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2019年4月21日(日)

2019とくほう・特報

子どもの視点から貧困概念化を

 子どもの7人に1人が経済的に困難な状況にあります。子どもの貧困を捉える視点と、子育て世代の声を政治に生かす問題を考えます。(武田恵子)


少数でも支援する必要

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(写真)松田洋介・大東文化大学教授

大東文化大学教授 松田洋介さんに聞く

 各地の自治体で「子どもの生活実態調査」がとりくまれています。金沢市の調査に携わった松田洋介さん(当時・金沢大学准教授、現・大東文化大学教授)に聞きました。

実態調査から

 子どもの生活実態調査は、東京都の調査を参考にして実施しました。昨年11月に中間報告がだされたときに、教育や福祉に関わる市民運動に携わってきた方たちから「家庭の収入によって、子どもの生活がこんなに違うのか」と驚きの声があがりました。ある程度、理解されていると思っていたのですが、みなさんの反応に私自身、認識を新たにしました。

 本調査の「相対的貧困」概念には、低所得に加えて、家計のひっ迫とか、子どもの体験や所有物の欠如を経験している家庭も含まれています。貧困をより包括的に捉えようとする研究潮流の影響を受けています。

 毎日、朝食をとる小学5年生が相対的貧困層では85%でした(相対的貧困層ではない層では92・7%)。この結果をみて、85%が食べているから問題ないと見るのか、15%が食べていないから深刻と受け止めるのか。不登校の子が15%いたら「多い」と思うでしょうが、朝食ならどうなのか。結果を見る目が問われます。

 経済的理由で遊園地やテーマパークに行けない子どもが相対的貧困層では25%です(相対的貧困層ではない層は4%)。携帯音楽プレーヤーを持っていないが、欲しいと答えた中学2年生や、「インターネットにつながるパソコン」が欲しいと答えた16~17歳でも(相対的貧困層とそうでない層との間で)差が出ました。それらを経験できない、所有できないことで、仲間関係からの排除の危機を経験している子どももいるでしょう。おとな世代の価値観をいったん括弧(かっこ)にくくり、子どもの視点から貧困概念をつくることが求められます。

 子どもを医療機関に受診させなかった理由として「支払いが不安」と答えた人も4%いました。全体から見れば少数です。だから問題ない、とするのではなく、その少数を支援する施策が求められます。たとえひとりでも人権のはく奪はあってはならないことだからです。

 利用してみたい支援・サービスについて、学校でも家庭でもない空間をあげる子どもが多いことが分かりました。公共性のある安心して通える場所、ひとりでいてもしゃべらなくても安心できる場所を求めています。子ども食堂の広がりなど、子どもの貧困問題に関心をもつ人が増えています。だからこそ、専門的な知見をもつスタッフを配置しながら、子どもの居場所を充実させることが大切になっていると思います。


子育て世代の声を政治に― 石川県に見る

窓口無料化進むと受診抑制減る

 子育て世代の声を政治に届けるとりくみを石川県に見ました。

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(写真)志賀町に子ども医療費無料化を要請する石川県社会保障推進協議会の寺越事務局長ら=2018年10月25日

 身近に「子どもの貧困」を感じて、市長に実態調査を要望したのは、野々市(ののいち)市の種池洋さん(76)です。登校する子どもたちの見守りを通学路で行っています。ある日、泣いて登校する小学1年生に「どうしたの?」と声をかけたところ、朝食をとっていないことがわかりました。

 種池さんは「母子家庭で経済的な事情があったため、地域の方々とも協力して、見守りを続けています。金沢市のように、野々市市でも子どもの生活実態調査をすべきです」。

 県内の市民団体は、県や市町に「子どもの貧困実態調査」の実施を要望しています。

 全国でも、子どもの貧困対策に向けて、26都道府県を含む250以上の自治体が「子どもの生活実態調査」にとりくんでいます。

 結果が公表されている子どもの生活実態調査では、貧困が子どもの生活習慣、健康、学習などに影響を与えていることが明らかにされています。一方で、たとえば医療費の窓口無料化が進むと、経済的理由による受診抑制も少なくなる傾向が見られます。

20年の運動で変化

 「ここ数年、就学援助の入学前支給や子どもの医療費窓口無料化で大きな変化があった」と話すのは、県社会保障推進協議会の寺越博之事務局長です。

 市民の運動と日本共産党の議会での論戦で、就学援助の入学前支給は県内19市町すべてで実現。子ども医療費助成でも「18歳まで」が18市町、「15歳まで」が1市です。窓口無料化を阻んできた県の態度が20年来の運動で2014年に変わりました。以降、市町独自の窓口無料化を広げ、未実施は七尾市と志賀町だけです。全国的にみても実施を表明していないのは同県の2市町を含む5市町村のみとなっています。

 21日投票の市町議選。日本共産党は金沢市議選で「18歳まで窓口無料」をかかげ、志賀町議選では「子ども医療費窓口無料化は最優先の子育て支援策。受診時にお金の心配をさせないことが子どもの命と健康を守る」(中谷松助町議)と訴えています。

国保税「高すぎる」

 野々市市の岩見博市議が行った市民アンケートに「子ども3人で(年)10万円もの国保税になる。高すぎる、あんまりだ」の声が寄せられました。子どもが1人増えるごとに均等割として、年3万6200円の負担増です。岩見市議は、「子育て支援に逆行する国保税の子ども均等割の減額・免除」実現へ力を込めます。1兆円の公費投入で他の保険制度並みに引き下げようと訴えています。


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