2019年7月8日(月)
フジテレビ「ザ・プライム」党首討論
志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長は7日放送のフジテレビ番組「日曜報道 THE PRIME(ザ・プライム)」で行われた党首討論で、韓国に対する日本政府の輸出規制措置や、日米同盟、年金、消費税増税などの問題について与野党党首と議論しました。
韓国への輸出規制―政治的な紛争解決に貿易問題を使うのは禁じ手
日本政府は4日、「不適切な事案が管理貿易で発生した」ことを理由に、韓国を対象に半導体材料の輸出管理を強化する措置を発動。韓国側は「政治報復」と判断し、撤回を求めるなど大きな外交問題になっています。安倍晋三首相は「国と国との約束を守らないからだ」と圧力をかけるのは当然との態度を示しました。志位氏は、次のように述べました。
志位 いま安倍さんが“国と国との約束をたがえた”ということを理由にされました。いわゆる政治的な紛争の解決に貿易問題を使うのは、私は禁じ手だと思いますね。
しかもいまの状況というのは、朝鮮半島、板門店でああいう3回目の米朝首脳会談があって、関係国が協力し、いかにこの「平和プロセス」を前に進めるかという点で一致協力する必要がある。そのときに、G20(20カ国・地域首脳会議)の主催国として文在寅(韓国大統領)さんの面会要請があっても会わない。話し合いもしない。そして自ら「カヤの外」に出てしまう。そういうことでは、いまの状況を前に進めるうえでも、「あらゆる機会、チャンスをとらえ、拉致問題も解決する」とおっしゃっていたにもかかわらず、やっていることは逆行しているんじゃないかと。私はこういうやり方はよくないと思っております。
志位氏が外交的努力を提起したにもかかわらず、安倍首相はなおも「国と国との約束が守られていない」と主張。公明党の山口那津男代表も「信頼関係が損なわれたことであれば、優遇措置を外す点では政府の行いは妥当だ」と述べました。
トランプ「安保条約」発言―安倍9条改憲の狙いが浮き彫りに
続くテーマとなった日米同盟問題で、トランプ米大統領が「だれかが日本を攻撃したら、われわれにはたたかう義務があるが、日本はそれをしなくてもいい。われわれが助けるなら日本もわれわれを助けるべきだ」(6月29日)と発言したことをめぐって議論になりました。安倍首相は「私がトランプ大統領と(安保条約第5条の防衛義務、第6条の基地提供義務の)話をするたびごとに一応納得いただいている」と、トランプ大統領から首脳会談などで繰り返し同盟強化を求められていることを明らかにしました。立憲民主党の枝野幸男代表は「アメリカの前線展開している基地が日本にあることは、日本が最初に攻撃対象になるリスクを日本は背負っているときちんと国内外に訴えるべきだ」と発言。志位氏は「トランプ発言」の本質を次のように指摘し、安倍首相とやりとりになりました。
志位 このトランプさんの発言というのは、実は安倍さんのかねてからの持論です。この本(『この国を守る決意』)を持ってまいりましたが、これを見ますと、「軍事同盟というのは“血の同盟”」だと。「日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことがない」、これで「完全なイコールパートナーと言えるでしょうか」「(日米安保条約を)堂々たる双務性にしていく」と言っているわけですね。
私は、先日(3日のテレビ朝日番組「報道ステーション」で)の党首討論で「このご本の考え方を変えましたか」と聞きましたら、「変えていない」ということなんですね。
そうしますと、全世界に展開している米軍にいったん事があったときに、米軍のために「血を流し」てたたかう自衛隊にしていこうということになるわけですよ。これが、憲法を変える本当の目的だということが、トランプさんの発言で浮き彫りになったというのが現状じゃないでしょうか。
安倍 ちょっと事実と違うんですが、その考え方は同じですかといわれたんで、憲法の制約があって、それは完全な双務性にすることはできない、いわば集団的自衛権のフル(全面的)な行使はできませんというのがいまの私の考え方であり、それはもういま日本の立場であるということは、申し上げておりました。
その上において、私の立場は、この総理大臣の経験をへるなかにおいて、そういう立場になったということでありますが、そこで、トランプ大統領に対しても、枝野さんからはもっとはっきりおっしゃるべきだと、こうお話があった。トランプ大統領には、平和安全法制をわれわれは制定をして、そのなかにおいて、日本を守るためであれば日米は助け合えるようになったし、昨年も新たな法制によって、16回アメリカの艦船、飛行機を防護する任務を果たしていますよ、これは日本にしかできないことを日本はやっていますよという話をしております。
志位 いまの発言は、いわば語るに落ちたと思います。憲法の制約があってフルの集団的自衛権は発動できないということになりますと、それを発動するために憲法を変えなきゃならないと、そういうことじゃないですか。
「マクロ経済スライド」の廃止を―いちばん被害をこうむるのは現役世代
年金問題では「(年金額が)食べていけない金額まで減ってしまう人が出てきたときにどう最低保障機能を保つかが大切」(国民民主党の玉木雄一郎代表)など、「減らされる年金」「低すぎる年金」が議論になりました。志位氏は次のように述べました。
志位 年金の問題、年金が足らないという問題も大きな問題なんですが、それにくわえまして、「マクロ経済スライド」によって、実質的に年金を7兆円規模で削減するという大問題があると思うんですね。
いちばんその被害をこうむるのが、30代、40代、現役世代なんですよね。40代以下の方についていいますと、1人月額2万円、ご夫婦で4万円下がってくる。それから、国民年金の場合、満額でも6万5000円でしょう。これが現在価格で3割減ですから、4万5000円まで減らされる。これではとても生きていけない。
ですから私たちは、この「マクロ経済スライド」を廃止して、まず「減らない年金」にする。そして(低年金者の)底上げをする。そのための財源案も具体的に提案しております。まずこの改革を取り組むべきだということを強く言いたいと思います。
国民の生活実態を踏まえて、緊急に急ぐべき具体的な年金改革を提起しているにもかかわらず、安倍首相は答えませんでした。
年金問題解決の根本策―賃上げ、正社員化を強力に進めることが大事
立民・枝野氏は、「30代、40代で貯蓄の少ない人の多くは非正規(雇用)。この非正規をいかに正規化していくか。もう一つは非正規であっても厚生年金に入れるようにしていくことを急がないといけない」と提案。社民党の吉川元幹事長も「(安倍首相は)400万人雇用増えたというが、その多くは非正規雇用だ」と指摘しました。志位氏はこれらの発言を受け次のように述べました。
志位 枝野さん、吉川さんの提起した点、とても大事だと思うんですよ。
この30代、40代で貯蓄が少ないという問題にくわえて、パートで働いている労働者の方で厚生年金に入っていらっしゃるのは35%、派遣の場合は67%しかいないんです。そういう方は、本当に低賃金で働かされて、とても貯金はできない。老後に受け取れる年金は、国民年金しか受け取れない。そしてその国民年金もカットされるということになったら、これは本当に生活していけないですよ。
ですから、やはり年金の問題(解決)の根本策は、もちろん少子化の問題、これはきちんと手を打っていく必要があるけれども、同時に、働く人の賃金を上げる、正社員にする、これを強力に進めるということが大事です。この間やってきた労働者派遣法の改悪みたいな、非正規に置き換えるというやり方はあらためないといけないということを強調したいですね。
消費税10%―8%増税の打撃が回復していないところへの増税は無謀
安倍首相は「税収は順調に伸びている。今年度は過去最高だ」などと発言しました。安倍政権が狙う10月からの消費税10%増税について志位氏は次のように述べました。
志位 いまの日本経済の特徴を一言でいいますと、(2014年の)8%の増税の打撃から回復していないと。8%前に比べて、家計消費は年25万円減っているんですね。実質賃金は10万円減っている。
私は、この前、京都の仏具屋さんにいきましたら、“8%になってお客さんこなくなった”“10%になったらお店を閉めなきゃならない”と(訴えられていました)。これは街の声ですよ。打撃が回復していないところに増税をかぶせるというのは、本当に無謀であって、やめるべきだと思います。
安倍首相は、「家計調査で世帯あたりの消費については8カ月連続改善している」などと発言しましたが、志位氏が指摘した8%増税をきっかけに、家計消費が落ち込んでいる問題には反論できませんでした。