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2019年8月23日(金)

リニア工事で大井川流量減少

JR 湧水全量戻せず

静岡県 「認められない」

意見交換会

写真

(写真)意見交換する専門部会の委員とJR東海関係者=21日、静岡県庁

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事による大井川の流量減少対策をめぐり、静岡県が設置した専門部会の委員とJR東海との意見交換会が20、21の両日開かれました。トンネル湧水を戻せない期間が生じることに、県側が「認められない」と批判するなど課題が浮かび上がりました。

 県は、地質構造・水資源と生物多様性の二つの専門部会を設置し、大井川の減水対策などの検証を進めてきました。議論を踏まえ6月に中間意見書をJR東海に送付し、7月にはJR側が回答案を提示。意見交換会では、意見書と回答案についてJRの担当者と専門部会の委員9人が意見を交わしました。

 この中でJRの担当者が「一定期間、(湧水)全量を戻せない期間が生じる」と発言。「湧水全量を戻す」ことを前提に対話を進めてきたため、議論を見守っていた難波喬司副知事が「工事中に全量は戻さないと今はっきり宣言された。利水者も黙っておれない。看過できない」と批判する場面がありました。

 JR東海は、隣接する山梨、長野両県から静岡県内に向けトンネル掘削を先行して進める計画です。その際、トンネル内に湧き出た水は静岡より勾配が低い両県に流出します。JRは山梨県側で最大毎秒0・31トン、長野県側で毎秒0・01トンの湧水量を想定。特に山梨県境には畑薙(はたなぎ)断層があり、水を多く含んでいると予測されます。JRは、トンネルを早期につなぎポンプなどを整備することで流出期間を短くするなどと説明しました。

 難波副知事は交換会後の会見で「大問題。相当深い議論をしないと、とても相互理解は得られない」と話しました。

 交換会の中では、地質部会の委員から「中下流域に影響が出た場合、工事との関係性の有無を確認するといっても、ほとんど確認できず住民が泣き寝入りになるのでは」「破砕帯にたまった地下水が抜け、沢が枯れてしまった場合の対策が示されていない」「地質データが不足している」などの意見が出ました。

 生物多様性部会の委員からは「南アルプスに歴史上初めてトンネルを掘る。生物多様性に与える影響は計り知れない。地域個体群の絶滅もあるという認識を大前提として共有したい」「どんな変化があれば影響があったと判断するのか。そのための調査データが不足している」の指摘も。

 発生土置き場の問題などは、ほとんど議論されておらず「課題は山積していると認識している」の発言もありました。

 リニア工事は沿線7都県で静岡工区のみ本体工事に未着工です。品川―名古屋間の2027年開業をめざしJR東海が着手を急ぐ中、この日は国土交通省鉄道局施設課の森宣夫環境対策室長が初めて参加。会見で「状況に応じて検討の促進に努めたい」「科学的、工学的な議論がなされていたと思う」などと話しました。

 県は29日に、大井川利水関係協議会とJRとの意見交換会を行う予定です。


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