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2019年9月19日(木)

クローズアップ

福島県の「研究産業都市」構想

被災者置き去り大開発に2300億円

共産党県議団「福祉型への転換」訴え

 福島県の内堀雅雄県政が巨額の税金を投じて進めている、県政史上最大級の「福島国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」関連事業。10月31日告示の福島県議選(11月10日投票)で、県民のくらし・被災者切り捨てを進める一方、大企業呼び込みを狙った大型事業に熱中している県政に対し、各党の態度が問われます。(中川亮)


写真

(写真)福島イノベーション・コースト構想の見直しなど福島県政について内堀雅雄知事に申し入れる、(左から)吉田えいさく、宮川えみ子、神山えつこ、阿部裕美子、宮本しづえの5県議=8月23日、福島県庁

 同構想は、第2次安倍政権下で具体化されました。東日本大震災・東京電力福島第1原発事故で被災した浜通り地域を中心に15市町村で、国・県・市町村、企業などが連携して廃炉やロボット、大規模な「メガ発電」を含むエネルギー、農林水産の各分野の研究・実証拠点をつくり「産業集積や人材育成、交流人口の拡大」を図るというものです。

国家計画として

 2014年6月に同構想の出発点となる報告書をまとめたのは、赤羽一嘉経済産業副大臣(公明党、現・国土交通相)が立ち上げた私的研究会で、県からは副知事だった内堀氏が参加。17年の福島復興再生特措法改定で同構想が法定化され、「国家プロジェクト」と位置付けられました。

 県は、研究施設や道路の整備、補助金制度をはじめ、イノベーション構想関連事業予算として約2300億円(17、18両年度に各700億円、19年度に912億円)を計上しています。

効果に疑問の声

 県は「世界に類を見ない一大研究開発拠点」にするとして、無人航空機(ドローン)などのロボットの実証試験を行う「ロボットテストフィールド」(南相馬市、浪江町)の整備を、156億円かけて進めています。

 原町商工会議所(南相馬市)と福島大学による南相馬地域商工業者実態調査(17年度)では、ロボットテストフィールドや研究施設の建設に伴う効果が「あった」と答えた業者はわずか3%です。そもそも構想実現に向けた費用や実現の時期、誘致企業数の目標も明示されておらず、メディアからも「費用対効果が見えない」「住民は実感薄く」などと指摘されています。

 内堀知事は被災者を置き去りにする一方、「浜通りはもとより県全体を力強く復興させる動きが本格化している」と構想推進に固執しています。

生業への支援を

 日本共産党福島県議団は、財界がもうかる先端産業などのイノベーション関連事業を見直すよう求め続けてきました。18年度予算ではこの事業に700億円を投じ、大型風力の集中立地のための送電網整備に85億円もつけながら、一般家庭の住宅用太陽光発電への補助はわずか約9億円だと批判。研究施設の運営費も、今後の県財政の大きな負担になる懸念があると指摘しています。

 党県議団は、貧困対策や子育て、被災者の生業(なりわい)への直接支援こそ必要だと主張しています。学校給食無償化や若者や低所得者への家賃補助、農業・中小業者の後継者支援など、県予算約1兆4600億円のわずか2%(約300億円)で実現できる「福島県に希望を―五つのプラン」を提案。県政の姿勢を、大企業呼び込み型から福祉型へ切り替えるようよびかけています。


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