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2019年4月12日(金)

ブラックホール観測

予言から100年 新時代

宇宙の進化 解明に期待

 強い重力で時空をゆがめ、光さえ脱出できない究極の天体「ブラックホール」。アインシュタイン博士が提唱した一般相対性理論で存在が予言されてから1世紀。その姿を人類の前に初めて現しました。最近、初めて検出された重力波と合わせて、宇宙の進化の謎のカギを握るブラックホールの観測は大きな一歩を踏み出しました。

 (中村秀生)


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(写真)ブラックホールの黒い影の写真を手にする本間希樹さん、秦和弘さん(左端)ら=10日夜、東京都内

 「ブラックホール研究は、まったく新しい時代を迎える」。観測チームの秦和弘・国立天文台助教は10日夜、記者会見で高らかに宣言しました。

 宇宙にあまたある銀河の中心には、太陽の100万~10億倍の巨大ブラックホールが存在すると考えられています。しかし、これまで周辺の天体やガスの運動などから間接的に観測することしかできませんでした。

 今回とらえたブラックホールの黒い影は、強い重力で光が大きく曲げられ脱出できなくなることの視覚的証拠であり、宇宙で最も明るく輝く「活動銀河中心核」のエネルギー源が巨大ブラックホールである直接証拠。物理学的にも、天文学的にも大きな意義をもつといいます。

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(写真)M87の中心にある巨大ブラックホール周辺の想像図(©Jordy Davelaaret al./RadboudUniversity/BlackHoleCam)

■望遠鏡の性能が向上

 これを可能にしたのは、遠く離れた多数の望遠鏡が協力することで、感度・解像度・画質を飛躍的に上げたことです。ブラックホールには、それより近づくと光でも脱出できなくなる境界「事象の地平線」(イベント・ホライズン)があり、その中の現象は外から知ることができません。そのギリギリまでの観測をめざす、今回の計画は「イベント・ホライズン・テレスコープ」(EHT)と命名されました。天の川銀河の中心にある巨大ブラックホールの観測データも現在解析中です。

 巨大ブラックホールの進化を研究する谷口義明・放送大学教授は今回の観測を「質的に研究はジャンプする。教科書の一ページに書かれるような研究成果だ」とみています。

 観測チームは今後、観測網を充実し視力を1・5倍化。より鮮明な画像を撮影したり、動画によって周辺のガスの運動も精密にとらえたいとしています。

■ジェット噴出のなぞ

 今回の画像は大きな宿題も残しました。あらゆるものを吸い込むはずのブラックホールから、ジェットが噴出することが観測されています。いったいなぜか、そのメカニズムを探究してきた秦さん。ジェットの根元がブラックホールに直接つながっているのか、周辺のガス円盤につながっているのかをつきとめて、解明したいと期待していました。しかし「予想に反して検出されなかった」。東アジアで構築した観測網とEHTを組み合わせてこの謎に挑みます。

 銀河中心の巨大ブラックホールが宇宙のごく初期にも存在していることが最近の観測で明らかになり、どうやって短期間でできたのかは論争の的です。銀河の形成や進化のカギを握る存在としても注目されています。

 人類が新たに手にした観測手段で宇宙の謎にどこまで迫れるか。期待が膨らみます。


 ブラックホール 一般相対性理論から1916年に予言された、とてつもなく高密度な天体。例えば、地球と同じ質量をもつブラックホールがあるとすれば直径2センチメートル以下になります。当初は理論上の存在でしたが、1970年代、はくちょう座X―1で初めて観測的に実証されました。太陽の数倍程度の重さのブラックホールは、重い星が一生を終えるときの超新星爆発で生まれると考えられています。その1000~1万倍程度の重さの中間質量ブラックホールも観測されています。


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