2019年7月12日(金)
中央最賃審議会
安倍政権の改定方針 時給1000円は10年後
4日から始まった中央最低賃金審議会で政府は「全国加重平均1000円」の早期実現を諮問しました。格差と貧困が広がるなか労働者・国民の願いにこたえる改定となるのか、政府の姿勢や目標をみてみます。
安倍政権が示した目標は、地域格差を残しつつ、全国で時給1000円に届くには10年もかかるものでした。
■従来通り維持
中賃審で、根本匠厚労相は「骨太の方針」で「より早期に全国加重平均が1000円になることを目指す」としたことを強調しました。各紙は「3%上げ検討」「3%上げへ攻防」と従来通りのペースが維持できるかが焦点だと報じました。
現在のペースでいくと、政府が掲げる「全国加重平均」で1000円になっても、実際に1000円を超えるのは8都府県にとどまります。最低の鹿児島が1000円になるのは10年もかかります。
昨年は、中賃審の示した23~27円(平均26円)の引き上げ目安に対して、半数近い23県が1~2円を上積みしました。低水準で地域間格差を広げる方針に地方から「ノー」の声があがった形です。
全労連の最低生計費調査では、8時間労働で普通の暮らしをするには全国どこでも時給1500円以上が必要だという結果が出ています。政府の目標では遠く及びません。
中小企業支援について厚労相は「賃上げしやすい環境整備」(骨太方針)をあげました。しかし実際は、賃上げ支援策「業務改善等助成金」の予算を、2014年の35・9億円から19年は6・9億円に削減しています。抜本的な中小企業支援に取り組まないことが、使用者側の最賃引き上げ反対の最大の理由となっています。
参院選で日本共産党は、ただちに全国どこでも1000円に引き上げ、1500円をめざし、全国一律制度を創設しようと呼びかけています。そのために中小企業支援予算は1000倍に引き上げると訴えています。
■生計費で審議
最賃(地域別)の改定で考慮される要素の一つである生計費については、人事院が示す「標準生計費」が参考資料として審議会に提出されました。
しかし、2019年に発表した標準生計費(4人家族)を見ると、最高額の東京よりもCランクの香川、Bランクの兵庫が高くなり、逆転現象が起きています。
全労連が全国で実施した最低生計費試算調査では、25歳単身者の最低生計費は全国どこでも月22万~25万円程度が必要で、地域間で大きな格差はほとんどありませんでした。
都道府県の消費者物価指数も最高と最低で8%程度の差しかありませんが、最低賃金の地域間格差は約30%もあり、最賃の格差は物価よりはるかに大きくなっています。
生計費の根拠とされるデータがその役割を果たしていないことを示しています。生計費にもとづく審議が必要になっています。