2019年7月2日(火)
主張
日銀短観・連続悪化
増税に突き進むのは無謀だ
日本銀行が発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)によれば、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス7となり、前回3月調査のプラス12から5ポイント低下しました。悪化は2四半期連続です。
安倍晋三首相側近の萩生田光一自民党幹事長代行が4月半ばに、6月の日銀短観の結果次第では10月からの消費税増税の延期もあり得ると言ったことから、今回はとりわけ注目されていました。政府の景気動向指数や月例経済報告に続き、日銀短観でも景気の悪化が鮮明になった以上、増税を強行するのは全く無謀です。
2四半期連続のDI低下
日銀短観のDIは、「良い」と回答した企業の割合から、「悪い」と回答した企業の割合を差し引いて算出します。調査対象企業が多く、結果の発表も早いことから、重視されている経済指標です。
3月の調査では、大企業製造業のDIはプラス12で、昨年12月調査から7ポイント悪化しました。下げ幅は、安倍首相の政権復帰直前の2012年12月調査の9ポイント以来、6年3カ月ぶりの大きさで、第2次安倍政権発足後では最大でした。
それに続いて6月の調査でも、大企業製造業のDIが2期連続で悪化し、しかも5ポイントも低下したことは深刻です。長引く消費の低迷や、米中貿易摩擦の先行き不安、中国経済の減速に対する警戒感などが強まり、企業の心理が一段と冷え込んでいることを浮き彫りにしました。
先週末、大阪市で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議の宣言も「成長は低位であり」「リスクは依然として下方に傾いている」と認めています。日本と世界の経済の不安定さが増していることは、否定しようがありません。
それにもかかわらず、安倍首相は、通常国会閉幕後の記者会見でも、「景気の下振れリスクに対してはちゅうちょすることなく、機動的かつ万全の対策を講じる」からと、消費税増税の方針を変えようとしません。今年の「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2019)や、自民党の参院選政策でも、10月からの10%への引き上げを明記しました。経済情勢がこれほど悪化する中で、消費税を増税した例はかつてありません。経済の現実に目をつぶりひたすら消費税増税に突き進むことは、暮らしと日本経済を危機に追い込むものです。
1日付の世論調査では、消費税増税に「反対」が「読売」53%、「日経」48%でいずれも多数です。安倍政権は国民多数の声に逆らう増税をきっぱり断念すべきです。「経済再生」の実現どころか、国民を苦しめている経済政策「アベノミクス」の中止が求められます。
消費税に頼らなくても
安倍政権は、「十二分の対策」を取って、増税でいただいたものは、「すべてお返しする」からと、増税を正当化します。しかし、「お返し」するくらいなら、最初から増税しなければいいだけです。
消費税に頼らなくても、大企業や大資産家を優遇する税制の見直しや、米軍への「思いやり」予算などの削減で、福祉や暮らしの予算は確保できます。
参院選で、安倍政権と自民・公明の与党に審判を下し、増税を中止に追い込み、希望と安心の政治を切り開こうではありませんか。