2019年6月11日(火)
主張
ハラスメント規制
国際水準に見合う法整備こそ
職場でのハラスメント防止をうたう女性活躍推進法などの改定法が先月29日、参院本会議で賛成多数で可決・成立しました。安倍晋三政権が提出した同改定法には、セクハラ被害者や労働組合などが強く求めてきたハラスメント禁止規定も、被害の認定などを行う独立した救済機関の設置も盛り込まれませんでした。これでは法の不備で被害者が救済されない実態は変わりません。日本共産党は国会審議の中で抜本的な改定を強く求め、改定法に反対しました。
防止措置義務は不十分
男女雇用機会均等法でセクハラ防止措置義務が事業主に課されて13年ですが、被害は今も多発し、被害者もほとんど救済されていません。日本マスコミ文化情報労組会議が実施したアンケート(回答者1061人)では、セクハラを受けた経験がある女性は83%にのぼり、「性的関係の強要」「ストーカー行為」など深刻な事例もありました。「被害にあった」「見聞きした」人の6割以上は、どこにも相談していませんでした。
被害にあっている人の尊厳と権利を本気で守る立場に立つなら、ハラスメントの禁止規定を盛り込み、違法であることを明文化し、法の実効性を高めることが必要です。この問題に長年取り組んできた角田由紀子弁護士は「セクシュアルハラスメントは、性差別であって人格権侵害であり、労働する権利、生存権を奪う。3段階にわたる違法行為だ」(参院厚生労働委員会の参考人質疑)と強調しました。ところが安倍政権は最後まで禁止規定に応じませんでした。
日本共産党の倉林明子参院議員は「セクハラが女性差別だという認識はあるか」と根本匠厚労相に何度もただしましたが、言葉を濁し、「差別だ」と明言しません。
「女性活躍」を掲げる安倍政権ですが、性差別をなくし、ジェンダー平等を実現することに、極めて消極的な姿が改めて浮き彫りになりました。
改定女性活躍推進法は、一般事業主による行動計画(女性の積極採用の取り組みなど)の策定義務を「従業員301人以上」から「101人以上」の企業へ、公表する情報項目を「14項目中1項目以上」から「2項目以上」へ、と拡大しました。日本共産党は、男女賃金格差を項目に含めるべきだと主張しました。参院委の参考人質疑でも、浅倉むつ子・早稲田大名誉教授が「この法律が真に女性活躍に効果を発揮するためには、状況把握の基礎項目ならびに情報公表項目に、男女の賃金の差異の実態、ハラスメント対策の整備状況を加えることは必要不可欠だ」と指摘しました。しかし、これも盛り込まれませんでした。実効性を確保する上で、大きな問題です。
ジェンダー平等の実現を
ジュネーブで10日から開催のILO(国際労働機関)総会は、各国にハラスメントを禁止する法整備を要請する「労働の世界における暴力とハラスメントを除去する条約」を採択します。日本政府は昨年の総会で、「新たな基準は各国の実情に応じた柔軟な対策を促進するような内容となることが重要」などとして、基準を低めるよう主張しました。日本政府はそうした後ろ向きの姿勢を改め、今こそ国際水準に見合った法整備を行い、職場でのジェンダー平等を実現する立場に立つべきです。