しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年7月8日(月)

年金、消費税、憲法… NHK「参院選特集」党首討論

志位委員長の発言

 参院選真っ最中に行われた党首同士の直接討論となった7日のNHK番組「参院選特集」。日本共産党の志位和夫委員長は、年金問題や消費税増税、憲法改定問題をめぐる安倍晋三首相の姿勢を厳しく批判するとともに大いに対案を語りました。


参院選 何を訴える

「くらしに希望を」

――最賃引き上げ、国保料引き下げ、大学学費半減などにとりくむ

 選挙戦で何を重点的に訴えていくのか。志位氏は次のように表明しました。

 志位 「くらしに希望を」と訴えて選挙をたたかいます。

 消費税10%ストップさせ、富裕層と大企業に応分の負担を求めてまいります。

 7兆円もの年金削減をやめさせて、低年金の底上げをはかっていきます。

 最低賃金1500円など、8時間働けば普通にくらせる社会をつくります。

 高すぎる国民健康保険料を下げまして、くらしを支える社会保障にしていきます。

 学費についてはただちに半分、ゼロをめざします。

 そして、ジェンダー平等社会をめざす選挙にしていきたいと思います。

年金など社会保障は

「マクロ経済スライド」を廃止し「減らない年金」を

――「三つの対策」で持続可能な年金をつくれる

 公的年金だけでは老後の生活資金が2000万円不足するとした金融庁報告書などで改めて不安が高まっている年金問題では、安倍首相が「負担を増やさずに額を増やすことはできない。打ち出の小づちはない」などと発言。志位氏は次のように述べました。

 志位 「年金が足らない」ということにくわえまして、「マクロ経済スライド」によって、7兆円の規模で、実質、年金が減らされるという大問題があると思うんですよ。

 これをやりますと、現役世代の年金がとくに減らされる。いま40歳以下の方は、1人あたり月2万円、ご夫婦で4万円減らされる。国民年金の場合、満額でも月6万5000円ですが、現在価格で3割カットですから、4万5000円まで減らされる。とても生きていけません。

 ですから、私たちは「マクロ経済スライド」を廃止して、「減らない年金」にすることを主張しております。

 (安倍氏は)「打ち出の小づちはない」とおっしゃるんですけれどね、私たちはたとえば、高額所得者優遇の保険料の仕組みをあらためることで、1兆円の(保険料)収入が増える。200兆円の積立金については計画的に取り崩して給付にあてる。働く人の賃上げと正社員化によって、年金の支え手を強くする。こういう三つの対策を打つことで、持続可能な年金をつくれると具体的に提案しております。

答弁書に「基礎年金は3割減、総額7兆円減」と書いてある

――「減らない年金」のための具体策をなぜ拒否するのか

 これに対して安倍首相は、「マクロ経済スライド」は、支え手が減っていく中で年金の給付と負担のバランスを世代を超えてとっていく仕組みだと説明し、「マクロ経済スライドは実額を減らす仕組みではなくて、伸び率を調整していくものだ」などと弁明しました。さらに「積立金があって運用益が出て将来の給付を確かなものとしていくことができるが、マクロ経済スライドをなくし、積立金を減らしていけば、それもできなくなってしまうし、今の40代の方々がいよいよ年金を受給する段階になって積立金がなくなってしまう」などと述べました。志位氏は反論しました。

 志位 いま(安倍氏は)、「マクロ経済スライド」について、これは何がなんでも維持するんだというお話でした。しかし、「マクロ経済スライド」というのは、物価や賃金の伸び率に比べて、年金給付を抑えるものですから、これは実額ではどんどん減っていくんですよ。

 安倍さんからの私の質問主意書に対する答弁書――これでは基礎年金については現在価格で3割カットすると(あり)、それから(総額で)7兆円減ると書いてあります。これではくらしていけないということを、私は問題にしているんです。

 それじゃあどうするんだと。私たちは、具体的な提案を出しているじゃないですか。さきほど三つほど言いましたけれども、そのうちの一つ、たとえば年金の保険料の仕組みが。いま年収1000万円で頭打ちになっている。これを超えますと保険料上がらない。これをせめて、健康保険なみに2000万円まで上げれば1兆円は(保険料)収入が増えるんですね。こういうことなぜしないのか。

 「7兆円かかるから、1兆円やっても仕方ないじゃないか」というのは理由になりません。まず1兆円。まず収入を増やしたらいいじゃないですか。なぜそれをやらないのか。

社会保障のあり方、財源は

正社員化と賃上げで年金の支え手を強くすることが肝心

――労働者派遣法改悪など非正規化をすすめる政策の転換を

 志位氏の提起に対して、安倍首相から返答はありませんでした。首相は政権に都合のいい数字をあげながら、「マクロ経済スライド」は「年金制度を維持しながら」「ご協力いただいて調整をしているものだ」などと繰り返しました。

 志位 この問題を議論しますとね、安倍さんは「制度の安定は大事だ」とおっしゃる。たしかに制度は安定させなければならないけれども、国民の暮らしが滅びてしまってはなんのための公的年金かということになるわけですよ。

 さきほど言ったように、国民年金までカットされたら生きていけないという実態があるわけですね。そして私は、具体的に(保険料の)上限を引き上げたらどうかという提案をしましたけれどもお答えになりません。

 もう一点申しますと、いまパートで働いている労働者の35%しか厚生年金に入っていないわけですよ。派遣の場合でも67%しか入っていない。こういう方々の多くは低賃金です。とても蓄えはつくれません。そして老後になったら国民年金しか受け取れない。しかしそれもカットされるということになったら生きていけません。

 ですから、いま非正規で働いている方を正社員にする、あるいは最低賃金をどんと引き上げて、賃上げをする。そのことによって年金の支え手を強くする。これが大事なのに、やっていることは、たとえば労働者派遣法を改悪して3年以上たっても派遣のままどんどん使い続ける。正社員から非正規への流れを強めるような法改悪をやっている。足元の数字いろいろおっしゃるけれど、実際やっているのはそういうことなので、政策転換が必要だということを強く言いたいと思います。

 この議論の中で、安倍首相や公明党の山口那津男代表は、消費税10%増税と引き換えに低年金者に「最大月5000円、年間6万円」を給付する制度を上げたのに対し、野党側からは少なすぎるとの声があがりました。立憲民主党の枝野幸男代表は、「志位さんからあったご提案については『マクロ経済スライド』という基本のところのなかにも、取り入れられる価値があるのではないか」と発言。志位氏は、低年金の緊急的な底上げは、年最大6万円ではなく最低6万円にすべきだという点では、日本共産党、立憲民主党、国民民主党などの野党は一致していると指摘しました。

消費税引き上げは

14年の8%への増税による打撃から家計消費も賃金も回復していない

――10%にしたら景気の底が抜けてしまう

 政府が10月からの実施をねらう消費税10%への増税と経済政策に議論が移り、志位氏は次のように語りました。

 志位 消費税との関係で今の日本経済をみる際に一番大事なのは、2014年に8%に増税した、この打撃から、消費も賃金も回復していないということにあると思うんですよ。これは安倍さんとも(衆院)予算委員会で議論しましたけれども、8%の前に比べまして、家計消費が年間25万円実質で減ってるわけですね。実質賃金も10万円減っている。打撃から回復していない。

 先日、私は、京都の仏具屋さんにうかがってお話を聞いたのですが、やはりその実感を語られていました。“8%に上がったことがきっかけでお客さんが本当に少なくなった。10%になったらお店を閉めなきゃなんない”と。かなり多くの小売店のみなさんの実感じゃないでしょうか。

 8%の深い傷痕が続いているもとでの10%ということになると、本当に景気の底が抜けてしまう。ですから私は、やめるべきだと思います。

 やるべきは、いま大もうけをしている富裕層、あるいは空前のもうけをあげている大企業に応分の負担をしてもらい、それによって暮らしを支える。これへの切り替えです。

 野党各党からも「個人消費が冷え込み続ける中で消費増税というのは経済に大変大きなマイナスを与える」(枝野氏)、「消費を軸とした好循環を回していくことが大事。消費税は凍結すべきだ」(国民民主党の玉木雄一郎代表)、「いまでさえ貯蓄ができない低い収入しかないところに直撃する増税はやめるべきだ」(社民党の吉川元幹事長)と中止を強く求める声が相次ぎました。

憲法改定問題

安倍9条改定案――2項は立ち枯れ、無制限の海外での武力行使が可能に

――北東アジアの「平和プロセス」すすめる憲法を生かした平和外交こそ

 憲法改定問題で安倍首相は、憲法9条への自衛隊明記など、自民党が示している「憲法改正についての4項目の改正イメージ」を説明しました。志位氏は次のように述べました。

 志位 いま4項目の条文案についてお話があったと思うんですが、私はそのなかで、9条改定の問題、非常に重大な問題点があると思います。

 9条の1項、2項、これはそのままにしながら、別の項で「自衛隊の保持」をうたうものですが、その項の内容は、「前条の規定は…自衛の措置をとることを妨げない」と書いて、「自衛隊の保持」をうたっている。

 「前条の規定は…妨げない」ということになりますと、9条2項の制約が自衛隊に及ばなくなる。これまで「海外派兵はできない」としてきたこの制約が及ばなくなる。そうしますと2項が残っていても、立ち枯れになり、死文化される。そうしますと海外での武力の行使が無制限になる。この道は絶対に許すわけにはいかないと思います。

 いま、板門店でああいう第3回の米朝首脳会談も起こっている。いまなすべきは憲法を変えることではなく、憲法を生かした平和外交によって、北東アジアのこの地域の「平和プロセス」を前に進める努力だと思います。

憲法審査会は「改憲原案」をつくる場、動かす必要はない

――米軍のために「血を流す」自衛隊にするのが安倍改憲の狙い

 これに対して、日本維新の会の松井一郎代表は、「9条も含めてまじめに憲法審査会で議論していくべきだと僕らは求めているが、枝野さんのところも志位さんのところも、議論すらしないということで2年間、ほったらかしにしている」「自民党がリーダーシップをとって審査会を開催すればいいじゃないか」とけしかけました。志位氏は次のように述べました。

 志位 憲法審査会というのは、一般の委員会と違うんです。一般的に憲法を議論する場じゃないんです。憲法改正原案をつくる場所なんですよ。それでは、そういうことを国民が望んでいるか。どんな世論調査をやったって、いま憲法を変える必要があるという声は少数ですよ。ですから国民が望んでもいないのにこれを動かして、無理やり発議をしていく、その方向にもっていくということ自体、私はとんでもないことだし、私たちは(審査会を)動かす必要がないと言っています。

 この問題は、私は、もっと本質的な問題がこの間出てきたと思うんですよ。トランプ(米大統領)さんが、「日本は米国のためにたたかわなくていいのか」と、こう言い出した。ところが安倍さん自身も、軍事同盟は「血の同盟」なんだ、「自衛隊はアメリカのために血を流さない」、このままでいいのか、こう言っている。

 まさに憲法を変えるということは、米軍のために「血を流す」自衛隊をつくる、これが(目的であることが)いま浮き彫りになっている。ですからこういう問題に、安倍さんは、しっかり答える必要があると思います。

参院選の目標、どうのぞむ

全32の1人区で野党統一候補の勝利をめざす

――ジェンダー平等、誰もが尊厳を持って自分らしく生きられる社会をめざす

 最後に司会が、目標議席も含めて、今後の選挙戦にどうのぞむのかを問う中で、志位氏は次のように述べました。

 志位 今度の選挙は32の1人区のすべての選挙区で野党統一候補が実現しました。そして市民連合のみなさんと13項目の「共通政策」でも合意しております。ですから32のすべてでしっかりとした共闘体制つくりまして、自民党を打ち負かしたい。そしてそのなかで、日本共産党の躍進も勝ち取っていきたいと思います。

 課題として今日、議論されませんでしたが、今回の選挙は、「政治分野における男女共同参画法」施行後初めての国政選挙です。ですからジェンダー平等の問題も大いに議論していきたいと思っております。選択的夫婦別姓(の実現のために)、これは当然、民法改正が必要です。あらゆる性暴力、ハラスメントをなくしていく。ILO(国際労働機関)ではハラスメント禁止条約ができております。日本も当然、すぐにこれを批准していかなければならない。そういう問題も含めて、ジェンダー平等、すべての人が尊厳をもって自分らしく生きられる社会をつくっていく選挙にもしていきたいと考えております。

比例850万票・7議席以上、選挙区は現職3人を守りさらに増やしたい

 安倍首相は「政策を安定的に進めていく上においては、非改選も含めた過半数を維持する必要がある。非改選も含めて123議席確保したい」と述べるとともに「今(野党)統一候補というお話がありましたが、憲法でも年金でも、たとえば立憲民主党と共産党は違う。バラバラなんですが、当選するだけで統一候補を出している」などと攻撃を始めました。

 志位氏は「一言、言っておきます。野党は、13項目の共通政策を結んでいますから」と反論するとともに、「共産党の目標としては、比例代表で850万票、7議席以上を獲得したい。そして選挙区については東京、京都、大阪の現有を守って、さらに増やしたいと決意しております」と表明しました。


pageup