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2019年2月25日(月)

主張

原発事故の賠償

国と東電は被害者と向き合え

 2011年3月の東京電力福島第1原発事故の際に、福島県から神奈川県に避難した住民が、国と東電にたいし損害賠償を求めた訴訟で、横浜地裁は国と東電の法的責任を認め、賠償を命じる判決を言い渡しました。全国でたたかわれている同様の集団訴訟のうち、東電とともに国の責任を認めた判決は6件中5件となり、司法の判断は定着しつつあります。東電は判決が出た全ての訴訟で責任を問われています。安倍晋三政権と東電は、司法による判断を真剣に受け止め、被害者が生活基盤を取り戻せるよう、対応を根本的に改めるべきです。

責任を認めない姿勢

 20日の横浜地裁判決は、巨大津波を予見できなかったという国の主張を退け、津波対策をとらなかった責任を断罪しました。国は巨大津波を予見でき、対策をとれば事故を防ぐことができたのに、東電に対して規制権限を行使しなかったのは違法だという認定です。

 おびただしい被害を広げ、いまも収束の見通しがない東電原発事故が人災であり、国も東電もその責任を免れないことはますます明白です。ところが、国も東電も事故への根本的な反省はありません。一連の判決を不服としてあくまで裁判を続けようとする国と東電の姿勢はあまりに重大です。

 東電などが被害者に背を向けているのは、これらの訴訟だけではありません。

 原発事故で被害を受けた住民が集団で申し立てた「裁判外紛争解決手続き(ADR)」の和解案を東電が拒否する事態が相次いでいることが大問題になっています。

 ADRは申し立てが無料で、当事者には裁判に比べて費用や時間がかからないなどの特徴があり、中立・公正の立場から仲介委員の弁護士が紛争の解決を目指すという仕組みです。しかし、強制力はありません。

 福島原発事故では、ADRの方法を使って公的機関の「原子力損害賠償紛争解決センター」が設置され、和解仲介を受け付けてきました。ところが、同センターが示した和解案を東電が拒み、手続きが打ち切られる状況が際立ってきたのです。

 原発事故で全町避難となった福島県浪江町の町民約1万6000人が行った最大規模の申し立てについて、東電は4年間にわたり和解を拒み続け、昨年4月、仲介が打ち切られました。背景に賠償額を抑え込みたい東電の思惑などが指摘されています。

 原発事故の加害者としての意識がまったく見られない行為に、当事者などから強い憤りの声が上がり、町民が国と東電に対して裁判を起こす事態となっています。

道理なき態度を改めよ

 東電は原発事故後、「最後の一人まで賠償」「迅速かつきめ細やかな賠償の徹底」「和解仲介案の尊重」という「3つの誓い」を公表しています。簡易な手続きで迅速に救済をはかるADRを次々と拒む東電のやり方は、自らの誓いにも反し、深刻な事故を起こした責任を投げ捨てるものです。何重にも道理に反する態度は許されません。

 原発事故の発生から間もなく8年を迎えるなかで、被害者に対する賠償と支援はいっそう重要です。国と東電に責任を果たさせることが急務です。


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