しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2019年1月7日(月)

主張

ハラスメント根絶

世界の流れに立ち遅れるな

 ILО(国際労働機関)は今年創立100周年を迎えます。第1次世界大戦後、「世界平和は社会正義を基礎としてこそ確立できる」として1919年に設立され、世界の労働者の状態を改善する国際基準をつくることを主な任務とし、大きな役割を果たしてきました。記念すべき今年6月の総会で、ILОは「働く場での暴力とハラスメントをなくすための条約」を採択します。セクハラ被害を告発する「#MeToo」運動の広がりなど、ハラスメント根絶を願う国際世論の後押しを受けたものです。

被害者が救済されぬ日本

 セクハラやパワハラの被害は日本でも深刻です。とくにセクハラについては、昨年4月に財務省事務次官による事件が発覚し、麻生太郎財務相が「セクハラ罪という罪はない」とかばうに及んで、「セクハラを法律で禁止すべきだ」との世論が一気に高まりました。

 昨秋始まった政府の労働政策審議会でのハラスメント対策の議論には、ILOの動きも追い風に「禁止規定の導入に踏み込め」との期待が寄せられました。しかし、12月にまとめられた労政審建議は、現在セクハラやマタハラについて男女雇用機会均等法が事業主に防止措置を義務付けているのにあわせ、パワハラに同様の防止措置を義務付けるとするにとどまり、禁止規定の導入を見送りました。

 なぜ禁止規定が必要か。それは、現行の防止措置義務規定では被害者を救済できておらず、ハラスメントの発生・再発防止にも十分つながっていないからです。

 セクハラの被害者は、雇用機会均等法に基づき都道府県労働局に相談することができます。しかし、セクハラ行為そのものを違法とする法律上の根拠がないため、労働局にはセクハラの事実を認定する権限も会社・加害者に謝罪や賠償を命じる権限もありません。行政救済手続きである「紛争解決の援助」や「調停」に進むのは、年間7千件にのぼる相談件数の約2%にすぎない上、相互の譲り合いを前提とした制度であることから被害者の側も譲歩を迫られるという限界があります。解決金も極めて低額で、会社や加害者に再発防止を促す効果はほぼ望めません。

 禁止規定がないことは、セクハラを軽んじる風潮もつくりだしています。被害者は心身に不調をきたして休職や離職に追い込まれる一方、加害者は特段おとがめもなく働き続けているケースが少なくありません。禁止規定の見送りは、現行制度で救済されていない被害者の苦しみを無視するに等しい、あまりに冷たい姿勢です。

 セクハラを禁止する法規定を持たない国は先進国では日本を含む3カ国のみです(世界銀行調査)。日本は男女平等度が国際的に低く、ILО条約も189本中49本しか批准していないなど労働者の権利を守るルールが極めて弱い国です。セクハラ禁止法をめぐる対応は、改めて日本の「人権後進国」ぶりをさらけ出しています。

条約に見合う水準目指せ

 日本共産党は、採択されるILO条約に見合う水準のハラスメント禁止を明記した法整備、被害者救済のための体制強化、独立した救済機関の設置を強く求めます。

 ハラスメントのない職場で働くことは、すべての労働者の権利です。日本政府は、世界に立ち遅れた姿勢を改めるべきです。


pageup