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2019年6月23日(日)

参院選公約 発表会見

志位委員長の一問一答

 日本共産党の志位和夫委員長は21日の参院選公約発表の記者会見で、記者からの質問に答えました。その要旨を紹介します。


「マクロ経済スライド」廃止の財源は?

写真

(写真)記者会見する志位和夫委員長=21日、党本部

 ――年金についての提案のうち、「マクロ経済スライド」の廃止の財源は、「くらしに希望を―三つの提案」の実現の財源として示した7・5兆円の枠組みとは別という意味ですか。

 志位 別です。7・5兆円の枠組みには「マクロ経済スライド」廃止のための財源は含んでいません。「マクロ経済スライド」というのは、基本的には年金の保険の世界の仕組みですから、これを廃止するうえでは、まずは保険料収入をどうやって引き上げていくのかという角度が大切になってきます。7・5兆円とは別枠で、将来的には、数兆円という規模でのお金がかかってきます。

 公約では、(1)高額所得者優遇の保険料を見直し、1兆円規模で年金財政の収入を増やす(2)約200兆円の巨額の年金積立金を年金給付に活用する(3)賃上げと正社員化をすすめて、保険料収入と加入者を増やす――の三つの角度からの「合わせ技」で財源をつくっていくという政策をまとめました。

 この問題をめぐって、先日の党首討論で、私が三つの方策の一つ――「高額所得者優遇の保険料の見直し」を提案したところ、安倍首相から、「マクロ経済スライドを廃止して、その上で、なおかつ将来の受給者の給付が減らないようにする上においては、これは7兆円の財源が必要でございます」という数字が飛び出してきました。この数字の積算根拠について質問主意書を提出して問い合わせているところですが、これが事実とすると、「マクロ経済スライドによって7兆円の年金が奪われる」という重大なことになります。いよいよこの問題が年金問題の最大の焦点――対決点となってきました。

農林水産業政策のポイントはどこにあるのか?

 ――農林水産業政策についてのポイント、お考えを教えてください。

 志位 ポイントは大きく言えば二つあります。

 一つは、食料主権、経済主権を尊重した平等互恵の国際経済関係をつくることです。とくに、日米FTA(自由貿易協定)の問題は、非常に差し迫った重大問題です。安倍首相は、「これはFTA交渉じゃない」「TPP(環太平洋連携協定)より譲歩しない」といって事を進めていますが、当のトランプ米大統領の発言によって、それがことごとくウソだということが明らかになっています。まずは日米FTA交渉をただちに中止する。TPP協定は、米国抜きでも国内農業にきわめて深刻な打撃があり、協定から離脱する。そして食料主権、経済主権の相互尊重のうえにたった貿易と投資のルールをつくる。

 もう一つの柱は、家族農業を本気で応援するということです。国連の「家族農業の10年」を推進する。とりわけ私たちが重視しているのは、価格保障と所得補償によって再生産可能な農業にしていくことです。沿岸漁業がたいへんな危機にひんしています。沿岸漁業の振興に力をそそぎ、小規模漁業者と漁協などの漁業権を保障することも、とくに重視して明記しました。

公約作成で意識したことは何か?

 ――最近、委員長も、街頭演説でも批判だけじゃなく希望を語るということを重視しているということをおっしゃっておられましたが、今回の公約でも従来よりも財源確保策が前の方にだいぶ来ているような気がします。希望を語るという流れを踏まえて公約作成でも何か意識されたことはあるんでしょうか。

 志位 そこは重視しました。たとえば、「くらしに希望を――三つの提案」の場合、政策の個々の項目は、どれも立場の違いをこえて国民のみなさんの切実な願いだと思うんです。問題は財源になります。どれだけ説得力のある、多くの方々から見て当然だという財源政策を提起できるかというのが勝負になると考え、こういうまとめ方をしました。「三つの提案」の財源としてお示ししている7・5兆円というのは、大企業にせめて中小企業なみの税金を払ってもらおう、あるいは富裕層の方々に応分の負担をしてもらおうという、ごくごく常識的な内容です。たとえば、株取引への課税強化などは、経済同友会やOECD(経済協力開発機構)も提案している内容です。そういう誰がみても当たり前の財源論を組み立てるということを考えました。

 それから、先ほどのべた「マクロ経済スライド」の廃止のための財源論についても、私たちは、先の党首討論で一つの提案として、年金保険料の上限額を引き上げるという提案をいたしましたが、これも実はすでに厚生労働省の年金部会などでも数年前に議論されていることです。上限額を引き上げる、そのさい、アメリカで実施している「ベンドポイント制」といいまして、高額所得者への給付をセーブしていく方法もあるのではないかという議論がされています。この提案も、ごくごく常識的な内容ではないかと考えておりまして、これをもって「ばかげた案」と頭から拒否した安倍首相の姿勢こそ問われると思います。

 年金が足らない、減らされるということは、多くの国民にとって言われなくても分かっていることだと思います。そのことへの批判は大切ですが、それだけでは展望が見えてきません。どうするかということへの答えがなければいけない。

 公約では、段階的な改革案を提案しておりまして、第一に、緊急の方策としては、「三つの提案」でのべているように、「マクロ経済スライド」を廃止して「減らない年金」にすることと、低年金の方々への一律年6万円の底上げを行う、第二に、将来的な方策としては、すべての高齢者に全額国庫負担で月5万円を保障し、そのうえに払った保険料におうじた額を上乗せする最低保障年金制度を確立するという、2段階の改革案を提案しています。

「減らない年金」にするためにどういう財源論をもっているか?

 ――年金ですが、「マクロ経済スライド」をやめる、高額所得者優遇のところで1兆円の財源を増やせると。しかし、「マクロ経済スライド」をやめればそれだけ大きな穴があくのですが、それを積み立てのところから2050年をめどに徐々に埋めていくという形で財源をつくっていくという考え方でよろしいでしょうか。

 志位 先ほどのべたように三つの「合わせ技」で財源をつくります。保険料の上限額を引き上げる、年金の積立金の活用、支え手を増やすということです。

 約200兆円の年金積立金については、政府のように100年先まで温存するというやり方ではなくて、「高齢化のピークとされる2050年代をめどに計画的に活用」していくということを明記しました。

 それから根本的な解決策は、年金の支え手を増やし、強くすることです。現役労働者の賃上げと非正規雇用労働者の正社員化が大きなカギとなってきます。いま安倍政権がやっていることは正反対なわけです。「残業代ゼロ制度」を強行し、労働者派遣法を改悪する。どれもこれも賃下げをもたらし、非正規化をもたらす。年金の支え手を減らし、弱める政策ばかりです。ここを抜本的に切り替えることが年金問題の解決にとっても最大の方策になります。

最低賃金「ただちに全国どこでも1000円」を実現するカギは?

 ――最低賃金ですが、東京は時給985円で他は750円ぐらいのところがだいぶあります。そうすると、「ただちに全国どこでも1000円に引き上げる」という政策を、どうやって実現するのでしょうか。中小企業の経営などを考えたらそれが現実的なのか。そのへんの整理をうかがいます。

 志位 私たちの最低賃金の政策は、「ただちに全国どこでも1000円に引き上げ、すみやかに1500円をめざし、全国一律最低賃金制度をつくる」としました。東京と比べて、一番低い県では200円以上、年収で45万円も低い。地域からどんどん労働力が流出して大都市に集まってしまう。最賃そのものが地域経済を疲弊させる一つのファクター(要因)になっているわけです。それから生計費を比較しますと、東京と地方で生計費が違うということはない。大差はありません。それらを考えても全国一律最低賃金制がどうしても必要だというのが私たちの考えです。

 それから「ただちに全国どこでも1000円」を実現するカギは、中小企業支援にあります。安倍政権が行っている中小企業の賃上げ支援の予算は年間7億円にすぎません。私たちの提案は、ここに7000億円というお金をつけると。1000倍にするということです。それによって中小企業の社会保険料の事業主負担分を減免し、賃上げの応援をしようというのが私たちの提案です。

 時給1500円は「すみやかに」実現すべき目標として明記しました。時給1500円とは、フルタイムで1日8時間働いて、週休2日で、月収25万円ということですから、これは目標としてあまりにも当たり前です。米国のニューヨーク州やカリフォルニア州でもすでに実施されていますし、EUでも目標とされている数値です。できるだけ「すみやかに」1500円を実現する。このことを公約に明記しました。

最賃引き上げは消費拡大、景気回復につながる考えか?

 ――最低賃金を引き上げることによって消費を拡大して、それが景気回復につながるという考えでよろしいのでしょうか。

 志位 そのとおりです。最低賃金を引き上げる意味合いというのは、まずは憲法25条にもとづく国民の生存権の保障ということが土台です。同時に、ご質問で言われたように、最低賃金を引き上げることは、地域経済を活発にし、家計消費を活発にし、そして景気をまさに草の根から温めていくことになります。そのことによって経済成長も健全な形で進むようになります。

 そういう点では、中小企業のみなさんにとって、最賃引き上げは、まずは賃金を上げるわけですから、それはそれで負担になるわけですが、地域経済が良くなることによって中小企業にもうんと大きなメリットが出てくる政策でもあるのです。国費を投入して中小企業を応援して引き上げていくわけですが、引き上げるなかで中小企業の経営もよくなっていく。自力で賃金を上げる力がついてくることになるでしょう。そういう展望ももってこの政策にとりくんでいきたい。

 アメリカでは、全米の1000の中小企業の社長さんが連名で「最賃の引き上げ」を求めて、上げていった経過があります。中小企業のみなさんにとっても、一番、希望のある政策にもなるわけです。

参院選に向けた論戦の決意は?

 ――今日でこうやって公約が出て、今後、いまから参院選の論戦が本格化していくと思いますが、あらためてこういう論戦にしたいという決意をお聞かせください。

 志位 いまの安倍政権のさまざまな問題点、これは論戦の中できびしく問いただしていきたいと考えております。消費税の増税もそうですし、年金に対するいまの政府の姿勢もそうですし、辺野古の問題、原発の問題、憲法の問題――国民の利益に背く間違った政治については、問題の焦点をズバリつく論戦をやっていきたいと思っています。

 同時に、国民のみなさんから見て、「じゃあどうするのか」ということがおのずと浮かび上がってくるような議論を参議院選挙を通じて心がけたいと考えています。私たちも批判だけではなくて、「共産党はこうする」という提案を押し出しながら選挙戦をたたかいたいと思っております。

公約に女系・女性天皇容認の立場を書かなかったのは?

 ――天皇のところに関して他の野党では、「安定的な皇位継承」で女系天皇や女性天皇の議論を書かれているところもあるんですけど、先日、共産党としての立場を明確に示された中で、あえて公約で載せなかったというのはどういったところがあるのでしょうか。

 志位 先日、私のインタビューという形で「天皇の制度と日本共産党の立場」についてかなりつっこんだ表明をおこないました。そのなかで女性・女系天皇についても賛成するという立場を表明しております。

 ただインタビューのなかでものべたように、「皇室典範」の改正については、「具体的な提起があれば、それが憲法に適合的なものであれば賛成する」という立場で対応するということなのです。天皇の退位の問題についても、そういう立場から憲法に適合的なものだと判断して賛成という立場をとりました。女性・女系天皇の問題も、これはメディアのみなさんからもご質問がよくあります。そういう質問に対して私たちの立場を表明したものでありまして、私たちとして、皇室典範の改正案を提案するということは考えておりません。この公約でのべていないのは、そういう理由からです。

 党の公約としては、ここに明記していますように、憲法が固く禁じた天皇とその制度の政治利用を許さない。あるいは「代替わり」の儀式について、憲法と両立しないやり方は改めることを引き続き求めるということについて明記しています。

野党の政策はベクトルが一緒では?

 ――ここ数日の野党の公約を見てきますと家計の底上げというか、そういう意味では共通です。32の1人区では一本化した。すると、消費税ストップとか、家計の底上げとか、暮らしのベースアップみたいなところについては、志位さんと枝野さんと玉木さんあたりが並んでそういうふうにやるのが1人区の選挙ではないかと。最低賃金も、立民も5年で1300円と言っていて、こちらは(すみやかに)1500円で、ベクトルは一緒ですよね。そういう選挙にしませんと国民からいったら、野党の中の公約の差を考えるよりはわかりやすい選挙と、そういう問題かと思うが、そのへんはどう考えますか。

 志位 「くらしに希望を――三つの提案」の個々の政策についていいますと、かなりの部分は野党の共通の提案になっていると思うんです。たとえば最低賃金について、私たちは「すみやかに1500円」といっておりますが、市民連合のみなさんとむすんだ共通政策のなかで、「最低賃金1500円をめざす。8時間働けば暮らせる働くルールの実現」となっています。この方向は野党共通のものです。そうした共通項を大事にして、1人区で最大限の協力をおこない、勝っていくことが大事だと思います。

 同時に、野党にそれぞれ特色があっていいと思うんです。わが党の特色としては、公約の最後に書いてあるような、「財界中心」「アメリカいいなり」――日本の政治の「二つのゆがみ」をただすという特色を持っております。こうした共産党ならではの特色は大いに訴えていきたい。「二つのゆがみ」をただす共産党がのびてこそ、国民の切実な願いを実現する力になるということを訴えていきます。それぞれの野党がそれぞれの特色を訴えることも大いにやったらいいと思います。同時に、一致点は大事にして、国民のみなさんから見て、野党が協力していまの政治を変えようとしているというメッセージが伝わるような選挙にしていきたいと願っております。

政策を国民に伝えるためにどんな手段を?

 ――「くらしに希望を――三つの提案」とか、たいへんわかりやすいし、浸透する政策だと思いますが、これを実際に国民に伝えていくために、いま演説会などをやっていますが、どのような手段を使っていこうと考えていますでしょうか。

 志位 あらゆる手段を使ってお伝えしていきたいと考えています。もちろん街頭演説などでも、それぞれの弁士のそれぞれの語り方があると思いますけれど、みんなこれを語っております。たいへん強い反応がどこでも返ってくる状況があります。それからこの間、チラシをつくっておりまして、3500万枚つくりました。これは、おにぎりが真ん中にありまして、「三つの提案」がわかりやすく書かれています。カラフルで楽しいビラをつくりまして、これもたいへん好評でありまして、いま配布をすすめているところでございます。それから、インターネットでも、この問題を中心に、クリックしていけばたいへんによくわかるものをつくりまして、そこでもアピールしています。

 あらゆる手段を駆使して国民のみなさんにお伝えして、いまの暮らしを変える希望はあります、しかも消費税に頼らないで変える希望はありますということをお伝えしていきたいと思っています。


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