2019年8月19日(月)
きょうの潮流
「君がその道をつくるんだよ」。朝ドラの主人公「なつ」が夫に背中を押され、子どもを産む決心をかためました。アニメーターの仕事を続けながら▼同じ職場の女性が妊娠し、会社から契約社員になることを迫られ退職していました。自分は辞めたくないと悩むなつ。夫は子育てしながら仕事を続け、それが認められれば、ほかの女性にとっても働きやすくなるんだ、と励まします▼事情を聞いた職場の仲間たちも立ち上がり経営者に直談判。なつは社員のままで作画監督という大役にも挑むことに―。じつはこれ、ドラマの舞台とされている当時の東映動画(現・東映アニメーション)で実際にあった話です▼入社時に女性は結婚して子どもができたら退職するとの誓約書を書かされました。しかし、労働組合の要求で撤廃。日本の女性アニメーターの草分けで、なつのモデルといわれる奥山玲子さんは出産後も仕事を続けた先駆けとなりました▼女性差別や出来高払い、組合員の大量解雇…。高畑勲さんや宮崎駿さんらがいた東映動画労組の仲間とともにたたかい続けた奥山さん。本紙日曜版(7月14日号)にもその様子が描かれています。3年前には契約者への労働基準法の完全適用や無期転換制度をかちとりました▼現在の労組を取材した記者は、良い作品づくりと人間らしい働き方を求めた奥山さんたちのたたかいが今に引き継がれているといいます。働きやすい環境をのぞむ声はこれからも。先人が切り開いてきた道をひろげるために。