2019年6月28日(金)
主張
安保法制の廃止
自衛隊を海外で戦争させるな
安倍晋三政権が安保法制=戦争法の整備に向けた「閣議決定」を強行してから来月1日で5年です。この決定は、集団的自衛権の行使を容認するなど、「憲法9条の下では海外での武力行使は許されない」としてきた歴代政府の憲法解釈を百八十度転換し、日本を「海外で戦争する国」に造り変えようとする歴史的暴挙でした。安倍政権はこれに続き安保法制の成立・施行を強行し、米国が海外で起こす戦争に自衛隊が参戦する危険が高まっています。「閣議決定」の撤回と安保法制の廃止は急務です。
朝鮮半島有事の対応検討
安倍政権は2014年7月1日の閣議決定で、▽米国など他国に対する武力攻撃を実力で阻止する集団的自衛権の行使▽地理的制約なく米軍の艦船や航空機などを防護するための武器使用▽「戦闘地域」での米軍などへの兵站(へいたん)の拡大▽内戦などが事実上続く地域での「駆け付け警護」や治安活動―を認め、憲法9条を踏みにじる海外での武力行使に道を開きました。
これを具体化した安保法制は15年9月19日に成立が強行されました。翌16年3月29日に施行され、米軍による先制攻撃の戦争を自衛隊が全面支援する体制づくりが加速しています。
自衛隊の制服組トップだった河野克俊・前統合幕僚長は最近、北朝鮮の核・ミサイル問題が緊迫した17年に、安保法制に基づいて朝鮮半島有事での自衛隊の対応を統合幕僚監部で検討したことを明らかにしました。(「朝日」5月17日付のインタビュー)
この中で河野氏は、当時、米軍のダンフォード統合参謀本部議長らと情報交換し、「米軍が軍事行動に踏み切り朝鮮半島有事になる可能性を考え、16年に施行された安保法制の下で自衛隊がどう動くか、私の責任で統合幕僚監部で頭の体操をしました」と告白しています。その際想定したのは、「戦闘地域」でも自衛隊が米軍への兵站ができる「重要影響事態」や、集団的自衛権を行使する「存立危機事態」だとされます。さらに「(安倍)総理には随時米軍の態勢を報告していました」と語っています。ひそかに参戦の準備を進めていたとすれば重大です。
トランプ米大統領は5月28日、海上自衛隊横須賀基地で安倍首相とともにヘリコプター搭載護衛艦「かが」に乗艦し、訓示を行いました。「かが」は、米国製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bを搭載する空母への改修が計画されています。トランプ氏は「われわれ(日米両国)の軍隊は世界中で一緒に訓練し、活動している」と指摘するとともに、「かが」の空母化について「この地域ばかりか、それをはるかに超えて、複雑な脅威から守れるようになる」と述べました。
今月1日、米国防総省が公表した「インド太平洋戦略報告」も、日米の作戦協力、艦船などの相互防護、有事の共同計画の進展を強調しています。地球規模でのさまざまな紛争や脅威に日米一体で軍事介入する狙いを示すものです。
憲法生かした平和外交を
日本共産党など5野党・会派は、目前に迫った参院選の「共通政策」で、安保法制など立憲主義に反する法律の廃止を掲げています。安倍政権に厳しい審判を下し、「戦争する国」づくりにストップをかけて憲法を生かした平和外交を実現する一歩にすることが必要です。