2019年7月19日(金)
消費税10% インボイス
中小業者廃業の危機
参院選でノーの審判を
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消費税増税とセットで導入がねらわれる「インボイス」(適格請求書)制度。「複数税率」を理由に消費税の免税業者(売り上げ1000万円以下)が課税業者となって導入を迫られるものです。その是非が参院選で問われます。岩手県一関民主商工会の調査で、課税業者になると大幅な負担増が強いられ、課税業者にならないと廃業へ追い込まれる危険性が明らかになりました。
(鎌田有希)
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今回の調査は、最高934万円から最低101万円までの中小零細の免税業者20者を対象に、課税業者に転換した場合の消費税負担額(表1)や、企業から取引を打ち切られた場合の損失額(表2)を試算しました。
20者全体の売り上げ平均が507万円に対し、平均所得は102万円。消費税額は平均17万7000円に上るなど所得に占める割合は平均16%超で、45%を超えるケースもみられました。(表1)
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大幅負担増
養鶏業を営む菊池芳郎さん(48)は、課税されると37万円も負担が増えます。「今だって貯金も考えられない生活なのに、社会保険料に消費税増額分を足すと100万を超え、所得の4分の1弱になる。税金を払うために働いているようなものだ」と訴えます。
6者が課税額分を価格に転嫁することが「全くできない」と答え、過半数の業者が持ち出しになると答えました。インボイスを導入せず企業間取引から排除されると、損失が所得を上回るケースも見られます。(表2)
導入阻止を
クリーニング業を営む岩城進さん(仮名・48)は、「取引から外されないために課税業者への転換を選ぶしかないのか」と怒りを抑えきれません。
「市内の、10者ほどの同業者はほとんどが大手企業のチェーン店。顧客には学校や病院もあるし、取引から排除されれば影響は大きい。その損失分を単価に転嫁して値上げに踏み切ろうとすれば、価格競争に負けてしまう」
調査にあたった一関民商の山口伸事務局長は、「課税業者になれば大変な負担が強いられ、取引から排除されると大変な損失を強いられることが分かりました。多くの免税業者は営業の危機に直面し、廃業に追い込まれていく。地域経済やコミュニティーが破壊されかねません」と指摘します。
「インボイス制度そのものが、まだ知られていません。個別に試算を実施するなどして危険性を知らせ、導入を阻止したい。参議院選では、増税そのものに反対の共産党と増税中止の野党共闘を応援しようと、会員さんに呼びかけています」と話しています。
インボイス 品目ごとの税率や税金合計などを記載した帳票類のこと。仕入れ税額控除の要件となる制度です。発行できるのは課税業者に限られ、免税業者からの仕入れは仕入れ税額控除から外れるため、取引から排除される危険があります。