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2019年3月19日(火)

「大阪都」構想・カジノでなく防災・福祉、中小企業支援こそ

立命館大 森裕之教授に聞く

 大阪維新の会が統一地方選の公約に掲げた、「大阪都」構想の実現や大阪市でのカジノ開業について、立命館大学政策科学部の森裕之教授(財政学・都市経済学)に聞きました。(藤原直)


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 「大阪都」構想とは、大阪・関西の母都市で、日本有数の政令市の大阪市を廃止し、府に従属する複数の特別区に分割するものです。

 2015年5月17日、大阪市で実施された住民投票で、反対多数で否決されています。

財政的マイナス

 ところが維新はいま、特別区の数を五つではなく四つにするだけで、ほとんど前と変わらない新たな案を当局に作らせ、2度目の住民投票を目指しています。

 維新は「都」構想で「府と市の二重行政の無駄をなくす」としてきました。しかし、15年の案でも「二重行政」の廃止による財政効果は、せいぜい年間2億~3億円程度にしかならない一方で、新庁舎建設など初期コストに680億円、年間運営コストに15億円かかると試算され、財政的にはマイナスでしかないことは分かっていました。

 今回の案について、大阪府市は140億円という財政効果(「改革効果額」)を示しています。しかし、そのほぼすべてが、二重行政とは関係のない民営化・民間委託・経費節減です。それらを除外した「二重行政」の廃止自体で生み出される財政効果はわずか0・4億円。特別区となる大阪市だけで見ればゼロです。

 一方で、新たに必要となる財政負担は、特別区となる大阪市だけでも初期コストが520億円、年間運営コストが24億円と試算されています。「都」構想は、すでに検討に値するものではなくなっているのです。

民主主義の否定

 維新は今回、「都」構想で、知事という「1人の首長(リーダー)のもとで、成長戦略を迅速に実行できる行政の仕組みを構築する」と強調しています。しかし、そこで実行しようとしている維新の「成長戦略」の目玉は、市民に評判が悪い、大阪市内でのカジノの開業などにすぎません。

 維新は、府と市の意見が違うと物事が迅速に進まないと言いますが、なぜいけないのでしょうか。府民もいれば市民もいるわけで、それぞれ議会も首長も選出します。府と市が話し合うべきであって、市民が納得していないのに知事が決めればいいというのは、民主主義の否定です。いまの国と沖縄県の関係と全く同じ考え方です。

 維新は、かつての大阪で、市と府の第三セクターがそれぞれ建てて相次いで破綻した旧「WTCビル」(256メートル)と「りんくうゲートタワービル」(256・1メートル)を「二重行政の無駄」の象徴として繰り返し批判して支持を集め、実際には住吉市民病院など必要な事業を「二重行政」として廃止してきました。そしていま、自らが、「都」構想をはじめとする破綻と無駄遣いへと突き進んでいます。

 カジノと万博を一体で誘致する人工島・夢洲(ゆめしま)について土地造成や地下鉄延伸などのインフラ整備の総事業費は、今後7年間で950億円規模に上るとされています。さらに大阪メトロは新しく「夢洲駅」(仮称)を整備し、高さ250メートル超のタワービルを総事業費1000億円超の規模で建設する構想を示しましたが、私にはこれこそが現代のWTCビルに見えます。

 大阪には既に万博記念公園があります。それなのになぜ夢洲で万博を行わなければいけないのでしょうか。大阪府市政には、府民の富を吸い上げるカジノのためのインフラ整備ではなく、防災事業や福祉の充実、中小企業支援への重点投資こそ求められています。


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