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2019年2月21日(木)

かながわ訴訟

乗り越える光になれた

さらに前進 避難者誓う “賠償政策変えさせる”

 東京電力福島第1原発事故で神奈川県に避難した被災者が国と東京電力に損害賠償などを求めた「福島原発かながわ訴訟」(村田弘原告団長)の横浜地裁判決(20日)に、原告らは新たな前進を誓っていました。(菅野尚夫)


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(写真)判決後に記者会見する、かながわ訴訟の原告・弁護団ら=20日、横浜市

 判決が出ると弁護団が地裁前で「国の責任5度断罪」「賠償水準大きく前進」の垂れ幕を掲げました。「法の庭八分咲きなり寒の梅」の垂れ幕も。村田原告団長は「国の責任が明確に認められました。8年間、本当につらい時間でした。国と東電は避難者いじめの政策をやめて」と、声を詰まらせていました。

 報告集会会場で、原告も記者会見しました。福島県南相馬市から横浜市に避難している50代の女性は「23人が請求を棄却されましたことが大きなショックです」としつつ、「乗り越えていく光になれた」とのべて、さらなる前進を誓っていました。

 78mp女性も南相馬市からの避難者。「5年5カ月の裁判は長いたたかいでした。裁判長には、原発事故というものが東日本を台無しにしかねない被害をもたらすことを分かってもらいたかった。賠償をさらに上積みさせて、政策をかえさせる」と決意を語りました。

 浪江町から神奈川県に避難した男性(48)は「失ったものは言葉で言いつくすことができません。あまりにもひどく、本当の暮らしをしていけません。失ったものに対して国と東電に非があると認められたことは喜ばしいことです」とのべて、避難者の実態に見合った賠償を求めました。

原告団・弁護団判決声明(要旨)

 国や東京電力の加害責任が司法の場において5度認められた今、国や東京電力はこれまで進めてきた被害者に対する賠償、支援策の打ち切りといった対応を根本から改め、被害者が原発事故前の生活基盤を取り戻すための完全賠償とそのための諸政策を速やかに実施すべきである。

 あわせて、福島復興再生特別措置法や福島原発事故子ども・被災者支援法の改正をはじめ、被害者の人権を回復し、生活再建をすすめる新たな立法の制定・施策を求める。


解説

定着した「国の責任」

 2017年3月から出された同種の集団訴訟8件の一審判決で、国を被告とした6件のうち、横浜地裁を含めた5件が国の責任を認めました。弁護団は「国の責任は定着した」と述べました。

 横浜地裁は、巨大津波の予見可能時点をこれまでの判決と違い2009年9月時点におき、対策を電源設備の移設に限りました。その上で、移設すれば福島第1原発1号機の水素爆発を回避でき、結果として大量の放射性物質が放出する事態を回避できたと判断。国が規制権限を行使しなかったのは「著しく合理性を欠く」と判断しました。東電についてはこれまでの8件とも原子力損害賠償法の無過失責任によって賠償責任を認定しています。

 一方、判決は避難指示で以前の生活を奪われたことによる「ふるさと喪失慰謝料」を項目として挙げて1人当たり最高で1500万円、避難指示区域外(いわゆる「自主」)避難者に「自己決定権侵害慰謝料」として30万~100万円などの支払いを命令。賠償範囲を定めた国の「中間指針」を上回る賠償額を認めました。これまでの判決でも、指針で対象とされる範囲を超えるものについて裁判所が独自に判断して損害を認定しており、指針の限界を示すものです。しかし、認容額全体が指針の枠を大きく超える上積みをしていません。

 福島第1原発事故から8年になろうとしています。事故の被害が収束していないことは、被害・損害賠償を求める集団訴訟が全国で約30件、原告数が約1万2000人以上に及んでいることからも明らかです。加害責任を5度も裁かれた国は、賠償や支援策の打ち切りを進める復興政策を見直し、被害者の救済に全力をあげるべきです。(三木利博)


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