2019年1月10日(木)
ブラックホール X線で輝く現場キャッチ
国際宇宙ステーションから観測
科学誌に掲載
国際宇宙ステーション(ISS)搭載の観測装置を使った米欧日の観測チームが、ブラックホールがX線で爆発的に輝いたときに周囲の電子の雲が収縮する様子をとらえることに成功し、9日付の科学誌『ネイチャー』(電子版)に論文を発表しました。
観測したのは、地球から約1万光年の距離にある、太陽の数倍~10倍程度の質量をもつ「恒星質量ブラックホール」の一つ。昨年3月、ISS日本実験棟に搭載された全天X線監視装置「MAXI」により、X線で明るく輝いているのが発見されました。翌日、ISS搭載の別の観測装置「NICER」が追観測を開始しました。
恒星質量ブラックホールの周囲には、ごく近くの星から物質が流れ込んでできた薄いドーナツ状の構造「降着円盤」があり、大量の物質が中心部に落ち込むときに爆発的に輝くと考えられています。
観測チームは、NICERでブラックホールから来るX線のエネルギーとタイミングを精密に観測。降着円盤が放射する低エネルギーのX線と、降着円盤の垂直方向に広がる電子の雲「コロナ」と相互作用して出てくる高エネルギーのX線の時間差をもとに、ブラックホール周辺の構造を調べました。降着円盤の鉄原子が放つ特徴的な光も観測しました。
その結果、コロナが1カ月あまりの間に100キロメートルから10キロメートルほどに収縮した一方、降着円盤にはほとんど変化がみられないことがわかりました。爆発的に輝く現象が、降着円盤ではなくコロナに関係していることを示す成果だといいます。