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2019年5月12日(日)

主張

マイナンバー拡大

あの手この手で押し付けか

 安倍晋三政権が、マイナンバーの仕組みを拡大する動きを強めています。マイナンバー制度は開始から4年目に入りましたが、国の情報管理への警戒感、手続きのわずらわしさなどから、ほとんど活用されていません。そのため安倍政権はあの手この手を使って国民に利用を押し付けようというのです。今国会に、マイナンバー関連の三つの法案を提出したのも、その具体化です。しかし、国民が求めてもいない、行き詰まった制度を無理に推し進めることは矛盾を深めることにしかなりません。

国民は必要性を感じない

 マイナンバーは、赤ちゃんからお年寄り、在日外国人を含め国内に住民登録したすべての人に12桁の番号を割り振り、税や社会保障の行政手続きなどで使わせるという仕組みです。安倍政権は「国民の利便性が高まる」「行政の効率化につながる」と盛んに宣伝しますが、国民には浸透していません。

 政府が普及に躍起になっている顔写真付きの「マイナンバーカード」(申請は任意)を取得した人は、住民の約13%にとどまります。内閣府が昨年末に発表した世論調査では「取得していないし、今後も予定はない」が53%でした。理由は「必要性が感じられない」が6割以上で、個人情報の漏えいやカードの紛失や盗難を心配する意見も少なくありません。不安が根強いことを浮き彫りにしています。

 ところが安倍政権は国民の不安にこたえず、とにかくマイナンバーの仕組みを広げ、国民がカードを使わざるをえない状況をつくりだすことに必死です。その加速のために持ち出したのが、国会で審議されている三つの法案です。

 一つは、21年からマイナンバーカードを健康保険証としても使用可能にするなどの健康保険法等改定案です。オンラインで本人確認できるようになるといいますが、患者にメリットはありません。むしろカードを持ち歩く機会が増えることで紛失、盗難のリスクが高まります。既往歴など機微に触れる個人情報などの漏えいにつながる危険も払しょくできません。

 行政手続きを電子申請に統一するなどの「デジタル手続き法案」は、マイナンバーカード取得を促進することが狙いです。番号通知の際に郵送される現在の紙製カードを廃止し、顔写真付きのカードを持たざるをえないようにしようというわけです。カードがなくても不便を感じない住民にカードを“強要”しようというやり方は、乱暴で、混乱を招きかねません。

 戸籍事務とマイナンバー制度を結びつける戸籍法改定案は、プライバシーの重大な侵害を引き起こす恐れが強いものです。戸籍には婚姻、離婚、親子、養子など出自にかかわる大事な情報が含まれています。それをマイナンバーによって法務省が「一元管理」できる体制をつくるものですが、情報管理の方法や情報保護措置の内容は明確でありません。

普及ありきの姿勢やめよ

 三つの法案は、他にも深刻な問題が山積しています。国民のプライバシーにかかわる法案を拙速な審議で成立させてはなりません。

 安倍政権は、消費税増税「対策」として、自治体発行ポイントのマイナンバーカードへの付与を盛り込むなど、普及へ手当たり次第です。国民が必要としない制度への固執は、もうやめるべきです。


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