2019年8月25日(日)
主張
日米交渉大詰め
危険性増す協議直ちに中止を
安倍晋三政権とトランプ米政権で進めてきた日米貿易協議はいよいよ大詰めを迎えました。
21日から3日間ワシントンで開かれた閣僚級交渉に参加した茂木敏充経済財政・再生担当相は、終了後の記者会見で、「大きな進展が見られた」と述べ、大枠合意を強調しました。24日からの主要7カ国(G7)首脳会議での首脳会談で閣僚級交渉の結果を確認します。9月下旬の国連総会の際の首脳会談で発表することを念頭に、事務レベルで最終的な詰めを行う見通しです。日本の経済主権や食料主権にとって危険性を増す日米交渉の中止は待ったなしです。
農畜産業の死活問題
日米貿易交渉は、昨年9月の日米首脳会談の合意によって始まりました。茂木氏とライトハイザー米通商代表との閣僚級交渉は今回が7回目でした。それ以外にも事務レベルの協議が続いてきました。閣僚級交渉は今回が最後とみられます。
トランプ政権が、日本やアメリカなど12カ国で合意していた環太平洋連携協定(TPP)から一方的に離脱したため、日本への牛・豚肉や乳製品の輸出で、アメリカが、オーストラリアやニュージーランド、欧州連合(EU)より不利になったという不満が米国内で噴出しています。トランプ政権が日本に貿易交渉を迫り続けてきたのは、TPPより有利な条件で、農・畜産物や自動車などの工業製品などの輸入拡大を日本にのませるためです。米国製兵器の大量購入も求めています。
来年の大統領選に向け、日米交渉で目に見える成果を出すことを迫られているトランプ大統領は、これまで繰り返し国内向けに、「日本が間もなく、(農産物を)たくさん買ってくれるようになる」などと公言しています。4月から3カ月連続で開かれた首脳会談では、「8月には良い発表ができると思う」と発言し、日米間での“密約”の存在を示唆しました。
トランプ政権が求めているように、農・畜産物や乳製品、工業製品などの輸入拡大を受け入れれば、日本の農・畜産業や自動車などの下請け中小企業にとってはそれこそ存亡にかかわります。
農産品の関税引き下げについては、牛肉や豚肉にかける関税を、TPPと同じ水準まで引き下げることになる見通しです。そうなれば、牛肉は現在の38・5%の関税が段階的に9%に、豚肉はソーセージなどに使う低価格品の関税を現在の1キログラム482円から段階的に50円に、高価格品の関税は最終的にゼロに引き下げます。米国産米や米国製乳製品の輸入特別枠でも大幅譲歩の危険があります。
TPP「水準」上回る危険
安倍政権は繰り返し「密約はない」とかTPP水準が「最大限」と言い続けてきました。しかし、合意内容によってはTPPの水準さえ上回る危険があります。もともとTPPは、農産物などの輸出大国や多国籍企業に有利なルールづくりであり、その水準そのものが大問題です。
参院選では国民をごまかし続け、それから1カ月余りしかたっていないのに大幅譲歩の合意をまとめようという、ウソとゴマカシの安倍政治は断じて許せません。日米貿易協議は即刻中止すべきです。安倍政権に退陣を迫ることがますます重要です。