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2019年4月28日(日)

日米交渉 安倍政権のウソあらわ

農業関税撤廃 連鎖招く

 安倍晋三首相との首脳会談で、トランプ米大統領は、「日本は非常に巨額の関税を農産品に課している」として、「その関税を撤廃したい」と求めました。

 日本は、工業製品の関税をすでに撤廃しています。農林水産物では、環太平洋連携協定(TPP)によって、2594の関税品目のうち2135まで、関税を撤廃します。農業への影響を考慮して、国会決議が交渉から除外するよう求めた米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の農産物重要5品目でも、594の関税品目のうち170まで、関税を撤廃します。重要5品目を中心にわずかに残った関税を、米国の求めに応じて全廃するとすれば、日本の農林水産業に及ぶ打撃は計り知れません。

米国の焦り

 「米国第一」を掲げて、貿易赤字の削減を優先するトランプ政権は、日本との交渉で、農産物と自動車の分野を最重視しています。特に農産物分野では、米国がTPPから離脱したために、対日貿易条件が他の諸国に比べて不利になっており、米国の農業関連業界は焦燥感を強め、対日交渉を急ぐよう求めています。実際、米国を除く11カ国のTPP11が昨年12月末に発効した後、1~2月の日本の牛肉輸入が急増する中で、米国の比重が低下しています。

 安倍政権は、米国との関税交渉で譲れる限度はTPP水準までだと述べ、米国側もその立場を認めているとしてきました。TPP水準なら問題がないというわけでは、決してありません。しかし、トランプ大統領の農産物関税全廃要求は、安倍政権の従来の説明がウソであったことを暴露しました。

 もし、日本が米国に対しTPP水準を超えて譲歩すれば、日本と新たに協定を結ぶ国や、すでに協定を結んでいる国が同等の条件を求めることになります。日米間にとどまらない関税撤廃・削減の連鎖を招きます。

兵器購入増

 自動車分野は、米国の対日貿易赤字の8割を占めています。トランプ大統領は、日本の自動車メーカーの対米投資を評価する一方、対日赤字の削減を強く主張し、いっそうの対米投資を求めました。安倍首相は、日本の財界がトランプ政権発足後、230億ドルを米国に追加投資したことを強調しました。今後とも、米国の求めに応じようとすると、日本での生産を縮小し、産業空洞化をいっそう激化させざるを得ません。

 対日赤字に関して、トランプ大統領はまた、日本が米国製兵器を大量購入していることに感謝しつつ、戦闘機、ミサイル、ロケットなどを挙げ、引き続き購入を増やすよう求めました。日本側もこれに応じる意向です。

 トランプ大統領は、今月開始されたばかりの交渉を5月の大統領来日以前にも妥結させる可能性を示唆しました。農産物と自動車の分野で早期に目に見える“成果”を挙げようと急ぐトランプ政権の身勝手さの表れです。

 このような「米国第一」のトランプ政権との交渉は、日本の経済主権と食料主権を脅かすものです。

 (北川俊文)


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