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2019年8月23日(金)

主張

シベリア抑留

政府は実態解明に責任果たせ

 戦前の日本が侵略・支配していた「満州」(現在の中国東北部)などにいた日本軍兵士や民間人のうち約60万人が第2次世界大戦直後、旧ソ連によりシベリアやモンゴルの各地に連行・抑留され、強制労働をさせられました。当時のソ連の最高指導者スターリンが連行を命じる指令を出したのは、1945年8月23日でした。元抑留者と遺族らはこの日を「シベリア抑留の日」とし、毎年東京で「犠牲者追悼の集い」を行っています。

 おびただしい命が奪われた悲劇の全体像の解明や、残されたままの遺骨収集の問題など関係者が政府に対応を求める声は切実です。

遺骨の半分以上は未収集

 「ダモイ・トウキョウ(東京に帰す)」と日本兵らはだまされて、シベリアなどに移送されました。捕虜のすみやかな送還を明記した国際法規に反する重大な人権じゅうりんです。氷点下40度を下回る極寒の中での過酷な労働、食料や衣類、薬などの圧倒的な不足により、飢えや栄養失調、病気、けがで多数の人が亡くなりました。

 政府は死者の数を約5万5千人としますが、正確な人数は不明です。遺骨が収集できたのは約2万2千人で、半分以上が残されたままです。

 元抑留者や遺族の粘り強い運動で議員立法による「戦後強制抑留者に係る問題に関する特別措置法」(シベリア特措法)が2010年、成立しました。日本国籍の元抑留者には給付金が支給されましたが、課題は山積しています。

 同法13条は、強制抑留の実態調査を総合的に行うための基本的方針を定め、抑留下での死亡場所の確認、遺骨・遺留品の収集と送還などを政府に求めています。

 先月、厚生労働省が14年に収集した遺骨のうち16人分が「日本人ではない」と鑑定されたこと、それを公開しなかったことが明らかになりました。元抑留者は「国の命令で戦地に行った戦友たちがどのような思いで死んでいったのか。これでは浮かばれない」と怒りを隠しません。遺骨収集をめぐる政府のずさんなやり方は、これまでも問題になっています。フィリピンでは遺骨に日本人以外の骨が混じっていたことが分かり、収集事業が一時中断しました。

 16年成立の戦没者遺骨収集推進法は、「国の責務」と明記しています。国内外の戦地のほか強制抑留による戦没者は約240万人に上り、うち約112万人の遺骨は今も現地に置き去りです。安倍晋三政権は立ち遅れている事態を直視し、対策を強めるべきです。

 一方、シベリア特措法は、日本の植民地だった台湾や朝鮮半島出身などの抑留者を給付金支給の対象にしていません。日本国籍以外の元抑留者に応える方策の検討が求められます。

「次世代へ」の声は切実

 元抑留者は「次世代にも継承してほしい」と強く願っています。シベリア特措法は、戦争犠牲の体験を後代の国民に継承をはかる事業を進めることや、犠牲者追悼の事業の実施も定めています。

 03年から関係者の努力で継続して開かれている23日の「追悼の集い」(東京の千鳥ケ淵戦没者墓苑)を、国全体の式典にしてほしいという声が上がっています。元抑留者は年々減少し、平均年齢は96歳です。戦後75年の節目を前にして政府の姿勢が問われます。


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