当然に刑事責任を負うということにはならない」と、重大事故を起こしても責任を問わないとしました。
公判で検察官役の指定弁護士は、防潮堤の設置や建物浸水を防ぐなどの津波対策をすべきだったと被告らの責任を追及してきました。これに対し判決はこれらの対策をまともに検討せずに、事故を回避するには2011年3月初旬までに「運転停止措置を講じることに尽きる」と断定。運転停止は「相当に困難なものだった」などと一方的な判断をしました。
指定弁護士が予見可能性の根拠とした02年に政府機関が公表した地震予測「長期評価」の信頼性について判決は、「疑いが残る」などと否定しました。