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2019年1月26日(土)

主張

勤労統計不正・偽装

消費税増税強行の根拠崩れた

 毎月勤労統計調査の偽装をめぐり厚生労働省が、労働者の賃金の伸びはこれまでの公表値よりも低かったことを認め、「下方修正」する数値を公表しました。安倍晋三政権は、賃金上昇などを「景気回復」の根拠にして、今年10月から消費税率の10%への引き上げを決めましたが、その前提は崩れました。低所得者ほど負担が重く、経済を冷え込ませる消費税増税自体が、国民の暮らしと日本経済を破壊する最悪の経済政策です。それに加え増税判断の根拠まで覆った以上、税率10%への引き上げを強行する道理は全くありません。

低下した賃金の伸び率

 厚労省が「下方修正」した数値によれば、現金給与総額(名目賃金)の前年同月に比べた伸び率が、2018年1月から同年11月までの全ての月で、これまでの公表値を下回りました。物価の上昇を差し引いた実質賃金でも、18年1月から同年11月まで、9月を除く全ての月で低下しています。昨年1年間を通して、賃金が下がることになることは確実です。

 とりわけ安倍政権が21年5カ月ぶりの高い水準だと盛んに自慢してきた18年6月の現金給与総額は、公表してきた3・3%の伸びから2・8%の伸び(修正値)へと、0・5ポイントも低下しました。この時の不自然な上振れは、発表当時から問題視されていました。経済政策「アベノミクス」の成果を強調するための操作だったのではないかとの疑いも消えません。

 安倍政権はこれまで、賃金などの「上昇」を根拠に、「景気回復」は「戦後最長」になったなどと言って、10月からの消費税増税を正当化してきました。しかし、その「賃金上昇」は偽りであり、実際は低下していたのですから、増税の前提は成り立ちません。

 だいたい安倍政権が実施した14年4月からの消費税率の5%から8%への引き上げは、消費を大きく後退させ、いまも深刻な不況が続いています。8%増税前に比べ、家計の消費支出は年間25万円も落ち込んでいます。さらに10%増税を強行すれば、暮らしの悪化だけでなく、経済そのものが壊滅的打撃を受けるのは明らかです。

 安倍政権が「十二分」という増税対策も、食料品などの税率据え置きの複数税率導入や、キャッシュレス決済の場合のポイント還元、効果が疑わしい「プレミアム」付き商品券など、制度を複雑にし、国民の暮らしや営業の各分野で混乱を拡大する愚策ばかりです。「対策」に要する費用は、増税による増収額を大幅に上回り、「何のための増税か」との批判が、与党内からさえ出ているばらまきです。“百害あって一利なし”の10%への増税は中止しかありません。

前代未聞の事態解明を

 国会の閉会中審査では、毎月勤労統計偽装に対する厚労省調査は“お手盛り”と大問題になり、組織的隠ぺいの疑いも濃厚になっています。厚労相経験者の国会招致をはじめ全容解明は不可欠です。

 国の統計のうち特に公共性の高い重要な「基幹統計」56のうち22の統計で不正・誤り・未集計があったことが判明するなど、安倍政権下の統計のずさんな扱いが浮き彫りになっています。消費税増税をはじめ、国の予算や政策決定の土台となる統計の信用が根本から失われている前代未聞の事態は絶対にあいまいにできません。


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