2019年6月29日(土)
主張
日米首脳会談
対米従属強化の危険は明らか
大阪市での20カ国・地域(G20)首脳会議に先立ち28日開催された日米首脳会談では、閣僚級協議が続いている日米貿易交渉を加速させることなどで一致しました。
来年のアメリカ大統領選が近づき、“具体的な成果”を急ぐトランプ政権は、米国からの農産物の輸出拡大に道を開く合意を早く取り付け、選挙戦を有利に運ぼうとしています。トランプ大統領と安倍晋三首相の間では、“だんまり”を決め込んで参院選をやり過ごした後に、合意を発表する“密約”の存在も取りざたされます。国民に隠したままで交渉加速の確認を重ねる日米関係は危険です。
交渉「加速」を改めて合意
日米首脳会談は、4月、5月に続くもので、異例の3カ月連続です。安倍首相は今回の会談の冒頭、「強固な日米同盟の証しだ」と“自慢”しました。一方、トランプ大統領は、「今回は貿易、軍事、日本による大量の軍事装備品の購入について話し合う」と表明しました。アメリカ“言いなり”に、トランプ氏の大統領選に向けた「実績づくり」に手を貸す場になった可能性をうかがわせます。
トランプ氏は最近、貿易と安全保障をからめ、「米国の負担が大きく不公平」と“同盟国批判”を繰り返しています。日本にも、日米安保条約をめぐり、「米国が攻撃されても日本は必ずしも助けてくれない」と、揺さぶりをかけています。軍事分担の強化や、輸入拡大による「貿易不均衡」の「是正」を日本にのませる狙いです。
5月の首脳会談後の記者会見でトランプ氏は、日米の貿易交渉について、「8月には良い発表ができると思う」と発言しました。その後も国内での演説で、「日本が間もなく、(アメリカの農産物を)たくさん買ってくれるようになる」と公言しています。安倍首相は“密約”の存在を否定しますが、交渉の中身は明らかにしません。今回の首脳会談で、貿易交渉の加速で合意したことは、国民を置き去りにして、日本の農畜産業などをアメリカに売り渡す危険性を浮き彫りにしています。
アメリカ国内では、トランプ政権が環太平洋連携協定(TPP)を離脱した後、日本がアメリカを除く11カ国とのTPP11や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)を発効したため、牛・豚肉や乳製品の対日輸出で、オーストラリアやニュージーランド、EUに比べ不利になったとの不満が噴き出しています。
日米の貿易交渉の対象は、農産物の輸入量だけではありません。関税についても「撤廃」を求めています。投資についても、アメリカのカジノ企業の日本進出などを求めています。トランプ氏は5月末の首脳会談後には、「米国製兵器は世界一」だと述べ、日本がさらに買うことを迫りました。交渉を続けることは“亡国の道”です。
対等・平等な関係こそ
首脳会談後、両国政府は「揺るぎない日米同盟を今後とも一層強化することで一致」(外務省発表文)、「日米同盟にもとづく世界規模での協力を深化させ拡大していく意向を確認」(ホワイトハウス声明)と、口をそろえました。その実態は、日本の「対米従属」強化そのものです。
アメリカ“言いなり”の日米同盟をやめて、対等・平等の日米関係をこそ、確立すべきです。