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2019年7月5日(金)

「報道ステーション」党首討論

志位委員長の発言

 日本共産党の志位和夫委員長は3日夜放送のテレビ朝日番組「報道ステーション」で行われた党首討論で、消費税増税、年金問題、日米関係などについて与野党党首らと議論を交わしました。

消費税増税―景気悪化のもとで上げた例は過去にない

 10月からの消費税10%増税について与党は「景気は堅調。引き上げさせていただきたい」(安倍晋三首相)、「社会保障の継続的な安定性を確保するために必要な税制」(公明党・山口那津男代表)とあくまで強行する姿勢をみせました。一方、野党側は「消費不況という状況の中で消費税を上げれば、経済に致命的な打撃」(立憲民主党・枝野幸男代表)、「消費税を上げて消費を冷やすようなことはやるべきではない」(国民民主党・玉木雄一郎代表)、「いま非常に景気が悪化を始めている」(社民党・吉川元幹事長)と10%増税中止を求めました。志位氏は次のように述べました。

 志位 いまの経済状況を見ますと、消費税8%を契機にしまして、家計消費が年間25万円減っている。働く人の実質賃金も10万円減っています。内閣府の景気動向指数は2カ月連続で「悪化」。景気悪化は明瞭でありまして、景気が悪化するもとで消費税を上げたというのは過去ありません。ですからこれは絶対にやめるべきだと。

 私は、いま増税するというんだったら、空前のもうけをあげている大企業、あるいは富裕層に、優遇税制をただして、そして応分の負担を求める。そして暮らしに充てることが必要だと思います。

年金問題―「マクロ経済スライド」中止、「減らない年金」へ

 同番組の世論調査で、「年金制度を信頼していない」との回答が6割に上ったことが紹介されました。安倍首相は「年金制度は大丈夫。今年は年金の受給額を0・1%増やすことができた」「現役世代の負担を抑え、将来の給付を確実なものにするためにマクロ経済スライドを導入し、調整を始めている」と発言。司会の富川悠太キャスターから「志位委員長はずっと、(マクロ経済スライドを)なくすべきだとおっしゃっていますが」と問われ、志位氏は次のように述べました。

 志位 「マクロ経済スライド」でどれだけ年金が減るか、(給付)水準が減るかと、私は質問主意書を出しましたら、昨日(2日)答弁書が総理から返ってきたんですね。

 それを見ますと、いまの物価・賃金で比べた場合に、所得代替率(現役世代の手取り収入額に対する年金額の割合)で、だいたい3割、基礎年金で減る。全体の額としては7兆円減るとはっきり書いてあるんですね。だいたい40歳以下の方でしたら、いま国民年金は満額でも6万5000円です。これが3割減りまして、4万5000円になる。これではとても生きていけないわけですよ。

 ですから、これはやはり中止すべきだと。私たちいくつかの財源案を出していますけれど、総理に党首討論で提起した案として、いま年金保険料の上限額が1000万円で頭打ちになっている。これを健康保険並みに2000万円に上げれば、まず(保険料が)1兆円は入ってくる。7兆円(ですから)、これだけじゃあ足りませんけれども。まずこういう改革をやろうじゃないかと。そしてまず「減らない年金」にしようということを提案しております。

制度は残れど国民の暮らし滅びる―これでは何のための公的年金か

 志位氏の提案に対し安倍首相は、「マクロ経済スライドによって実額がカットされるわけではなく、伸びを抑えていくということだ」とあくまで同制度にしがみつく立場を示しました。志位氏は反論しました。

 志位 「マクロ経済スライド」というのは、物価や賃金の伸び率以下に年金の伸び率を下げるものですから、実質的には減っていくわけですよ。

 先ほど、「今年は0・1%年金は上がった」とおっしゃいましたね。しかし、物価は1%上がっているわけです。そうしますと0・9%年金は目減りしている。4500億円目減りしているわけですよ。こういうことがずーっと続けば7兆円減ることになるのです。

 これでは暮らしていけない。ですから、私は、もう「マクロ経済スライド」は決まったことだからもうずっとやるんだということは政治じゃないと思うんですよ。私たちとしても、先ほどいったような年金の保険料の上限額―頭打ちを2000万円に上げるというような具体的な提案もしているわけです。もちろんそれだけじゃ足りません。積立金の活用の方法、あるいは年金の担い手をどう強めるか。いろんな「合わせ技」が必要ですけれど、「マクロ経済スライド」は「ありき」ということで、制度は残ったけれど国民の暮らしは滅びましたと。これでは何のための公的年金かということになるじゃないですか。

 それでもなお、安倍首相は「物価上昇分を除いた実質でみても、基礎年金においてはマクロ調整が終わった段階でも6万3000円は確保できる。4万円とか3万円台になるということはない」と強弁しました。

 志位 いまの数字は間違っている。安倍さんの言った数字は、実質賃金が40%上がっているという架空の計算なんですよ。今の賃金と物価の水準でやったら、これは3割下がるんです。その6万3000円という数字は実質賃金が1・4倍になった場合のものです。(しかし)安倍政権のもとで実質賃金は下がっているじゃないですか。それを架空の計算で1・4倍にする(というものです)。

トランプ「安保条約」発言―安倍首相のかねてからの主張

 日米安保条約をめぐり、トランプ米大統領が「だれかが日本を攻撃したら、われわれにはたたかう義務があるが、日本はそれをしなくてもいい。われわれが助けるなら日本もわれわれを助けるべきだ」(6月29日)と発言したことが議論になり、安倍首相は「私も反論している」などと発言。志位氏の指摘をうけ、やりとりになりました。

 志位 このトランプさんの発言は要するに、“米国が攻撃されても日本はたたかう必要がないから(日米安保を)変えなきゃならない”ということですよね。

 実はこれは安倍さんのかねてからの主張なんですね。かつてのご著書(『この国を守る決意』)で、「軍事同盟というのは“血の同盟”です。日本がもし外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流します。しかし今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはないわけです」。これを変えて、「日米安保条約を堂々たる双務性にしていく」ことが大事だと、こうおっしゃっている。

 ですから、世界に展開する米軍にいったん事が起これば、米軍のために「血を流し」てたたかう自衛隊にするんだということをおっしゃっていたわけです。これはいま、お考えは変わったんでしょうか。

 安倍 すでに私も考え方を表明しているように、現行憲法下においては、平和安全法制でお示ししたように、「新3要件」の中でいわば集団的自衛権の行使が上限の、いっぱいだということですから、フル(全面的な)の集団的自衛権は行使できないというのが、私の現在の考え方でありますし、そのように答弁をしております。

 志位 当時のご主張を変えたんですか。血を流す必要がある、血を流してたたかう必要があるんだということをおっしゃったわけですね。

 安倍 日本を守るためにいわば集団的自衛権を行使できるということ。ですからフルはできないというふうにいま申し上げている通りであります。

 志位 日本を守るためじゃなくて米国を守るために、米軍のためにたたかわなくちゃいけないとおっしゃったわけですよ。

 安倍 それはもうできないというのが、いまの私の考え方であります。

 「現行憲法下」では安倍首相は、当時の主張を変えたとはあくまで言いませんでした。その一方で、「現行憲法下」でできることは、安保法制が「上限のいっぱいだ」と強調しました。「米軍のために血を流す」という当時の主張を実行するためには、憲法9条改定が必要だということを浮き彫りにしたのです。


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