2019年5月25日(土)
安倍政権は「緩やかに回復」というが
景気の低迷 明白
内閣府が24日に公表した月例経済報告は、景気の基調判断を一部下方修正したものの、「緩やかに回復している」との表現に固執しました。政府の判断とは裏腹に、日本経済の低迷は鮮明です。この状態のまま10月に消費税増税を強行すれば、国民の暮らしも日本経済も破綻することは明らかです。(金子豊弘、清水渡)
冷え込み 所得も消費も
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2019年1~3月期の国内総生産(GDP)は、民間シンクタンクなどの予測を裏切り、0・5%増となりました。しかし、大幅な輸入減により、外需が伸びたという「みせかけ」の経済成長です。主要項目である個人消費、企業の設備投資、輸出はいずれもマイナスでした。
とりわけ、GDPの6割を占める個人消費の減少は深刻です。個人消費は、14年4月に安倍晋三政権が消費税増税を強行して以降、低迷を続けてきました。1~3月期のGDPでも0・1%の減少となりました。相次ぐ食料品値上げが消費者心理を冷え込ませました。
スーパーの売上高は4月、前年に比べて1%の減。この間の推移を見ても、3月こそわずかに上回ったものの、前年同月割れを続けています。
消費低迷の背景にあるのが所得の減少です。3月の毎月勤労統計では実質賃金が3カ月連続で減少しました。名目賃金の低下に加え、物価上昇が影響しました。
食料品を中心とする物価上昇については、昨年11月に、政府が“消費税増税前の値上げは「便乗値上げ」とはみなさない”とする文書を発表。文書には便乗値上げを取り締まる消費者庁やカルテルを取り締まる公正取引委員会も名を連ねます。政府はこの文書を業界団体を通じて各企業に普及しています。政府の「値上げけしかけ」が、実質賃金を下落させ、消費者心理を冷え込ませています。
個人消費の減少を背景に、企業の設備投資も冷え込んでいます。景気の先行指標とされる機械受注は18年10~12月期、19年1~3月期と2期連続で前期比マイナスとなりました。
個人消費と企業の設備投資という2大推進力が減少するもとで、政府がいくら取り繕っても「景気回復」には程遠いことは明白です。
米中対立 日本にも暗雲
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米中の経済対立の激化が世界経済を混乱させています。
「世界経済は危険な場所にいる」
経済協力開発機構(OECD)のグリア事務総長が警告します。OECDは、21日に発表した世界経済見通しで、2019年の見通しを3月時点と比べ0・1ポイント低い前年比3・2%に引き下げました。米中による関税引き上げと中国経済の減速が主因です。ローレンス・ボーンOECDチーフエコノミストは「脆弱(ぜいじゃく)なグローバル経済が、貿易摩擦によってさらに不安定になる。成長率は横ばいだが経済は弱く、非常に深刻なリスクの兆しが見えている」と警告します。19年の日本の成長率は予測も0・7%(3月時点は0・8%)と下方修正しました。
トランプ米政権は10日、2000億ドル(約22兆円)分の中国製品に対する関税を10%から25%へ引き上げました。さらに13日には、中国からのほぼすべての輸入品(3000億ドル)への追加関税案を発表しました。同日、中国も報復措置を発表。米国による追加関税措置と報復の応酬は一段と激化しています。
グリア事務総長は「高まる貿易の緊張が緩和しなければ、世界経済見通しのシナリオは、いっそう悪化することになりかねない」と指摘します。
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米中摩擦は、すでに日本の貿易に大きな影響を及ぼしています。4月の貿易統計速報によると、中国向けの輸出は、前年同月比で6・3%減の1兆2329億円となり2カ月連続で減少しました。通信機(55・1%減)半導体等製造装置(41%減)などの輸出が大きく減りました。
5月の月例経済報告は、「輸出や生産の弱さが続いている」と指摘せざるをえませんでした。
輸出頼みの日本経済にとって、世界経済の先行き悪化は致命傷になりかねず、内需を冷え込ませる消費税率の10%への増税は日本経済自滅の道です。
共産党「三つの提案」 暮らし応援
今、必要なのは消費税増税ではなく、くらしを応援する政治です。日本共産党は、くらしに希望を届ける「三つの提案」をしています。
「三つの提案」は、(1)8時間働けばふつうにくらせる社会を(2)くらしを支える社会保障を(3)お金の心配なく学び、子育てができる社会を―の三つが柱。この実現に必要な財源、7・5兆円は、消費税増税ではなく、大企業と富裕層を優遇してきた税制を是正し、応能負担の税制を実現することと、「思いやり」予算など税の無駄遣いを廃止することで賄えます。(表)
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