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2019年8月7日(水)

主張

大学入試の英語

公平欠く民間試験利用中止を

 2021年春から、大学入試センター試験にかわる大学入学共通テストが実施されます。同テストの英語で、既存の民間の資格・検定試験を利用することに、高校や大学などの当事者に懸念や不安が広がっています。

不安が解消されていない

 全国高校長協会は7月25日、文部科学省に対し「公平、公正に対する不信が払しょくされていない」など六つの不安項目を挙げ、解消を求めました。実施を見送るべきだとの声が相当数あるといいます。「朝日」と河合塾の共同調査(昨年7月)では、回答した691大学の入試担当者の46%が「問題がある」と回答しました。また、国立大学の4割(35校)は、公平性への懸念などから合否判定には使わないと決めています。

 民間試験の利用とは、英検、GTEC、TOEFLなど七つの民間事業者が行う資格・検定試験のいずれかを2回受験し、その成績を各大学に提供する仕組みです。英語の4技能(読む・聞く・話す・書く)を測るとしますが、試験の公平性や英語教育のあり方にかかわる大きな問題をはらんでいます。

 民間試験はそれぞれ目的が違います。ビジネス英語のためのものから留学のためのものまでさまざまです。難易度も異なります。その成績を公平に比較するのは無理があり、どの試験を受けたかで成績が左右されます。文科省は、CEFR(欧州で第2言語能力の評価に参照されている目安)の6段階に各試験の成績を対照させるから問題ないようにいいますが、各事業者の申告によるもので、客観的な裏付けはありません。

 問題作成から試験実施、採点まで事業者に委ねるため、採点の質保証や情報漏えいへの危惧もあります。民間事業者の一つ、TOEICは、処理の複雑さを理由に参加を取り下げました。

 しかも、受験生の経済的負担は深刻です。1回の受験料が安いもので5800円、高いものは2万5000円を超えます。会場が大都市にしかない試験もあり、地方から出かける時間と交通費、宿泊費もかかるなど、低所得の家庭には大きな重荷です。受験機会の公平性が保障されていません。

 そもそも民間試験の多くは実用英語であり、子どもたちの英語学習のために開発されたものではありません。それを共通テストに持ち込めば、中学・高校の授業が民間試験の対策に偏り、言語・文化への理解や文法など基礎的な学習がおろそかになる危険があります。

 また、数学・国語では記述式を導入します。50万人以上の受験生の記述答案に対して20日以内に正確な採点を行うことは極めて困難です。文科省は採点者を1万人必要と見込んで民間事業者に委託しますが、学生のアルバイトも認めることに採点の質や公平性などで疑問の声があがっています。

現場の声を踏まえよ

 こうした事態になったのは、共通テストの構想が、教育現場や専門家の意見を十分に踏まえず、もっぱら企業のグローバル展開にみあった英語のできる人材育成などのために推進されたからです。このまま拙速に実施すれば、日本の教育に大きな禍根を残します。最も被害を受けるのは受験生です。

 英語での民間試験の利用を中止するなど、入試のあり方を見直すことが必要です。


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