2019年3月18日(月)
平和脅かす研究しない
天文学会が声明
日本天文学会(会長・柴田一成京都大学教授)は16日、安全保障と天文学の関係をめぐって「人類の安全や平和を脅かすことにつながる研究や活動は行わない」「科学に携わる者としての社会的責任を自覚し、天文学の研究・教育・普及、さらには国際共同研究・交流などを通じて、人類の安全や平和に貢献する」とする声明を発表しました。
2015年に始まった防衛省「安全保障技術研究推進制度」に一部の大学・研究機関の研究者が参加するなど軍学共同が進み、学問の自由や健全な発展を脅かすと懸念されています。天文衛星や望遠鏡など最先端の宇宙技術には軍事転用可能なものが多くあります。
今回の声明は、日本学術会議が「軍事目的のための科学研究を行わない声明」などを17年3月に継承し、各分野の学協会に真摯(しんし)な議論を呼びかけたことに応えたもの。年会での特別会合、学会誌での特集、会員アンケートなどに取り組み、臨時会員全体集会などの議論を経て今月15日に代議員総会で声明を決定しました。
会員アンケートの結果は、防衛省の研究制度への賛否は「反対」がやや優勢でしたが、20~30代では「賛成」の方が上回るなど、幅広い意見がありました。
柴田会長は記者会見で「こういう問題では議論を忌避する雰囲気もあるが、全体として議論することに前向きだったのはうれしい結果だ」と述べました。
関係者からは「天文学会は会員全体を巻き込んだ議論をし、誇るべき対応をした」という声がありました。
同学会は1908年に設立。個人会員は現在、大学・研究機関の研究者のほかアマチュア天文家など3200人あまり。