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2019年8月10日(土)

IPCC特別報告

土地利用改善でCO2減も

食料生産にも提言

 【ベルリン=伊藤寿庸】気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は8日、気候変動と土地に関する特別報告書を発表し、気候変動による砂漠化や土地の劣化が広がっているものの、持続可能な土地利用や食料生産を通じて二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガスの排出削減に貢献できると訴えました。

 報告書は、▽土地が人間活動の圧力をますます受けている▽土地が温暖化の原因にも対策にもなりうる▽土地は唯一の解決策とはなり得ない―との基本的見地を展開。IPCCの専門家ジム・スケア氏は、「農業、林業などの土地利用は、温暖化ガスの23%を占める。同時に化石燃料と産業の排出するCO2の約3分の1を自然の土地が吸収する」と指摘しました。

 豪雨の頻発による耕地の浸食が発生。土地の劣化で、炭素を吸収する能力も下がり、これが気候変動を加速させる一方、気候変動による土地の劣化も起こっています。世界で5億人の住む地域で砂漠化が起こっているほか、乾燥地域での水の希少化、火災の頻発、永久凍土の融解のリスクも増大しています。

 報告書は、気候変動が食料減産につながり、食料安全保障や栄養状態に否定的影響を与えると予測。IPCCの専門家プリヤダルシ・シュクラ氏は、「とくにアジア、アフリカ、ラテンアメリカの低所得国に劇的な影響を与えるだろう」としています。

 記者会見でIPCCの科学者は「特定の食生活を進めたりはしない」と述べましたが、報告書は動物性食料の生産が多くの土地や水の占有につながっていると指摘。「植物に基づく食料、持続可能な動物起源の食料」が2050年までに年間0・7~8・0ギガトンのCO2削減につながると提言しました。世界の食料の3分の1が廃棄されており、食料のムダを減らせば排出削減につながるとしています。


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