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2019年9月14日(土)

停電 遅れる復旧なぜ 台風15号

「想定甘かった」と東電 人員・設備投資減が影響か

 台風15号による大規模な停電の復旧が、東京電力の当初の発表から大幅に遅れています。同社は会見で見通しの甘さを認めました。同社は人員や送配電設備への投資額を減らしてきており、関係者は「被害拡大と復旧の遅れの遠因となっているのでは」と指摘します。(原千拓、安川崇)


 千葉県南房総市の女性(73)宅では13日も停電が続きました。「1日ごとに先延ばしにされている感じがして、そのたびに『えーっ』と声を上げたくなる。きちんとした見通しがあれば」と訴えます。

 台風上陸翌日の10日午後、東電は「今夜中に(停電が)約12万軒まで縮小する見込み」だと発表。残りについても「明日中の復旧を目指す」としていました。

 しかし、上陸から5日目の13日午後6時時点でも、18万5000軒が残っています。東電は同日夜の会見で、同日から2週間以内に「おおむね復旧する」との認識を示しました。

 東電は遅れの原因について▽雷雨による作業中断▽夜間作業の効率低下▽倒木などが作業の支障となるケースが多く判明した―などと説明。12日の会見では当初の見通しについて「被害実態を把握できていない段階で出した。想定が甘かったと反省している」と述べました。

 被害が大きかった理由として、台風の風が設計の想定を超えていた可能性はあります。経産省の省令は、電柱などについて風速40メートルに耐える強度を求めています。今回、千葉市では最大瞬間風速57・5メートルを観測しました。

 一方、東電OBの鈴木章治さんは「コストカットの中で、設備の十分な保守・点検ができていたかどうかは検証する必要がある」と話します。

 東電は電力自由化で大口需要家市場に他社の参入が始まった2000年代から経営合理化に大きくかじを切り、11年の原発事故で賠償・廃炉に巨額の出費が見込まれたことがさらに拍車をかけました。

 事故後の新卒採用の抑制で数千人の人員を削減したほか、14年には50歳以上の社員1000人以上が希望退職に応じたといいます。

 1991年に9千億円あった送配電設備への投資額が、昨年は3千億円でした。

 コスト削減の一環で設備交換の見直しも進めています。電柱を取り替える基準を改め、年間の交換本数を40%、費用100億円を圧縮(14年)したことも自社ホームページで紹介しています。

 東電は取材に対し、「電柱などの設備は点検結果に基づいて適切に毎年更新している。投資の抑制で電柱が老朽化したということはない」と説明します。

 鈴木さんは「人減らしでベテランが職場を去り、技術継承に不安を残した。メンテナンスを先延ばしにする姿勢も続いている」と指摘します。


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