2019年1月16日(水)
主張
権利条約批准5年
障害者の尊厳守り権利向上を
日本が障害者権利条約を批准して20日でちょうど5年になります。同条約は、障害のある人に、障害のない人と同じ権利を保障することなどを掲げ、その実現へ必要な措置を取ることを締約国に義務付けています。しかし、日本の現実は、権利条約のめざす社会から程遠い状況です。障害者の尊厳が守られ、生活と権利を向上させるために、積極的な取り組みをすすめていくことが重要です。
昨年相次いだ重大問題
障害者をめぐり昨年は、旧優生保護法下の強制不妊手術の違法性を問う訴訟が相次いだのをはじめ、官公庁の大規模な雇用「水増し」が発覚するなど重大問題が噴出しました。共通するのは「障害者は役に立たない、価値がない」とする発想が根底にあることです。能力に優劣をつけて“劣っている人”の尊厳を否定する優生思想と根を同じくする危険な考えです。
旧優生保護法に基づく不妊手術の被害者数は、本人の同意がないケースで約1万6500人、同意があるとされる場合で約8500人にも上ります。知的障害や精神疾患、遺伝性とされた疾患がある人が対象とされました。「優生上の見地から不良な子孫の出生防止」を目的とする同法が、日本国憲法下の1948~96年まで施行されていたことは深刻です。
強制不妊手術で人権を侵害されたとして、全国で15人が国の責任を問う訴訟を起こしています。事態を受け与野党国会議員は超党派で被害者救済法案を国会に提出する予定です。全ての被害者に謝罪と補償を行うことが不可欠です。
中央官庁や地方自治体で長年横行していた障害者雇用数「水増し」は、国による“障害者排除”です。権利条約5条は、締約国に対し障害を理由とする差別を禁止しています。27条は、障害者が障害のない人と等しく労働に関する権利があり、その権利保障を締約国に求めています。これに照らせば日本政府の責任はあまりに重大です。安倍晋三政権は事態を根本から反省し、障害者雇用施策の抜本的な見直しをはかるべきです。
一方、昨年は全国を励ますビッグニュースもありました。介護保険の申請がないからと、65歳の誕生日で障害福祉サービスを打ち切られた岡山市の重度障害者が違憲・違法と同市を訴えた裁判(広島高裁岡山支部)で全面勝利し、その判決が12月に確定したのです。
65歳になった障害者に介護保険への移行を求める障害者総合支援法の規定の不当性を浮き彫りにする重要な判決です。低所得世帯の場合、64歳までは無料でサービスが利用できたところを原則1割負担にされる上、サービスの支給量や質は、障害福祉サービスより低下する仕組みは、各地で大問題になっています。障害者の高齢化が進み、介護保険へ移行させる矛盾が顕在化する中で、今回の勝訴判決は、不当な扱いをやめさせるたたかいの大きな力になります。
ふさわしい施策拡充こそ
国連の障害者権利委員会は来年春、日本政府提出の締約国報告書審査を実施するとみられます。審査に向けて国内の障害者団体は、日本の障害者をめぐる実態や施策の課題などを示す民間報告書を今春提出する準備を進めています。障害者権利条約にふさわしい施策の拡充へ、障害者の生活と権利向上の年にしていきましょう。