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2019年1月29日(火)

安倍首相の施政方針

こんな政治 もうサヨナラ

 28日に始まった通常国会。安倍晋三首相は施政方針演説で、「日本の明日を切り開く」と述べましたが、安倍政治の破綻と矛盾はもはや取り繕いようがありません。


偽り 社会保障・消費税

全世代圧迫も増税も

 「全世代型社会保障への転換とは、高齢者の皆さんへの福祉サービスを削減する、との意味ではまったくありません」―。安倍首相がこう弁明した施政方針演説は、相次ぐ社会保障制度改悪を進めるなか、目前の統一地方選と参院選で国民の批判をかわそうという狙いです。

 こんな弁明は通用しません。10月から低所得の高齢者向け給付金などを行うから“削減ではない”と言っても、それらは消費税10%への増税と引き換えです。毎月勤労統計調査の不正・偽装問題を受けて賃金の伸びが「下方修正」されたため、消費税増税の根拠は崩れ去りました。にもかかわらず増税は「どうしても必要だ」と述べ、全世代の暮らしを圧迫しようとしています。

 そのうえ、4月には年金支給額を実質削減し、10月には、75歳以上の低所得者の医療保険料を軽減する特例措置を廃止する計画です。参院選が終われば、全世代の負担増・給付減メニューの議論を本格化させます。特に要介護1~2の人向けの生活援助の保険給付外しなどは、今回も語った「介護離職ゼロ」に反するものです。全世代型社会保障への転換とは、消費税増税を国民にのみ込ませるための詭弁(きべん)にすぎません。

 3歳児以上の保育・幼児教育の「無償化」も消費税増税とセットのうえ、給食費は対象外です。無償化で保育ニーズは当然増えるのに、「子どもたちを産み、育てやすい日本へ」と言って推進しているのは、保育士配置基準などを緩和した企業主導型保育です。

 学童保育(放課後児童クラブ)も、職員配置を緩和できるようにして「充実を進める」と言います。施設を増やすには子どもを守る質は低下してもいいという考えです。

 真にすべての世代が安心できる社会保障へと抜本拡充を進めるには、消費税に頼らない別の道への転換こそが必要です。大企業や富裕層に応分の負担を求めれば財源はあります。

野望 大軍拡・改憲

「戦争する国」へ加速

 施政方針演説で安倍首相は、大軍拡へのまい進と、9条改憲への執念を表明しました。日本を「戦争する国」へと改造しようという野望です。

 安倍首相は「安全保障政策の再構築」で、日米同盟が「外交・安全保障の基軸」だと強調。同時に「自らの手で自らを守る気概なき国を、誰も守ってくれるはずがない」と述べ、新たな防衛大綱のもとでの抜本的な体制強化とその加速を表明しました。

 新「防衛大綱」の下での“体制強化”こそ、憲法違反の大軍拡に他なりません。歴代自民党政権が掲げてきた「専守防衛」の建前すら投げ捨て、空母や巡航ミサイルの導入を推進。トランプ米大統領の言うままに米国製兵器を「浪費的爆買い」し、ステルス戦闘機・F35の147機の大量購入の費用は、政府発表の資料で計算しても総額6・2兆円に上ります。

 改憲問題では、首相は「国会の憲法審査会の場において、各党の議論が深められることを期待」すると発言。再び国会の壇上で、改憲論議の加速を呼びかけました。これは三権分立に反し、憲法尊重・擁護義務(憲法99条)にも反するものです。立憲主義を踏みにじる改憲への執念に変わりはありません。

 一方で、「各党の改憲案の提出」などを訴えた前臨時国会の所信表明演説のような国会に対する具体的指図は引っ込めざるを得ませんでした。強硬で拙速な改憲姿勢が国民世論と野党の強い反発を招き、臨時国会で改憲案提示の断念に追い込んだ国民の運動の成果が反映されています。

背信 辺野古・外交

不都合隠し国益放棄

 「沖縄県や市町村との対話の積み重ねの上に辺野古移設を進めていく」―。安倍首相は、昨年の沖縄県知事選で示された新基地反対の民意を切り捨て、建設工事を強行する考えを改めて表明しました。故・翁長雄志前知事やデニー知事の再三にわたる真摯(しんし)な協議要請を無視してきた安倍政権が「対話」などと言う資格はありません。

 一方、軟弱地盤の存在、埋め立て承認撤回の効力停止への国の「違法な関与」などの指摘が相次ぐ現状には一切ふれませんでした。沖縄の民意や日本の法律よりも日米同盟を優先する法治国家にあるまじき態度です。

 不都合なものを隠す姿勢は外交分野でも顕著です。安倍首相はロシアとの領土問題を解決して「日ロ平和条約を締結する」「必ずや終止符を打つ」と意気込みました。しかし“第2次大戦の結果を受け入れろ”などとするロシア側の不当な主張に反論もせず、領土不拡大の原則に反した戦後処理の不正をただす姿勢なしに交渉を進めれば、領土問題の根本的な解決は遠のくばかりです。

 北朝鮮との国交正常化や拉致問題解決を目指し金正恩(キム・ジョンウン)委員長との会談に意欲を表明し、「米国や韓国などと緊密に連携する」と述べました。しかし、各国が北朝鮮との対話や信頼醸成を進める中で日本だけが取り残されている現状は変わりません。元徴用工問題などをめぐり緊張する日韓関係にはほとんど言及もなく、打開の道筋さえみえません。

 また、安倍首相は「自由で開かれたインド太平洋」を日本が築くと主張しましたが、米軍がインド太平洋地域での即応体制強化を進めるなか、日本を含むアジアが軍事作戦の拠点とされる危険があります。

沈黙 原発・再エネ

総破綻で言及できず

 施政方針演説で安倍首相は「原発」や「再生可能エネルギー」政策について一言も触れませんでした。

 これまで安倍政権が「成長戦略」の目玉として進めてきた「原発輸出」計画は次々と破綻。1月には日立製作所が英国での原発建設計画の凍結を決めました。輸出案件は事実上ゼロとなり、安倍首相がトップセールスでおし進めてきた「原発輸出」計画は完全に暗礁に乗り上げています。

 安倍政権は、2030年度に電力の20~22%を原発でまかなう計画を策定するなど、今なお原発に固執し続けていますが、原発について何も語れなくなっています。

 海外では太陽光や風力などの普及が進み、発電コストが下落する一方、安全対策強化が求められる原発のコストは年々上昇しています。脱原発、脱炭素、再生可能エネルギーという世界の流れに反する原発輸出や国内での原発再稼働にまったく道理はありません。


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