2019年2月1日(金)
志位委員長の代表質問 衆院本会議
日本共産党の志位和夫委員長が31日、衆院本会議で行った代表質問の全文は次のとおりです。
日露戦争の戦意高揚の歌を引用――憲法の平和主義に反する
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私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。
質問に入る前に一言申し上げます。総理は、施政方針演説で明治天皇が詠んだ歌を引用しましたが、引用された歌は1904年、日露戦争のさなかに詠まれ、国民と軍の戦意高揚に使われた歌です。日露戦争は日露双方が朝鮮半島などへの支配を争った侵略戦争であり、この歌を施政方針演説の中に位置づけることは、日本国憲法の平和主義に反するものであって、看過できません。強く抗議するものです。
毎月勤労統計の不正問題――総理の基本認識を問う
まず、国政を揺るがす大問題となっている厚生労働省の毎月勤労統計の不正問題について、総理の基本認識をうかがいます。
統計不正による被害と影響の甚大さをどう認識しているのか
第一は、統計不正による被害と影響の甚大さをどう認識しているのかという問題です。
統計不正の結果、雇用保険や労災保険などで2000万人、567億円の被害が生まれています。
また、毎月勤労統計という基幹統計で不正が行われたことで、政府の経済認識、景気判断、税・社会保障・労働に関わる政策判断にも影響が及んでいます。来年度政府予算案の審議の前提を揺るがす事態が起こっているのであります。
さらに、政府が発表する統計は国民が検証しようがないものであり、そこでの不正は国民の政府への信用を根底から破壊するものとなっています。
以上の諸点について総理の認識をまずうかがいます。
組織的隠蔽を否定した監察委報告書の結論は撤回されるべきではないか
第二は、厚生労働省による統計不正の組織的隠蔽(いんぺい)という問題です。
統計不正は2004年以来のものですが、厚労省は、2018年1月から不正調査を「修正」する措置を、秘密裏に行っていました。厚労省が設置した特別監察委員会の報告書では、局長級幹部が担当室長から不正調査の報告を受け、「修正」を指示し、指示にもとづいて「修正」が行われたとしています。
不正調査の事実を知りながら、国民に報告せず、国民に隠れて「修正」を行う。これを組織的隠蔽と言わずして何というのか。にもかかわらず、報告書は「隠蔽の意図は認められなかった」と組織的隠蔽を否定しています。総理、報告書のこの結論は当然、撤回されるべきだと考えますがいかがですか。明確な答弁を求めます。
統計不正が引き起こされた温床は何か
第三に、統計不正が引き起こされた温床は何か。
厚労省が不正調査の「修正」を始めた18年1月から、不正が発覚する12月までの間は、裁量労働制のデータ捏造(ねつぞう)、森友疑惑をめぐる虚偽答弁や公文書改ざん、外国人労働者のデータ捏造など、安倍政権による隠蔽、改ざん、ウソが次々と明らかになり、大問題になった時期であります。
安倍政権によって引き起こされた政治モラルの大崩壊が統計不正の温床となった。総理、あなたにはその自覚と反省がありますか。しかとお答えいただきたい。
統計不正の真相解明は予算案審議の大前提です。日本共産党は、徹底的な真相解明を最優先で行うことを強く求めるものであります。
消費税10%増税――四つの大問題を問う
消費税増税問題について質問します。
総理は、10月から消費税を10%に増税する方針を表明しています。私は、今回の消費税10%増税には、四つの大問題があると考えます。
こんな深刻な消費不況のもとで増税を強行していいのか
第一は、こんな深刻な消費不況のもとで増税を強行していいのかという問題です。
2014年の消費税8%への増税を契機に、実質家計消費は年額25万円も落ち込んでいます。GDPベースでみても、実質家計消費支出(帰属家賃を除く)は3兆円も落ち込んでいます。家計ベースでみても、GDPベースでみても、日本経済が深刻な消費不況に陥っていることは、明らかではありませんか。
こうした状況下で、5兆円もの大増税を強行すれば、消費はいよいよ冷え込み、日本経済に破滅的影響を及ぼすことは明瞭ではありませんか。
増税延期を決めた2年半前に比べても、日本経済は悪化、世界経済のリスクは高まる
第二は、総理が増税延期を決めた2年半前――2016年6月時点と比べても、日本経済は格段に悪化し、世界経済のリスクも格段に高まっているという問題です。
増税延期を決めた2年半前、直近の4半期のGDPは年率換算でプラス1・6%でした。ところが昨年12月に発表された7~9月期のGDPは年率換算でマイナス2・5%となっています。個人消費も、設備投資も、輸出も総崩れ。8%増税強行直後の2014年4~6月期以来の大きな落ち込みとなっているではありませんか。
2年半前の増税延期のさい、総理は、「世界経済の不透明感」を延期の理由にしました。しかし今日、世界経済は、米中貿易戦争、イギリス離脱問題とEUの経済不安など、2年半前とは比較にならないほど不安定となり、リスクが高まっているではありませんか。
日本経済の現状という点でも、世界経済のリスクという点でも、2年半前の総理の言明がゴマカシでなければ、今年10月に増税などできるはずはないではありませんか。
「賃金は上昇している」という政府の認識は虚構だった
第三は、毎月勤労統計の不正によって、昨年の賃金の伸び率が実態よりもかさ上げされていたという問題です。
かさ上げされた数値をもとに、政府は、昨年7月以降の月例経済報告で、賃金は「緩やかに増加している」としてきました。総理が、昨年秋、消費税10%の実施を宣言したさいに、「賃金が増加している」という認識があったことは明らかです。
しかし、23日、厚労省が公表した修正値では、昨年の賃金の伸び率は、すべての月で下方修正され、実質賃金は1~11月の月平均でマイナスになる可能性があることが明らかになりました。「賃金は増加している」という政府の認識は虚構だったのです。
総理、この点でも、消費税増税の根拠は崩れているではありませんか。少なくとも統計不正の事実解明抜きに増税を強行することは論外だと考えますが、いかがですか。
混乱、負担、不公平をもたらす天下の愚策を強行するのか
第四は、安倍政権の消費税増税に対する「景気対策」なるものが、前代未聞の異常で奇々怪々なものとなったことへの強い批判が広がっていることです。
とくに「ポイント還元」は、複数税率とセットになることで、買う商品、買う場所、買い方によって、税率が5段階にもなり、混乱、負担、不公平をもたらすとして怨嗟(えんさ)の的となっています。日本スーパーマーケット協会など3団体は、「混乱が生じる」ことへの懸念を表明し、見直しを求める異例の意見書を政府に提出しています。
総理は、国民の批判も、現場の意見も無視して、このような天下の愚策を強行するというのですか。
消費税10%の中止を求める――富裕層と大企業への優遇税制にメスを
今年10月からの消費税10%は、どこからみても道理のかけらもありません。日本共産党は、その中止を強く求めます。
増税するなら、空前の大もうけを手にしている富裕層と大企業への優遇税制にこそメスを入れるべきです。富裕層の株のもうけに欧米なみの課税を行い、大企業に中小企業なみの税負担率を求めるだけで、消費税10%増税分の税収は確保できます。消費税に頼らない別の道を選択すべきではありませんか。
とくに異常に軽い富裕層への証券課税については、2016年の経済同友会の提言でも、17年のOECD(経済協力開発機構)の対日経済審査報告書でも、税率引き上げが提案されています。総理は、この提案をどう受け止めますか。答弁を求めます。
大軍拡計画と憲法9条改定を問う
「専守防衛」すらかなぐり捨て、「浪費的爆買い」に走る――大軍拡計画の中止を
安倍政権が進める大軍拡と憲法9条改定について質問します。
「いずも」型護衛艦をF35B戦闘機を搭載できるように改造する、空母化が進められようとしています。相手の射程圏外から攻撃できる長距離巡航ミサイルが導入されようとしています。総理、これらは、これまで政府が、「いかなる場合でも(保有は憲法上)許されない」としてきた「攻撃型兵器」――すなわち「攻撃的な脅威を与えるような兵器」そのものではありませんか。
F35を147機体制にする、2兆円を超える兵器購入計画が進められようとしています。対日貿易赤字の削減のためとして、米国製の兵器購入を繰り返し迫ってきた、トランプ大統領の求めに応じたものに他なりません。これに対して、航空自衛隊の元幹部からも、「100機以上も買って、いったい何をするのか、目的が全く見えない」との批判が寄せられています。総理、トランプ大統領に言われたから買う、目的は不明、これでは「浪費的爆買い」としかいいようがないではありませんか。
「専守防衛」の建前すらかなぐり捨て、「浪費的爆買い」に走る――一かけらの道理もない大軍拡計画はきっぱり中止すべきです。軍事費を削り、国民の大切な税金は、福祉と暮らしに優先して使うことを強く求めるものです。
総理自ら改憲の旗振り――憲法、立憲主義に反する「無理筋」な行為
総理は、施政方針演説で、「国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待します」とのべ、9条改憲に固執する姿勢を示しました。
しかし、昨年の国会でも総理は、憲法改定を繰り返し呼びかけ、自民党の改憲案を憲法審査会に提案することを目指しましたが、そのもくろみはかないませんでした。総理は、その原因をどう考えていますか。
ある大手紙は社説で、昨年の憲法をめぐる動きを振り返って、「憲法に縛られる側の権力者が自ら改憲の旗を振るという『上からの改憲』が、いかに無理筋であるかを証明した」とのべました。総理が自ら改憲の旗振りをすること自体が、憲法99条が定めた閣僚の憲法尊重・擁護義務に反し、立憲主義に反する「無理筋」な行為であるという自覚が、総理、あなたにはありますか。しかとお答えいただきたい。
日本共産党は、海外での無制限の武力行使に道を開く9条改憲を断念に追い込むために、引き続き全力をあげて奮闘するものであります。
沖縄の米軍基地問題――辺野古新基地を中止し、普天間基地の無条件撤去を
沖縄の米軍基地問題について質問します。
安倍政権は、昨年12月、辺野古の海を埋め立てる土砂投入開始を強行しました。法治主義、民主主義、地方自治を踏みつけにした無法な暴挙に、沖縄県民の怒りが沸騰しています。さらに、総理が、NHKインタビューで、「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植している」と、平然とウソをついたことに強い怒りが集中しています。
総理は、口を開けば「沖縄県民の心に寄り添う」と言いますが、あなたのこうした言動のどこに「寄り添う」姿勢がありますか。強権とウソしかないではありませんか。
政府が、埋め立て予定海域の大浦湾に存在するマヨネーズ状の軟弱地盤の改良工事のため、設計変更に着手しようとしています。しかし、軟弱地盤の存在を示す政府報告書は2016年3月にまとめられたもので、政府はそれを2年間も隠していました。県民に真実を隠し、新基地建設の既成事実を先行させ、県民の諦めを誘った上で、設計変更に着手する。詐欺師同然のあまりに卑劣なやり方ではありませんか。
設計変更には県知事の承認が必要ですが、玉城デニー知事は新基地建設を許さない断固たる決意を繰り返し表明しています。辺野古新基地は決して造れません。総理は、この事実を受け入れるべきであります。
辺野古新基地建設はきっぱり中止し、普天間基地の無条件撤去を求めて米国政府と交渉することを強く求めます。
2月24日に行われる県民投票は、県議会で自民党を含むすべての会派の賛成で投票条例が改正され、全県実施にむけて大きく前進しています。私は、総理に、今回ばかりは、その結果を尊重することを強く要求します。総理の答弁を求めます。
原発はビジネスとしても成り立たない――この現実を認めよ
原発問題について質問します。
総理が、「成長戦略」の目玉に位置づけトップセールスを行ってきた原発輸出が、米国、ベトナム、台湾、リトアニア、インド、トルコ、英国と、総崩れに陥っています。「安全対策」のためのコストが急騰したことが、総崩れの原因であります。総理、原発はもはやビジネスとしても成り立たない。この現実を認めるべきではありませんか。
そして、輸出できないものを、国内では「コストが安い」とウソをついて再稼働を行うなど、論外ではありませんか。答弁をいただきたい。
「原発ゼロの日本」の実現、「再生エネルギーへの大転換」を強く求めるものです。
日ロ領土問題――国際的道理に立った領土交渉こそ
国後、択捉の領土要求を放棄して平和条約を結ぶことは決してないと明言できるか
最後に、日ロ領土問題について質問します。
総理は、日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させる、自らの任期中に日ロ領土問題に終止符を打つと繰り返しています。
私は、これはきわめて危うい方針だと考えます。
総理の方針を、歯舞、色丹の「2島先行返還」と見る向きもありますが、「2島先行」ではなく「2島で決着」――すなわち、国後、択捉の領土要求ははなから放棄し、最大でも歯舞、色丹の2島返還で平和条約を締結して領土問題を終わりにしてしまう、これがあなたの方針ではありませんか。
そうであるなら歴代自民党政府の方針すら自己否定する、ロシア側への全面屈服となります。そうでないというなら、国後、択捉の領土要求を放棄して平和条約を結ぶことは決してないと、この場で明言していただきたい。
第2次世界大戦の戦後処理の不公正を正す立場にたってこそ解決の道は開かれる
総理は、「70年間、領土問題が動かなかった」と強調しますが、日本政府は、国際的道理に立った領土交渉を、戦後ただの一回もやっていません。
日ロ領土問題の根本には、1945年のヤルタ協定で、ソ連のスターリンの求めに応じて米英ソが「千島列島の引き渡し」の密約を結び、それに縛られて51年のサンフランシスコ平和条約で日本政府が国後、択捉を含む千島列島を放棄したという問題があります。これは「領土不拡大」――戦勝国も領土を拡大しないという第2次世界大戦の戦後処理の大原則に背く不公正な取り決めでした。この不公正を正す立場にたち、千島列島の返還を求めてこそ、解決の道は開かれることを強調したいのであります。
総理の見解を求めます。
市民と野党の共闘の力で安倍政権を倒し、国民が希望がもてる新しい政治を
いまや安倍政権はあらゆる問題で深刻な破たんに陥っています。市民と野党の共闘の力で、安倍政権を倒し、国民が希望のもてる新しい政治をつくるために全力をあげる決意をのべて、私の質問とします。