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2019年9月19日(木)

鼓動

北京との対応に矛盾

旭日旗容認

 東京五輪・パラリンピック組織委員会が会場に「持ち込みを禁止しない」と表明した旭日旗(きょくじつき)問題の溝は、いまだ埋まる気配がありません。

 発端は8月末のこと。韓国の国会の委員会で旭日旗は「日本が帝国主義と軍国主義の象徴として使用した」とし、競技会場の持ち込み禁止を求める決議が採択されました。

 これにたいし、組織委員会は9月に入り、「旭日旗は日本国内で広く使用されており、旗の掲示そのものが政治的宣伝とはならない」との見解を示しました。その後、橋本聖子五輪担当相が追認し、政府としても容認姿勢を鮮明にしています。

 この間の経過自体がすでに“政治問題”と化していますが、組織委員会は是正する姿勢はみせていません。

政権と同見解

 組織委員会の見解は、安倍政権の主張そのものです。2013年9月、菅官房長官は旭日旗についてこう表明しています。

 「旭日旗のデザインは…日本国内では広く使用されており、これが政治的主張だとか軍国主義の象徴だという指摘は全く当たらない」。政府の見解を組織委員会が踏襲したといっていい。

 しかし、旭日旗が戦前、「陛下の御影」として日本海軍の軍艦旗、陸軍の連隊旗に使用され、日本軍国主義や侵略の象徴となっていたのは歴史的事実です。アジアの人々にとって、この旗が略奪や虐殺の記憶とともにある現実を消し去ることはできません。

 政府自身がそのことを知らないはずはありません。08年の北京五輪の際、北京の日本大使館は日本の観戦者に向けた「安全の手引き」にこう記しています。

 「中国では競技場やイベント会場で政治・民族・宗教的なスローガンや侮辱的な内容を含む旗や横断幕等を掲げることは禁じられています。また、過去の歴史を容易に想起させるもの(例えば「旭日旗」)を掲げるとトラブルを生じる可能性があります」

 日本の政府機関が、旭日旗は過去の歴史を想起させるものだから、掲出しないよう呼び掛けた事実は重いものがあります。それを東京で容認するのはあまりに矛盾しています。

 東京パラリンピックの選手団長会議(12日)で韓国が持ち込み容認に異議を唱えると、中国の代表が支持し、国際パラリンピック委員会は「追って別途議論を行う」としました。

IOC対応も

 国際オリンピック委員会(IOC)もこの問題で声明(11日)を出しています。

 「スポーツ会場はいかなる政治的な意見表明とも距離を置くべきだ。五輪の時期に懸念が生じた場合には、ケース・バイ・ケースで対応する」

 旭日旗の持ち込みの是非に直接、言及してはいませんが、「旗の掲示そのものが政治的宣伝」や意見表明となる可能性があることを示しています。

 平和の意識や相互理解を育むことが五輪の精神です。すべての国の人々が、わだかまりなくその思いを交流する―。その“舞台づくり”は、開催地に課せられた主要な責務であるはずです。(和泉民郎)


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