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2019年5月18日(土)

シリーズ党国会議員に聞く 紙智子参院議員

安倍政権の“亡国の農政”

日米FTAは破綻の道

農林水産業を地域経済の柱に

 日本農業と食料に壊滅的な打撃をもたらす日米FTA(自由貿易協定)交渉につきすすむ安倍政権に対峙(たいじ)し、参院農水委員会などでFTA交渉中止、食料主権を保障する貿易ルールの確立を求める日本共産党の紙智子議員。安倍首相の“亡国の農政”への批判と日本農業の展望について聞きました。(聞き手・若林明、写真・佐藤光信)


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(写真)紙智子参院議員

 ―日米首脳会談(4月26日)でトランプ米大統領から、農産品に課されている「関税を撤廃したい」という要求を突き付けられました。

 安倍政権による“亡国の農政”の一つの帰結が、トランプ米大統領の関税撤廃の要求です。安倍政権は、2012年総選挙での国民との公約をあっさり裏切って、TPP(環太平洋連携協定)をはじめとする歯止めなき自由化路線を突き進んでいます。米国ぬきのTPP11を発効させました(18年)。米国から農産物の国際取引で不利になると言われ、2国間協議に突き進みました。

 コメで言えば、輸入枠を、米国の要求にそって米国離脱前のTPP12での7万トンから十数万トンに上げられる可能性が十分あります。牛肉については、TPP11加盟国とは関税率がすでに38・5%から26・6%に下げられました。来年4月には25・8%になります。米国は38・5%のままです。米国の食肉連合会は、引き下げテンポが先行するTPP加盟国より遅れをとり不利になるのでTPP以上の水準を要求したいと言っています。

 関税削減期間とテンポを変えれば、「過去の経済連携で約束した内容が最大限」という日米共同声明に反することになります。1990年代の牛肉、オレンジの自由化で大打撃を受けたのに、その反省もなく自由化を進めれば、日本農業が破綻の道を突き進むことになります。

 日本農業と食糧に壊滅的な打撃を与える日米FTA交渉は中止し、食料主権を確保する貿易ルールの確立が必要です。

生産基盤弱体化

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 ―安倍首相は「わが国の美しい田園風景、瑞穂の国」などと言って、農業を重視しているポーズをとっていますが。

 安倍首相は「農業総産出額も生産農業所得も過去最高になった」と自慢していました。しかし、その実態は、生産が減少しているために市場に出る量が減り、価格が上がっているためです。農地は減り続け、基幹的な農業者が減り続けて、肝心の生産基盤が弱体化しているという、決して自慢できる状況ではありません。

 かつては、各地に中小も含め家族農業で農産物が生産されていたため、多少天気が悪くて収穫できないことがあっても、それをフォローするだけの余力がありました。今は、余力がなくなっている。例えば北海道の畜産関係で言えば、離農する農家が毎年、約160戸もあります。全国的な生産基盤の弱体化を示すのが、耕作農地そのものが減り続けていることです。基幹的農業従事者も販売農家も減り続けています。この生産基盤の弱体化こそ、食料自給率の低下の原因です。

 農機具会社の社長が「弱体化はすでにかなり厳しい状況になり、それがどんどん進行している。(国全体の)食糧問題になってくる可能性があり、国民にとって人ごとでなくなる」と指摘しています。私は、安倍首相がいくら胸をはっても喜べないということを国会で追及してきました。通常国会で、吉川貴盛農水相は「農業従事者の減少、耕地面積が(自給率の低下の)要因になっている」と生産基盤の弱体化を認めるようになってきました。

 安倍政権は、基本となる大事な数字を横において、都合のいいことだけを言います。事実に基づかないで、あたかも安倍政権が農業を大事にしているかのようにごまかします。許し難いことです。統計まで都合のいい数字でごまかそうとする安倍政権だからこそです。

現場からの批判

 ―安倍政権の“亡国の農政”への厳しい批判がありますね。

 安倍政権の農政への現場の批判は大きくなっています。「日本農業新聞」のモニター調査(4月25日)では、安倍政権の農政を「評価できない」という回答が約7割です。その中でも、規制改革推進会議に基づく官邸主導の農政については、83%が「評価できない」と答えています。

 一方で、国際的には、新自由主義的な農業政策に対する批判的な流れが起こっています。2019年から「家族農業10年」の取り組みが始まりました。農業の多面的な役割を大事にする政策を重視しています。すべての国に公共政策を作成することを求め、政府および国際的、地理的な機構、市民社会は、家族農業を積極的に支援しようと呼びかけています。

 規模拡大一辺倒の農政ではダメだということは国際的な世論になりつつあります。ところが安倍政権の政策は規模拡大条件が付いているものばかりです。農協など農業関係者からは、家族農業支援と「規模要件を何とかしてくれ」という強い要望があります。農協の組合長へのアンケートで、地域農業にとって今後重要と思われる農業政策はとの問いに「所得補てんと経営安定対策」と答えた組合長は55%になっています(日本農業新聞1月14日付)。国会でもその声を届けてきました。

 日本共産党は、安倍政権の“亡国の農政”への批判とともに、これに対抗する現場の声を国会に届け、農林水産業を地域経済の柱にすえて、将来にむけて安心して農業に励める価格保障と所得補償を求めています。


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