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2019年1月24日(木)

政府の評価で交付金傾斜配分

国立大の基盤崩す

国大協会長 19年度予算案批判

 国立大学協会の山極壽一会長(京都大学総長)は23日、2019年度予算案についてコメントを発表しました。大学の規模や学部の種類で配分される国立大学法人運営費交付金(1兆971億円)のうち1000億円を、政府の評価基準などで傾斜配分しようとしていることについて「国立大学法人の財政基盤を不安定にするものであり、極めて残念」と批判しています。

 同交付金をめぐって安倍政権は、各大学に配分した交付金から一定額を拠出させ、学部などの再編・統合といった「機能強化」の達成度合いで再配分する仕組みを16年度に導入。短期的評価による不安定な財源措置によって大学運営に困難をもたらし、研究力低下の原因になっているとの批判があがっています。

 財務省の財政制度等審議会は昨年10月、傾斜配分する額を交付金の10%に拡大するよう提言。国大協は「高等教育及び科学技術・学術研究の体制全体の崩壊をもたらしかねない」と反対する会長声明を発表したものの、安倍晋三首相の指示で押し切られる形になっていました。

 23日に開かれた国大協の総会では「(政府の評価基準には)教育に関する評価の観点が全くない」(徳久剛史・千葉大学長)、「交付金を切り崩していくという思考が政府の根底にある。これが一番の問題だ」(島田眞路・山梨大学長)との意見が相次ぎました。

交付額内示遅れ 計画に支障

 例年年明け前にされる国立大学法人運営費交付金の各大学への交付額内示が大幅に遅れています。同交付金は人件費などに充てられる国立大学の基盤的経費。国立大学関係者からは「来年度の計画が立たない」との声があがります。

 文部科学省は内示の遅れについて、来年度から実施しようとしている交付金の「評価対象経費」の配分方法が決まらないことを理由にあげます。

 評価対象経費は、交付金のうち700億円を外部資金獲得実績や若手研究者比率といった評価基準に基づいて傾斜配分するもの。本来、大学の規模や学部の種類で配分すべき交付金を、大学間で奪い合う「競争的資金」にいっそう変質させるものです。

 国大協はじめ大学関係者が強く反対したものの、19年度予算案の閣議決定直前の昨年12月20日に開かれた「総合科学技術・イノベーション会議」で、安倍晋三首相は19年度から交付金の1割を「経営改革」に取り組む大学に傾斜配分すると明言。官邸主導で予算案に盛り込みました。傾斜配分の総額は16年度から実施している「機能強化経費」の300億円とあわせて1000億円に上ります。

 ただ、大学側からの批判を受け、文科省は来年度については各大学の交付額が大きく変動しないようにすると説明してきました。内示の遅れの背景に、傾斜配分を主張する財務省の影響があるとの指摘もあります。

 ある大学関係者は「前年度から交付額が大きく変われば人事採用や研究計画にも影響が出てくる」と懸念。別の大学関係者は「国が示す評価基準は教育研究とは関係ないことばかり。40歳以下の若手研究者の比率を上げろというが、そのために、30代を任期付きで雇い40歳を超えたら雇い止めということも起きかねない」と批判します。


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