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2019年2月2日(土)

小池書記局長の代表質問 参院本会議

 日本共産党の小池晃書記局長が1日、参院本会議で行った代表質問の全文は次のとおりです。


写真

(写真)代表質問する小池晃書記局長=1日、参院本会議

勤労統計の不正で2千万人を超す被害が生じている

労災認定に高いハードル、その上政府による数字のごまかし――国民の怒りの声にどう答える

 日本共産党の小池晃です。会派を代表して、安倍総理と厚生労働大臣に質問します。

 厚生労働省の毎月勤労統計の不正により、雇用保険、労災保険などで2000万人を超える被害が生じています。給付を受けていた方は、失業で収入の道をたたれ、あるいは労災で一家の大黒柱を失うという、最もつらく厳しい状態にありました。それなのに、労災で死亡された方の遺族年金などで27万人、1人平均約9万円も給付が少なかったのです。

 過労自死で夫を失った寺西笑子(えみこ)さんは「労災認定には高いハードルがあり、被害者なのに何年もたたかわないと認定されない。その上、国が数字をごまかして補償額を減らし、15年も放置し、わかっても秘密裏に修正していた。二重三重に国に裏切られた。怒りが抑えられない」とおっしゃっています。当然の怒りです。総理はこの声にどう答えるのですか。

再調査のやりかたそのものが組織的隠ぺい、徹底解明を求める

 厚労省の特別監察委員会は「組織的な隠ぺいの意図までは認められなかった」としました。しかしその報告書の原案は厚労省が作成し、職員らへの聞き取りの7割は「身内」である厚労省職員が行い、その場には厚労省審議官と官房長が同席して質問し、今行われている「やり直し」の調査にも、人事課長が同席しているといいます。

 こうした調査そのものが、まさに「組織的隠ぺい」ではありませんか。総理はこれで真相が解明され、国民の納得が得られると思いますか。

 厚労大臣に問います。大臣は参院厚生労働委員会の閉会中審査で「しっかり第三者委員会としてやっていただいた」と答弁しましたが、「第三者委員会」の体をなしていません。答弁を撤回すべきではありませんか。

 総理には昨年12月28日に報告したと言いますが、なぜこの日になったのですか。この日は、統計不正が初めて報道された日です。隠しきれなくなって、報告したのではありませんか。根本大臣の下で、国民の信頼を取り戻すことは不可能です。

 総理。今の特別監察委員会による再調査ではなく、厚労省から完全に独立した組織をつくり、調査を一からやり直すべきです。国会にすべての資料を提出し、関係者を招致し、徹底した真相解明を行うべきです。明確な答弁を求めます。

偽りの数字をもとに、賃上げを誇り、消費税増税を決めた安倍政権の責任は重大

実質賃金と家計消費が落ち込んでいるときに消費税を増税すればくらしも経済も破壊

 昨年の実質賃金は、実際には大幅マイナスだった可能性が指摘されています。

 しかし総理は、「毎月勤労統計の数字のみを示したことはない」と述べ、毎勤統計の代わりに「連合」の調査結果にすがりついて、「5年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げ」と開き直りました。しかし、これは物価の上昇を織り込んでいない名目の賃上げ率です。この5年間には消費税の増税をはじめ物価の上昇があり、その分を差し引いた実質にすると1%程度にすぎません。これは、逆に今世紀に入って最低ではありませんか。

 偽りの数字をもとに、賃上げを誇り、消費税増税を決めた安倍政権の責任はきわめて重大です。

 総理の施政方針演説には「家計消費」という言葉がついに一度も出てきませんでした。賃金統計は都合のいいように偽装しながら、消費の落ち込みという都合の悪いデータは抹殺するのですか。経済の6割を占める家計消費を無視して、まともな経済対策など成り立ちません。実質賃金と家計消費が落ち込んでいるときに、消費税増税を強行すれば、くらしも経済も、破壊されてしまうのではありませんか。

消費税は社会保障の安定的な財源になりえない

 総理は施政方針演説で「頂いた消費税をすべて還元する規模の十二分な対策を講じる」と述べました。最初から戻すくらいなら、増税しなければいいではありませんか。

 総理は「消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要」だといいますが、増税分を戻さなければならないほど、景気に深刻な打撃を与えるような税のみに、社会保障の財源を頼ることが根本的な間違いであり、安定的な財源にはなりえないことの証明ではありませんか。

増税するなら、アベノミクスで大もうけした富裕層と巨大な内部留保を抱える大企業に

 今年度末で、消費税導入から30年となります。この間の消費税収は372兆円ですが、その期間に法人3税は290兆円、所得税・住民税は270兆円も減りました。消費税が、法人税や所得税などの穴埋めに使われ、財政再建にも、社会保障の拡充にもつながらなかったことは明らかではありませんか。

 増税するなら逆進的な消費税ではなく、アベノミクスでさんざんもうけた富裕層です。富裕層の株のもうけに欧米並みの税率で課税し、400兆円を超える内部留保を抱える大企業に中小企業並みの税負担率を求めれば、消費税10%増税分の税収は確保できます。この道を進むべきではありませんか。

 日本共産党は、負担能力に応じた負担で、経済も財政も両立させ、社会保障を充実させる本当の改革実現に全力をあげるものです。

高齢世代の貧困と不安の増大が日本社会の深刻な問題に

“年金に頼らず、死ぬまで働け”が首相のメッセージか

 総理は「全世代型社会保障への転換とは、高齢者のみなさんへの福祉サービスを削減する、との意味では全くありません」と述べました。しかし実態はどうか。

 「下流老人」「老後破産」など、高齢世代の貧困と不安の増大が、日本社会の深刻な問題となっています。その大きな原因が、少ない年金給付です。現在、国民年金のみの受給者の平均年金額は月5・1万円。厚生年金受給者でも、女性の平均額は月10・2万円。年金受給者の7割は年金額が年200万円未満にすぎません。

 こうした中で、安倍政権は、何をしようとしているか。

 昨年の物価指数はプラス1・0%であり、生活水準を維持するためには年金改定率も同じにしなければなりません。ところが、マクロ経済スライドなどが発動され、来年度の年金改定率はプラス0・1%に抑えられます。

 物価は1%上がっているのに、年金は0・1%しか上げない。

 つまり、来年度だけでも0・9%の実質減額です。

 その結果、安倍政権発足後の7年間をみると、物価が5・3%上昇したのに、年金は0・8%の引き下げとなり、7年間で物価と年金は6・1%も乖離(かいり)しました。

 総理は、これで高齢者の生活水準が維持できるとでもいうのですか。

 総理は施政方針演説で高齢者の就業人口増加を誇りましたが、内閣府の調査によれば、高齢世代が「就労の継続を希望する理由」について、ドイツやスウェーデンでは、「仕事そのものが面白い、自分の活力になるから」が回答の1位だったのに対し、日本では「収入が欲しいから」がダントツ1位です。

 「年金だけでは、生活できない」、「年金が減らされ、これからの生活が不安」、だから多くの高齢者が、無理をしてでも働かざるを得ない――これが今の日本の現実です。

 年金給付を抑制しながら、他方で「生涯現役の社会」を掲げれば、それは、“年金に頼らず、死ぬまで働け”というメッセージにしかなりません。

 これが、総理のいう「一億総活躍社会」なのでしょうか。

国保料の国庫負担を引き上げ、国民の負担軽減は急務

 「全世代型社会保障」を実現するというなら、今すぐ解決するべき問題があります。高すぎる国民健康保険料・税の問題です。

 協会けんぽ、組合健保など、被用者保険の保険料は、収入に保険料率をかけて計算しますから、家族の人数が保険料に影響することはありません。ところが、国保には世帯員の数に応じて加算される「均等割」があり、子どもの多い世帯ほど保険料が高くなります。

 「まるで人頭税(じんとうぜい)だ」という批判の声が上がり、全国知事会・全国市長会など地方団体からは「子どもの均等割の軽減」を求める要望が再三出されてきました。

 2015年に地方との協議の場で、政府は検討に合意しましたが、その後いったいどうなったのですか。合意してからすでに4年がたとうとしています。地方との約束を果たすことは、待ったなしではありませんか。

 地方団体は、国庫負担引き上げによる国保料の抜本的軽減を一貫して求めています。

 国保の1人当たり保険料水準は、公的医療保険のなかでもっとも高く、協会けんぽの1・3倍、組合健保の1・7倍です。「全世代型社会保障」を言うなら、全世代にわたり重すぎる、国保負担の軽減は急務ではありませんか。

日本農業を破壊し、経済主権を米国に売り渡す日米FTA交渉は中止せよ

 米国通商代表部(USTR)が昨年12月、日本との通商交渉に向けて22の交渉項目を発表しました。USTRは今回の協定を「米日貿易協定」と呼んでおり、安倍政権が強調する「物品貿易協定」ではありません。「物品貿易」は22項目のうちの一つにすぎず、通信・金融を含むサービス貿易、知的財産、投資など広範囲にわたり、為替まで入っています。

 昨年の本会議で総理はアメリカと交渉するのは物品貿易協定であり「包括的なFTAではない」と答弁しましたが、USTRが挙げた22項目は、まさに「包括的なFTA」そのものではありませんか。

 安倍首相が事実と異なる説明をしてきたのか、USTRが合意にないことを発表したのか。どちらが真実か、はっきりさせるべきではありませんか。

 日本農業を破壊し、経済主権をアメリカに売り渡す日米FTA交渉は、ただちに中止すべきです。総理の答弁を求めます。

沖縄県民への新基地押し付けやめ、米国に普天間基地撤去求めよ

期間も費用もわからない新基地工事を直ちに中止せよ

 沖縄県知事選挙では、8万票の大差で玉城デニーさんが当選し、辺野古新基地建設反対の圧倒的な民意が示されました。しかし安倍政権はそれを一顧だにせず、辺野古で土砂投入を強行しています。

 大浦湾の「マヨネーズ並み」といわれる超軟弱地盤の存在について、政府は3年前に報告を受けながら隠ぺいしていましたが、地盤改良の必要性をようやく認めました。

 そして、総理は地盤改良を行う場合の「今後の工期や費用について確たることを言うのは困難」と述べました。工事がいつまでかかるか、費用がどれだけかかるかもわからずに、赤土を含む違法な土砂投入を続け、新たな護岸まで建設するのは、言語道断です。直ちに工事を中止するべきではありませんか。

国際法違反で建設された普天間基地は、無条件返還が当然

 日米両政府が普天間基地の返還を合意してから23年になりますが、いまだに実現していません。なぜか。代替基地を沖縄県内に求めてきたからです。

 しかし普天間基地は1945年4月、米軍が住民を強制収容している間に、民有地を囲い込んで造ったものです。基地の91%は私有地でしたが、対価も全く支払われていません。

 ハーグ陸戦法規は、戦争中といえども私有地を没収することを禁じており、たとえ軍の必要で収用する場合であっても、その場合は対価の支払いを義務付けています。住民を収容所に入れている間に土地を強奪し、対価も払わないというのは、どんな弁明も通用しない国際法違反の行為にほかなりません。総理には、これが国際法違反だという認識がありますか。

 国際法違反で建設された普天間基地は、無条件返還が当然ではありませんか。

 総理は「これまで20年以上におよぶ沖縄県や市町村との対話の積み重ねの上に、辺野古移設を進め」ると述べました。しかし、安倍政権が一体どんな対話を行ったというのですか。問答無用で強権を発動しているだけではありませんか。

 亡くなられた翁長雄志前知事は「沖縄には魂の飢餓感がある」とまで述べられました。対話を積み重ねるどころか、対話を一方的に破壊し、沖縄の人々の思いを踏みにじっているのが安倍政権ではありませんか。沖縄県民に新基地を押し付けるのではなく、米国に普天間基地撤去を求めることを強く要求するものです。

 あわせて、屈辱的な日米地位協定の抜本的な改定を強く求めます。

「専守防衛」の建前も投げ捨てる安倍政権の憲法破壊を断じて許さない

攻撃的兵器の保有は明らか

 安倍政権は昨年12月に「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」を閣議決定しました。安保法制と日米新ガイドラインに基づき、日米同盟を一層強化するとともに、「従来とは抜本的に異なる速度で防衛力を強化する」ことを強調し、最新鋭ステルス戦闘機F35Bを搭載できるように、「いずも」を空母に改造しようとしています。

 しかし、これは「攻撃的兵器を保有することは自衛のための最小限度を超えることになるから、いかなる場合にも許されない」としてきた従来の政府の立場をも、蹂躙(じゅうりん)するものではありませんか。

 岩屋防衛大臣は「いずも」を改造しても「攻撃型空母には当たらない」と述べながら、同じ記者会見で、米原子力空母ロナルド・レーガンや中国の空母・遼寧が「攻撃型空母に当たるか」と問われ、「攻撃型空母という定義は、はっきりとない」と回答を避けました。「攻撃型空母の定義はない」と言いながら、「いずも」改造艦船は「攻撃型空母には当たらない」といっても、通用するはずがないではありませんか。

 「いずも」を空母化してF35Bの離発着が可能になれば、明らかに他国に打撃を与える能力を持つことになります。「専守防衛」の建前すら投げ捨てる、安倍政権の憲法破壊を断じて許すわけにはいきません。

国民が望んでもいない改憲論議を求めることは首相には許されない

 総理は施政方針演説であらためて改憲議論を呼びかけました。しかし、総理が改憲を声高に訴えれば訴えるほど、改憲を求める世論は逆に減少を続けています。総理は、その原因がどこにあると考えますか。

 昨年、私も出演したテレビ番組で、自民党の萩生田幹事長代行は「不思議なことに世論調査で『安倍首相が進める改憲』と聞くより、ただ改憲について聞く方が賛成が多い」と述べましたが、不思議でもなんでもありません。

 憲法を蹂躙し、「専守防衛」の建前も投げ捨て、戦争する国に向かう総理が改憲の旗を振ることに、多くの国民が不安と懸念を強めているのです。

 どんな世論調査を見ても、国民の圧倒的多数は、改憲を国政の最優先課題とは考えていません。

 国民が望んでもいない改憲を、憲法尊重擁護義務を課されている総理が、自らの権力行使の抑制を緩めるための改憲論議を国会に求める。そんなことが許されるはずがないではありませんか。このこと自体が、立憲主義の乱暴きわまる否定ではありませんか。

市民と野党の共闘で安倍政権の一日も早い退陣を求めてたたかいぬく

 統計不正も、裁量労働制や外国人労働者のデータねつ造も、森友文書改ざんも、イラク日報の隠ぺいも、その根底にあるのは、安倍政権の政治モラルの大崩壊です。こんな政治に未来はありません。

 日本共産党は、市民と野党の共闘で、うそのない当たり前の政治を実現し、立憲主義を回復し、憲法を守り生かし、くらしに希望を取り戻すため、安倍政権の一日も早い退陣を求めてたたかいぬく、その決意を表明して、質問を終わります。


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