2019年9月10日(火)
主張
カジノ基本方針案
利権許さぬ地域のたたかいを
政府が、カジノ開設にむけた地方自治体の誘致活動の前提となる「基本方針案」(「特定複合観光施設区域の整備のための基本的な方針(案)」)を先週、公表しました。「厳正、公正・中立」の看板を投げ捨てて、カジノ推進ありきの姿勢をあらわにする安倍晋三政権の異常な姿がいよいよ浮かび上がっています。
特定地域で優遇する
昨年成立したカジノ実施法は、本来違法な賭博の“開帳”を当面3カ所の特定区域でだけ解禁するものです。巨大な利権を生む事業は、誘致自治体と海外のカジノ事業者による激烈な争奪戦の対象となっています。
カジノ推進派は、カジノが利権の温床となることを危惧する国民にたいして「公営賭博のようなこれまでの枠組みではなく、透明で公正なまったく新しい枠組みをつくる」と宣伝してきました。
その要となるのが「カジノ管理委員会」です。公正取引委員会などと同じように、「独立した強い権限を持ついわゆる三条委員会として設置」し、「カジノ管理委員会がカジノ営業規制等を厳格に執行できる体制の構築が不可欠」(カジノ解禁推進法への国会の付帯決議)とされました。
ところが今年7月に予定されていた同委設置は先送りされました。参院選で争点化しないよう、国会の同意を必要とするカジノ管理委員会人事を提案することを回避した政権の思惑からです。
カジノ規制の細目を定める管理委員会規則はまったく決まっていません。今回の「案」は管理委員会による審査も受けていません。国による「厳格な規制」といっても、カジノ管理委員会など形式的なものだという安易な考え方が根本にあります。
カジノ誘致で先頭を走っている大阪府・市は、2025年に開催予定の大阪万博の1年前にあたる24年の夢洲(ゆめしま)カジノ開設を至上命令としています。その作業の妨げにならないよう、大急ぎで「案」を公表したというのが、真相です。
「案」を示すことで、他のカジノ誘致自治体の動きの加速も促せます。「基本方針」の正式決定前に自治体がカジノ事業者の公募・選定を行うことまで「案」は認めています。
これまでカジノ誘致を正式に表明してきた大阪府・市、長崎県、和歌山県の3者に加え、横浜市が先月、新たに誘致に名乗りをあげました。北海道、東京都、千葉市など「検討中」としてきた自治体でも、カジノ事業者との接触の拡大や、反対を抑え込むための世論誘導が始まるなど、カジノをめぐる狂騒に拍車がかかっています。
美名でごまかせぬ
「案」は、「新たなビジネスの起爆剤」「観光・地域経済の振興」「財政の改善」などの美名でカジノの危険を取り繕っています。しかし、違法な賭博から巨利を得ることが根本にあるカジノビジネスは、多くの不幸を生み出し、日本社会をむしばむことにしかなりません。
カジノ誘致が問題になっている地域では、どこも例外なく住民の強い反対世論が上がっています。秋の臨時国会でカジノ管理委員会人事が提案されれば、それをめぐって激しい論戦が交わされることでしょう。いまこそ地域からカジノ反対の声を広げるときです。