2019年6月15日(土)
元防大生人権訴訟が結審
新証拠で迫る 判決は10月3日
幹部自衛官の養成機関である防衛大学校(神奈川県横須賀市)で、上級生からの暴行などで退学に追い込まれたのは、国と教官による安全配慮義務違反があったためとして元防大生が国家賠償請求を求めた訴訟が13日、福岡地裁(足立正佳裁判長)で結審しました。判決は10月3日です。
裁判で国と教官は、上級生に対して「暴力的な行為、威圧的な指導はあってはならないと教育してきたから、暴行などは想定外であり、安全配慮義務は怠っていない」とするなど、上級生個人の責任にわい小化してきました。
原告側は、新証拠として情報開示請求で入手した防大の内部資料「補導便覧」を提出。同便覧は、防大で上級生が下級生を指導する「学生間指導」について教官が指導・監督する際の基本事項を示したもの。同便覧は、異常な事態に際して「監督者として毅然(きぜん)たる態度で学生に接する必要がある」と明記。暴行事件などの違法行為に対し、毅然とした対応をすることが防大の安全配慮義務であることを示しています。
また弁護団に開示された規律違反の記録では、原告学生の在校中に発生した訓練での集団暴行事件で、教官4人が懲戒処分を受けていたことが判明。記録には教官が「学生に対して暴行を行わないよう指導はしていたものの、事案を回避するほど十分ではなかった」とありました。弁護団はこれらの証拠をもとに教官の指導が不十分で、安全配慮義務を欠いていたことを立証しました。
原告側は陳述で、「被告が補導便覧を証拠から外し、もっぱら学生個人の責任に転嫁したことはアンフェアな態度だったと言わざるを得ない」と批判しました。