2019年7月4日(木)
日本記者クラブ主催「党首討論会」
志位委員長の発言
日本共産党の志位和夫委員長は3日、日本記者クラブの党首討論会に出席し、参院選の争点などについて与野党党首と討論しました。
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■参院選で何を訴えるか
消費税10%を中止し、暮らしに希望を――財源は大企業・富裕層優遇税制をただす
最初に各党首が参院選で一番訴えたいことをボードに書き、説明しました。志位氏は「くらしに希望を」と書き、次のように述べました。
志位 「消費税10%ストップ、くらしに希望を」と訴えて選挙をたたかいます。
7兆円もの年金削減をやめさせ、低年金の底上げをやってまいります。
最低賃金1500円など、8時間働けば普通に暮らせる社会をつくります。
高すぎる国民健康保険料を引き下げ、暮らしを支える社会保障を築きます。
大学の学費はただちに半分にし、無料をめざします。
財源は富裕層と大企業への優遇税制をただしてまかないます。
どうか、よろしくお願いいたします。
■安倍首相に問う
マクロ経済スライドで貧しい年金をさらに減らし続けるつもりか
首相 7兆円減るというのは根拠がない
政府の答弁書でも認めている――制度は残っても国民の暮らしを破壊させてしまうではないか
続いて党首間の討論となり、志位氏は年金を自動削減する「マクロ経済スライド」について安倍晋三首相に次のように質問しました。
志位 安倍さんは、「マクロ経済スライド」で国民の年金を実質7兆円減らすといっておられます。これをやりますと、今、40歳以下の方は、厚生年金も国民年金も月2万円、夫婦で4万円減らされます。国民年金は今、満額でも6万5000円ですが、4万5000円まで減らされます。これでどうして暮らしていけるでしょうか。「マクロ経済スライド」は廃止し、減らない年金にすべきです。
私たちはそのために、高額所得者優遇の保険料の仕組みをただすことで1兆円の保険料収入を増やす。200兆円の巨額の年金積立金を株価つり上げに使うのではなくて、年金給付に計画的に活用する。そして賃上げと正社員化を進めて年金の支え手を強くする。この三つの財源策を示しております。安倍さんは私たちの提案を拒否していますが、今でさえ貧しい年金をさらに減らし続けるおつもりでしょうか。
安倍 このマクロ経済スライドという仕組みは、今の現役世代のみなさんの負担を抑制し、そして将来の給付を確かなものとするために今から調整を行っていく、というものであります。
今、志位さんが言われたことをやってしまいますと、たとえば今、40歳の方、もらう段階になって、年金の積立金は枯渇します。なくなってしまうんです。ですから、それではたして本当にいいのか、ということであります。まさに調整していく仕組みでありますから、この調整機能をいかしてはじめて持続可能になっていくということと、もう一点、実額を減らすものではありません。伸び率を調整していくということでありますから、実額がカットされるものではありませんから、今おっしゃった4万5000円は根拠ないですね。これはマクロ経済スライドの調整がすべて終わった後、物価上昇分を差し引いたとしても6万3000円の保険給付は確保できるわけでありますから、今いった金額はまったく根拠がないということは申し添えておきたいと思います。
志位 マクロ経済スライドというのは、物価や賃金の伸び率以下に年金給付を抑えるものです。ですから、名目がたとえ下がらなくても実質はどんどん下がります。たとえば今年の年金は、名目値は0・1%増えましたけども、物価が1%上がったために、0・9%実質マイナスになりました。こういうことが20年間続けば7兆円の削減になってくる。
根拠がないとおっしゃいましたけれども昨日、安倍さんが閣議決定した答弁書で、7兆円将来的に減るということが、はっきり数字としてかえってきております。
そして将来のためだとおっしゃいました。私たちは積立金をすぐ、全部崩せと言っておりません。安倍さんたちのように100年先まで温存するっていうのではなく、高齢化のピークを過ぎたあとぐらいまでに、計画的に活用しようということをいっております。
「給付と負担のバランス」とおっしゃるんですが、制度は残ったけれど国民の暮らしが滅びたということでは、何にもならない。私たちは制度をちゃんと持続させながら、そして国民の暮らしを守るための代替案を示しているわけですから、それを真剣に検討していただきたいと思います。
安倍首相は、マクロ経済スライドついて立憲民主党の枝野幸男代表にも質問。枝野氏は「マクロ経済スライドについては、われわれも前向きに進めてきたが、今般共産党から新しい提案があった。こうしたことも含めて年金のあり方については、抜本的な国民的な議論をもう一度しなければならない」と応じました。
■再び安倍首相に問う
安保条約をめぐって――米軍のために血を流す自衛隊にしていくことが首相の改憲の狙いではないか
志位氏はまた、日米関係をめぐって安倍首相に次のように質問しました。
志位 トランプ大統領は、先の記者会見で、「日米安保条約は不公平な合意だ。もし日本が攻撃されれば私たちは日本のためにたたかう。しかし米国が攻撃されても日本はたたかう必要がない。変えなければならないと安倍首相に伝えた」と述べました。
実はこれは、安倍さんも早くから言ってきたことです。あなたは著書で、こういっています。
「軍事同盟というのは“血の同盟”です。日本がもし外敵から攻撃を受ければ、アメリカの若者が血を流します。しかし今の憲法解釈のもとでは、日本の自衛隊は、少なくともアメリカが攻撃されたときに血を流すことはないわけです」。これを変えて「日米安保条約を堂々たる双務性にしていく」。こう主張されておられます。
つまり、世界に展開する米軍にいったんことが起きれば、米軍のために血を流してたたかう自衛隊にしていく、ここに安倍さんの憲法9条改憲の本当のねらいがあるのではないですか。端的にお答えください。
安倍首相は、「本当のねらいはそこではまずない」などと発言。「安保条約については、5条でアメリカが日本に対する防衛義務を負い、6条で日本が基地を米国に提供しているということで、アメリカの前方展開戦略において、アメリカの海外での権益が守られているという双務性は確保しているということをトランプ大統領に最初にトランプタワーに行ったときから話はしてきた」などと語りました。
また、「憲法改正」については、「1項2項の制約を受けるなかにおいて、自衛隊を明記するということだ。まさに自衛隊の存在を明確に憲法に位置づける。これは防衛の根本なんだろうと思っている」などと述べました。
■維新・松井代表に答える
共産党は文通費の使途を公開――「身を切る改革」というなら政党助成金を返上したらどうか
日本維新の会の松井一郎代表から志位氏に対し、前の総選挙のときの党首討論で、国会議員が領収書なしでもらえている文書通信交通滞在費は見直すべきだ、せめて領収書公開しようと提案したとの話があり、「その折、志位さんはやるといったが、あれからもう2年が経過している。今のところ、知らぬ存ぜぬで、これはまったく実行されていない。志位さんの公約というのはそういう軽いもんなんでしょうか」との質問がありました。
志位 共産党ウオッチャーで有名な松井さんがご存じないというのは驚きましたが、私たちはホームページで、文通費の使途をすでに公開しております。公表した通り、文通費の趣旨を踏まえて活用し、人件費と選挙には使っておりません。会計処理はすべて、領収書と伝票に基づいて行い、領収書と伝票を保管しており、ルールができればいつでも提出する用意はあります。
領収書とおっしゃいますが、私、維新の会についてちょっと調べてみたんですが、ここに持ってきた杉本和巳議員の使途報告書は、100万円の文通費の全額を杉本議員自身が支部長を務める政党支部に入れており、領収書はこの2枚付いておりますが、領収書を発行したのも杉本議員、領収書を受け取ったのも杉本議員、何に使われたのかはまったくのブラックボックスです。この使途が何かが大事なのであって、使途を公表して初めて公表したといえるのではないでしょうか。
この問題についてもう一言申し上げますと、先ほど「身を切る改革」ということ議論になりましたが、そんなに身を切るのがお好きなら、政党助成金を返上したらいかがと、私は思います。
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記者からの質問に答える
■最近の共産党は現実路線まっしぐらでは
例えば、天皇の制度は戦前とは大きな変化――原則性と柔軟性を統一して対応をしている
続いて記者会の質問に移り、志位氏に対して「最近の共産党をみていると隔世の感がある。現実路線まっしぐら。自衛隊も違憲ではあるけれど、国民が認めている限り認める。天皇制も、女性天皇だけでなく、女系天皇までも認める。現実路線は歓迎すべきだが、過去の共産党の主張とどう整合性をつけるのか」との質問がありました。志位氏は次のように答えました。
志位 いま、天皇の制度の問題について質問がありました。戦前の天皇制は、天皇が専制的な権力を握って、戦争も天皇の名でやられたわけですから、あの時代、平和あるいは人権を願おうと思ったら、天皇制を打倒するしか道はありませんでした。
しかし、戦後は、憲法のもとで天皇制が変わりました。そこをきちんと分析してみると、今の制度の下で憲法の規定を守る限り、天皇の制度は社会変革を進めるうえで、戦前のような障害にはならない。
それから、女性天皇・女系天皇については、憲法第1条で「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴」とされています。日本国民のなかには、男性も女性もさまざまな性がある。さまざまな思想もあります。ですから、その象徴ということになりますと、男性に限定する合理的理由はない。あくまで憲法に照らして考えた場合に、これは筋の通った対応だと思っています。
私どもは一貫した歴史をもっており、その歴史の筋を守りながら、いまの情勢の中で、柔軟な対応もやる。「原則性」と「柔軟性」を統一してやっているのが共産党です。
■共産党の財源論で日本経済の国際競争力は大丈夫か
わが党の提案は大企業・富裕層への優遇税制をただし、世間並み・国際標準に払ってもらうだけ
「くらしに希望を―三つの提案」の財源を、「消費税に頼らない別の道」で確保するという日本共産党の提案について、「共産党は消費税はやめて大企業・富裕層から増税しろという主張ですが、これで日本経済の国際競争力は保てるのか」との質問が出され、志位氏は次のように答えました。
志位 私たちは、優遇税制を正そうといっています。法人税についていいますと、中小企業が払っている実質負担率は18%なんです。大企業の場合、研究開発減税など特別の優遇税制制度があるために、10%しか払っていない。せめて中小企業並みに払ってもらおうではないかと。だいたいこれで4兆円を考えています。
それから所得税についていいますと、所得1億円をこえますと、大金持ちになればなるほど税負担率が下がる。株のもうけにかかわる税が低いからです。せめてこれを世間並み、国際標準に払ってもらおうではないかと。経済同友会も5%上げろといっています。OECD(経済協力開発機構)も上げろといっている。当たり前の要求です。
それから私たち、そういう二つの改革をやることでだいたい7兆円ぐらいの財源はつくれる。それに加えて米軍への「思いやり予算」はやめる。(沖縄県名護市)辺野古の美しい海を埋め立てる米軍再編経費はやめる等々で(あわせて)7・5兆円の財源をつくって、それをたとえば最賃の引き上げ、国保の引き下げ、あるいは学費の引き下げに使っていこうというものでありまして、私たちはこれに十分合理性があると考えています。
■改憲をめぐって
憲法は大いに討論してきた、しかし審査会は改憲原案をつくる場――憲法を守らない首相の下ではまともな議論はできない
憲法問題をめぐって「時代にあうようにいろんな形で議論するというのは国会の責務ではないのか」と衆参両院の憲法審査会で議論すべきでは、との質問が出され、志位氏は次のように答えました。
志位 私たちは国会で大いに議論をしています。たとえば予算委員会の場で、あるいはさまざまな委員会の場で憲法擁護の話もしていますし、憲法を生かしてどういう日本をつくるかの議論も大いにやっています。
ただ憲法審査会というのはどういう場かというと、一般的に憲法を議論する場ではないんですね。国会法第102条で、「憲法改正原案」をつくる場だとなっている。
では国民のみなさんは、いま憲法の改定を望んでいるか。どんな世論調査をやっても、5割以上の方がいま憲法の改定を望んでいないですよ。そういうもとでこれ(憲法審査会)を動かす必要はないといっています。
それからもう一点いいますと、いま野党の中でこの問題についてどこで一致しているか。「安倍政権のもとでの憲法9条の改定は反対」。これで一致しています。なぜこれをいうかというと、安倍首相ほど立憲主義を壊した首相はいない。安保法制しかり、共謀罪、あるいは秘密法など憲法違反の立法をやってきた。ですから、憲法をそもそも守らない総理のもとで、まともな議論はできませんというところで野党は一致してやっているということです。
「憲法審査会(の国会設置)の合意されたことを認めないというのは変ではないか」との質問に志位氏は、「私たちは、設置そのものに反対しました。だからといって、議論に参加していないわけじゃない。たとえば(国民投票の際のテレビ)CM規制の問題があります。この問題について私たちも議論をしています」と答えました。